あなたのお店は、観光客の「旅のどこ」に入っていますか?

先日、非常に興味深い飲食店の事例を見つけました。

大阪府堺市にある「黄金あなごと季節の天ぷら 海ごこち」というお店です。

同店を運営する会社が2026年9月1日に発表した内容によると、Googleビジネスプロフィールの運用やGoogle広告、多言語対応などに取り組み、2026年7月には過去最高の売上を記録したとしています。

Googleビジネスプロフィールの閲覧数やルート検索数も大きく伸びています。

もちろん、これらの数字は店舗側が公表した実績です。

私がこの事例を見て興味を持ったのは、売上の数字でも、Googleマップの運用方法でもありません。

もっと気になった言葉がありました。

「堺」という地名ではなく、「関空から20分・難波から10分」と立地を捉え直した。

という考え方です。

これを見たとき、

「これは観光地の飲食店にとって、とても重要な考え方だ」

と思いました。

目次

立地は変えられない。でも、立地の意味は変えられる

飲食店の集客相談をしていると、

「駅から遠いから」

「観光地の中心から外れているから」

「メインストリートではないから」

といった話をよく聞きます。

確かに立地は重要です。

そして、今ある店を簡単に移転することもできません。

しかし、

立地そのものは変えられなくても、旅行者にとっての「立地の意味」は変えられるのではないでしょうか。

今回の事例が面白いのは、まさにここです。

「堺にある飲食店」とだけ考えれば、堺というエリアの知名度や集客力の中で勝負することになります。

ところが、

「関西空港から大阪市内へ向かう途中」

「難波から少し足を延ばせる場所」

と考えれば、同じ住所なのに店の意味が変わります。

お店の場所は1メートルも動いていません。

変わったのは、その場所を見る視点です。

観光客は、店だけを目的に旅行しているわけではない

観光地の飲食店を考えるとき、私はここが非常に重要だと思っています。

旅行者には、その店へ来る前と後があります。

ホテルを出る。

観光する。

移動する。

昼食を食べる。

次の観光地へ向かう。

ホテルへチェックインする。

夕食を食べる。

そして翌朝、また別の場所へ移動する。

つまり飲食店への来店は、ほとんどの場合、旅全体の中の一場面です。

それなのに店側は、

「高山駅から徒歩○分」

「○○寺から車で○分」

「インターから○分」

という「店から見た立地」だけで説明してしまいがちです。

もちろん、それも必要な情報です。

しかし観光客が本当に知りたいのは、

「自分の旅程に、この店をどう入れられるのか」

ではないでしょうか。

「観光地の中心から離れている」は、本当に弱みなのか

例えば、観光地の中心から少し離れた飲食店があったとします。

普通なら、

「中心部から遠いから不利」

と考えます。

しかし、旅行者の動線から考えてみると違う見方ができます。

白川郷から高山市街へ戻ってくる途中かもしれない。

高速道路へ乗る前に食事ができる場所かもしれない。

ホテルへチェックインする前に立ち寄りやすい場所かもしれない。

中心部の混雑を避けて、車でゆっくり食事をしたい家族には便利かもしれない。

大型駐車場があれば、レンタカー利用者や団体客にとっては、中心街の店より使いやすいかもしれません。

こう考えると、

「中心から離れている」という弱みが、「旅の途中で立ち寄りやすい」という強みに変わる可能性があります。

大切なのは、立地の良し悪しだけではありません。

誰の、どんな旅の中で、その立地が便利なのか。

ここまで考えることだと思います。

Googleマップ対策の前に考えることがある

今回の事例では、Googleビジネスプロフィールの運用やGoogle広告、多言語対応、周辺ホテルとの連携など、さまざまな施策が行われています。

これらも当然、大切な取り組みです。

ただ私は、

「Googleマップを頑張れば観光客が増える」

という話だけで終わらせたくありません。

その前に、

「誰に、どんな時に、この店を利用してもらいたいのか」

が決まっている必要があります。

ここが曖昧なままGoogleマップやInstagramを更新しても、

「美味しい料理があります」

「観光の際にはぜひお越しください」

という、どこの店でも言える発信になってしまいます。

逆に利用シーンが見えてくれば、

「○○観光の帰りの夕食に」

「チェックイン前の昼食に」

「レンタカーで○○へ向かう途中に」

「中心街の混雑を避けて、家族でゆっくり食事をしたい方に」

と、伝える内容が変わります。

GoogleマップもホームページもInstagramも、本来はそれを伝えるための手段です。

「どこにある店か」から「いつ使える店か」へ

これから観光地の飲食店集客では、この考え方がますます重要になると思っています。

店側はどうしても、

「うちは○○市にあります」

「○○駅から徒歩10分です」

と自店を説明します。

しかし旅行者からすれば、行政区分はそれほど重要ではありません。

大切なのは、

自分の旅の中で使える店なのか。

ということです。

だからこそ私は、観光地の飲食店を見るときに「商圏」だけで考えないようにしています。

観光客にとっては、

宿泊地、観光地、駅、空港、高速道路、次の目的地などを結んだ「旅の動線」そのものが商圏になる

ことがあるからです。

これは、一般的な地域密着型飲食店とは少し違う、観光地ならではの集客の考え方です。

あなたのお店は、観光客の「旅のどこ」に入っていますか?

今回の事例を見て、改めて考えさせられました。

立地が悪い。

駅から遠い。

観光地の中心ではない。

だから集客できない。

そう決めてしまう前に、一度地図を広げてみてほしいと思います。

そして、自店だけを見るのではなく、

お客様がどこから来て、どこへ行くのか。

を見てみる。

宿泊施設はどこにあるのか。

主要な観光地はどこなのか。

駅や高速道路はどこなのか。

旅行者は何時ごろ、その場所を通るのか。

その途中に、自分のお店を入れることはできないか。

ここまで考えて初めて、観光地の飲食店ならではの「立地戦略」になるのではないでしょうか。

立地は変えられません。

でも、

その立地を「誰にとって、どんな時に便利な場所にするか」は考えることができます。

私は、観光地の飲食店集客では、「どこにある店なのか」だけではなく、

「旅行者の旅のどこに入る店なのか」を考えることが、とても重要だと考えています。


参考・出典
株式会社PleasantPlace「関空から20分・難波から10分の立地でインバウンド来店が前年比3倍に。堺の天ぷら・あなご専門店が多言語オンライン予約を導入し、売上過去最高¥830万を達成。」(2026年9月1日)
元記事(PR TIMES)を読む

目次