先日、観光関係の情報を見ていて、とても興味深い取り組みを知りました。
大分県佐伯市と宮崎県延岡市で開催されている、
「東九州伊勢えび海道・伊勢えび祭り」
です。
毎年、伊勢えび漁が解禁される時期に合わせて開催され、2026年は佐伯市と延岡市の28店舗が参加しています。
しかも、今年始まったイベントではありません。
2004年から続き、今年で23年目を迎える取り組みです。
最初に知ったとき、
「28軒もの店で伊勢えび料理が食べられるのは、観光客にとって面白いイベントだ」
と思いました。
旬の伊勢えびを目的に地域を訪れ、その中から自分の好きなお店を選ぶことができる。
観光客にとっては、それだけでも魅力的です。
でも、詳しく見ているうちに、もう一つ気になることが出てきました。
なぜ、28軒もの飲食店が一緒にできるのだろう。
しかも、同じ市内ではありません。
大分県と宮崎県。
県境を越えて、佐伯と延岡の店が一緒になって23年間続けている。
そこに、私はとても興味を持ちました。
一軒なら「季節メニュー」。28軒集まれば「旅の目的」になる
一軒の飲食店が、
「今年も伊勢えびが始まりました」
と発信する。
旬の食材ですから、それだけでも十分に魅力的です。
その料理を楽しみに、毎年来店するお客様もいるでしょう。
一方で、地域の28軒が一緒になって、
「この地域では、この時期に伊勢えびが楽しめます」
と発信すると、少し意味が変わってきます。
どの店に行こうか。
どんな伊勢えび料理を食べようか。
せっかくなら、この時期に佐伯や延岡へ行ってみようか。
料理を選ぶところから、旅が始まります。
つまり伊勢えびが、単なる一店舗の商品ではなく、
その地域へ行く理由になる。
一軒なら季節メニュー。
でも、
28軒集まれば「旅の目的」になる。
この違いは、観光地の飲食店を考えるうえで、とても大きいように思います。
観光地では、個店だけで頑張っても限界がある
飲食店の集客を考えるとき、どうしても自分のお店を見ることになります。
Googleマップをどうするか。
Instagramをどうするか。
ホームページをどうするか。
名物料理をどう作るか。
もちろん、どれも大切です。
私も普段のコンサルティングでは、一軒一軒のお店とそうしたことを一緒に考えています。
ただ、観光地の飲食店を見ていると、それだけでは解決できないこともあります。
なぜなら、
その地域そのものに人が来なければ、お店にも人は来ないからです。
どれだけ魅力的な料理を作っても、どれだけ情報発信を頑張っても、「この地域へ行ってみたい」と思う人そのものが少なければ、個店だけでできることには限界があります。
だから観光地では、
自分のお店を魅力的にすること。
そして、自分たちの地域を魅力的にすること。
この二つを一緒に考える必要があるのだと思います。
一軒一軒では競合でも、地域では仲間になれる
28軒の飲食店は、それぞれ別の店です。
同じ伊勢えびを扱い、同じ時期にお客様を迎えるわけですから、当然、それぞれが自店を選んでもらうために工夫しています。
でも、観光という少し大きな視点から見ると、違う関係も見えてきます。
伊勢えびを楽しめる店が一軒だけある地域と、28軒から自分の好きな店を選べる地域。
旅行者にとっては、後者だからこそ生まれる楽しさがあります。
「今年はどこへ行こう」
「去年とは違う店へ行ってみよう」
そんな選択肢そのものが、地域の魅力になる。
一軒一軒では競合でも、地域全体では仲間になれる。
みんなで地域へ来る理由を大きくする。
そのうえで、それぞれのお店が自分たちの魅力を磨き、選ばれる。
観光地では、そんな関係が作れるのだと思います。
そして気になった。「誰が28軒をつないでいるのだろう」
ここまで考えたところで、私は別のことが気になりました。
これだけの店を、誰がまとめているのだろう。
そこで少し調べてみました。
現在、「東九州伊勢えび海道・伊勢えび祭り」は、東九州伊勢えび海道実行委員会が主催しています。
そして、観光まちづくり佐伯、延岡観光協会、佐伯市、延岡市が共催。
さらに大分県、宮崎県などが後援しています。
県境を越えた取り組みを、店舗だけではなく、観光組織、行政、県まで含めて支えている。
