使われなくなった会議室を、わずか8席の「旅の目的地」に変えた。

先日、とても面白い取り組みを見つけました。

山形県鶴岡市にある「ショウナイホテル スイデンテラス」。

水田に浮かぶように建つ、特徴的なホテルです。

そのホテルに、新しいフレンチレストランが誕生しました。

席数は、わずか8席。

1日1組限定。

月の営業日も10~12日程度。

料理とペアリングを合わせて、1人29,700円。

ここまでなら、

「高級レストランが新しくできた」

という話なのですが、私が面白いと思ったのは別のところでした。

このレストランが作られた場所です。

もともと、会議室だった場所なのです。

目次

「使われていない会議室」を見て、何を考えるだろう

ホテルに限らず、長く営業している施設には、使われなくなった場所が結構あります。

昔は宴会で使っていた大広間。

団体客向けに作った個室。

今ではほとんど使わない座敷。

増築したものの、使い道が曖昧になっている部屋。

景色はいいのに、お客様を入れていないスペース。

時代が変われば、お客様の使い方も変わります。

団体宴会が減る。

個人旅行が増える。

旅行の目的が変わる。

すると、昔は必要だった場所が使われなくなることがあります。

普通なら、

「どうやったら、もう一度この場所を使ってもらえるだろう」

と考えるのではないでしょうか。

会議室なら、会議を増やそう。

宴会場なら、宴会を取ろう。

座敷なら、団体客を呼ぼう。

私も、ついそう考えてしまいます。

でも今回の取り組みは、少し違いました。

会議室を「もう一度使う」のではなく、価値そのものを変えた

もともとの会議室を、再び会議室として稼働させたわけではありません。

そこを、

8席だけのレストラン

に変えた。

しかも、できるだけ多くのお客様を入れようとはしていません。

1日1組。

わずか8席。

むしろ、客数を絞っています。

ここが、とても面白いと思いました。

普通、使われていないスペースを見ると、

「どうやって稼働率を上げるか」

を考えます。

でも、このレストランは、

「何人入れられるか」ではなく、「ここでしかできない時間をどう作るか」

を考えたように見えます。

水田を望む場所。

庄内の食材。

料理人との距離。

8席だけの空間。

それらを組み合わせて、

単なる「空いていた会議室」を、わざわざ訪れる理由のある場所に変えている。

空いている場所は、本当に「余っている場所」なのだろうか

この事例を見ながら、飲食店や旅館の現場を思い出しました。

「この座敷、最近ほとんど使わないんですよ」

「昔はここで30人くらいの宴会をやっていたんですけどね」

「二階は今、物置みたいになっています」

そんな話を聞くことがあります。

経営者からすると、

使っていない=価値がない

ように感じてしまうことがあります。

でも、本当にそうでしょうか。

例えば、昔30人を入れていた座敷を、

30人で埋めようとする必要はないのかもしれない。

そこを一日一組だけの個室にする。

地域の食材を使った特別なコースを出す。

料理人が料理の背景を説明する。

窓から見える景色まで食事の一部にする。

そんな使い方も考えられます。

つまり、

「昔の使い方に戻す」ことだけが、再生ではない。

のだと思います。

30席を8席にすることも、売上改善になる

飲食店の売上改善というと、

客数を増やす。

席数を増やす。

回転数を上げる。

営業時間を長くする。

どうしても「量を増やす」方向へ考えがちです。

もちろん、それが必要な店もあります。

でも観光地では、違う方法もあると思います。

30席を毎日埋めるのが難しいなら、

30席を埋める努力を続けるのではなく、

8席だから成立する価値を作る。

一組しか入れない。

料理人と話せる。

地域の文化を感じられる。

通常営業では出せない料理を出す。

その場所でしか見られない景色を楽しむ。

そうすれば、

「席が少ない」

ことが弱みではなくなる。

むしろ、

8席しかないこと自体が価値になる。

これは観光地の飲食店にとって、かなり重要な考え方だと思います。

「何を入れるか」より、「なぜそこへ行くのか」

空いている場所を活用しようとすると、

「何を入れよう」

と考えます。

カフェにしよう。

物販にしよう。

個室にしよう。

イベントスペースにしよう。

もちろん、それも必要です。

でも、その前に考えたいことがあります。

「お客様は、なぜわざわざそこへ行くのか」

です。

観光地なら、なおさらです。

旅行者には時間があります。

移動もあります。

他にも行きたい場所があります。

その中で、

「あそこへ行ってみたい」

と思ってもらわなければならない。

だから、

「空いている場所に何を作るか」ではなく、「その場所へ行く理由を何にするか」から考える。

今回の8席のレストランを見て、そんなことを思いました。

老舗ほど、「使われなくなった場所」がある

これは特に、長く営業している店や旅館に可能性があると思っています。

何十年も営業しているからこそ、

今の時代には合わなくなった空間がある。

でも同時に、

長く続いてきたからこそ、

新しい店には作れない場所もあります。

昔から使ってきた座敷。

庭が見える個室。

蔵。

離れ。

昔の厨房。

先代が使っていたカウンター。

そこには、時間が積み重なっています。

新しい店が同じものを作ろうとしても、簡単には作れません。

だから、

「古いから使えない」

ではなく、

「この古さを、今のお客様にとっての価値へ変えられないか」

と考えてみる。

観光地の老舗には、まだそんな場所がたくさん眠っているように思います。

新しく作る前に、今あるものをもう一度見る

今回の事例で、私が一番考えたのはここでした。

売上を上げようとすると、

新しい商品を作る。

新しい設備を入れる。

新しい客席を作る。

新しいサービスを始める。

どうしても「何かを足す」ことを考えます。

でも、その前に、

今あるものを、もう一度見てみる。

使われなくなった場所。

売れなくなった商品。

昔の設備。

店の歴史。

地域との関係。

昔からいるスタッフ。

その中に、

今のお客様にとっては新しい価値になるものがないだろうか。

今回のレストランも、

何もないところに新しい建物を建てたわけではありません。

もともとあった会議室を、

「ここで食事をするために庄内へ行きたい」

と思ってもらえる場所へ変えようとしている。

私はそこが、とても面白いと思いました。

使われていない場所は、まだ価値を見つけてもらっていないだけかもしれない

観光地の飲食店や旅館を見ていると、

「もう使えない」

と思われている場所があります。

でも、

本当に使えないのでしょうか。

もしかすると、

昔と同じ使い方ができなくなっただけ

なのかもしれません。

30人の宴会場としては使えない。

でも8人だけの特別な食事なら使える。

普通の客席としては使いにくい。

でも一日一組の体験なら使える。

物置になっている離れも、

その店の歴史や料理と組み合わせれば、

旅の目的になるかもしれない。

使われなくなった会議室を、わずか8席のレストランへ。

この取り組みを知って、

観光地の店には、まだ価値を見つけてもらっていない場所がたくさんあるのかもしれない。

そんなことを考えました。

こんな取り組みを考えている方へ

「昔使っていた宴会場が空いている」

「使わなくなった座敷や離れを何とかしたい」

「今ある店の中に、新しい売上を作れないだろうか」

「観光客が、わざわざ来たくなる理由を作りたい」

そんなことを考えている飲食店・旅館の経営者の方がいらっしゃれば、ご相談ください。

新しいものを作る前に、

今ある店の中に、まだ使えていない価値がないか。
現場を一緒に見ながら、考えてみたいと思います。

この記事を書くきっかけになった情報

山形県鶴岡市の「ショウナイホテル スイデンテラス」で、使われていなかった会議室を改装し、8席限定・1日1組のフレンチレストランを開業するという記事を読んだことが、今回の記事を書くきっかけになりました。

この記事は、そのレストランの成否を評価するものではありません。「使われなくなった場所を、別の価値へ変える」という取り組みを知り、観光地の飲食店や旅館にも同じような可能性があるのではないかと考えたものです。

参考・元記事

ショウナイホテル スイデンテラス、遊休会議室を8席限定・1日1組のフレンチレストランへ|PR TIMES

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