なぜ観光客は「ここでしか食べられない」に惹かれるのか?

なぜ観光客は「ここでしか食べられない」に惹かれるのか?

旅先でお店を探していると、

「ここでしか食べられない。」

「この地域でしか味わえない。」

そんな言葉に、つい目が止まることがあります。

なぜなのでしょうか。

単に珍しいものが好きだからでしょうか。

限定という言葉に弱いからでしょうか。

もちろん、それもあるかもしれません。

でも私は、観光客の気持ちはもう少し深いところにあると思っています。

旅行には、

「せっかくここまで来たのだから。」

という気持ちがあります。

せっかくここまで来たのだから、この土地ならではのものを食べたい。

せっかくここまで来たのだから、普段できない体験をしたい。

せっかくここまで来たのだから、ここへ来た意味を感じたい。

観光客が「ここでしか食べられない」に惹かれるのは、

その料理を通して、「ここまで来た意味」を感じたいからではないでしょうか。

目次

美味しいだけなら、旅先でなくても食べられる

今は、全国どこにいても美味しいものを食べられる時代です。

東京に行けば、全国各地の食材を使った料理があります。

地方にいても、有名店の商品を取り寄せることができます。

インターネットを使えば、全国の名産品を自宅まで届けてもらえます。

だから観光地の飲食店が、

「美味しい料理を提供しています。」

だけでは、以前よりも差別化が難しくなっています。

もちろん、美味しいことは大前提です。

でも旅行中のお客様は、その先を求めています。

「この場所で食べるからこそ価値があるものは何だろう。」

ということです。

「ここでしか」は、限定商品とは少し違う

「ここでしか食べられない」というと、

1日10食限定。

期間限定。

数量限定。

そんな商品を思い浮かべるかもしれません。

でも、今回考えたい「ここでしか」は、それとは少し違います。

単純に数を少なくして、希少性をつくることではありません。

例えば、

地元でしか流通していない魚。

その地域ならではの食材。

昔から地域で食べられてきた料理。

その土地独特の食べ方。

何十年も受け継いできた調理法。

その店でしか提供していない看板料理。

その場所だからこそ成立する景色や演出。

こうしたものです。

つまり、

「ここでしか」は、つくるものだけではありません。

すでにその土地や店にあるものの中から、見つけることもできます。

地元では「普通」でも、観光客には特別かもしれない

ここは、観光地の飲食店にぜひ考えてほしいところです。

地域の人にとっては、昔から当たり前に食べてきた料理があります。

「こんなの珍しくないよ。」

「昔から普通に食べているよ。」

と思うものもあるでしょう。

でも、観光客にとっては違います。

初めて見る食材かもしれません。

初めて知る食べ方かもしれません。

その地域でしか聞いたことのない料理名かもしれません。

つまり、

地元の人にとっての「当たり前」が、観光客にとっての「ここでしか」になることがあります。

だから私は、観光地の飲食店ほど、外ばかりを見る必要はないと思っています。

東京で流行っているものを、そのまま持ってくるだけでいいのか

飲食店を経営していると、流行は気になります。

東京で売れている料理。

SNSで話題の商品。

若い人に人気のスイーツ。

もちろん、そうしたものを学ぶことは大切です。

私自身も、全国の繁盛店を見て回っています。

でも、

「東京で流行っているから。」

という理由だけで、そのまま自店に持ってくることには少し注意が必要です。

観光客は、その土地まで旅行に来ています。

そこで、

東京でも食べられるもの。

全国どこにでもあるもの。

いつも見ているもの。

ばかりが並んでいたらどうでしょう。

便利かもしれません。

安心かもしれません。

でも、

「ここまで来た意味」

は弱くなってしまいます。

自分たちの店にある「ここでしか」を探す

だから観光地の飲食店には、一度、自分たちの店を見直してほしいと思っています。

珍しい新商品を開発する前に、

「すでに自分たちが持っているものの中に、『ここでしか』はないだろうか。」

と考えてみる。

地元の漁師から仕入れている魚。

昔から付き合っている農家の野菜。

地域に伝わる郷土料理。

先代から受け継いだレシピ。

長年使っているタレ。

地元独特の食べ方。

古い建物。

窓から見える景色。

昔から続けてきた提供方法。

そうしたものは、店側からすると当たり前すぎて、価値に気づいていないことがあります。

でも、それこそが、

他の地域では簡単に真似できない価値

かもしれません。

「ここでしか食べられない」は、旅の記憶になる

旅から帰ったあと、

「あの旅行で何を食べた?」

と聞かれることがあります。

そんなとき、

「あそこでしか食べられない料理があってね。」

と話したくなる。

写真を見せたくなる。

誰かに教えたくなる。

そして数年後にも、

「あのとき食べた料理、美味しかったね。」

と思い出す。

その料理は、もう単なる食事ではありません。

旅の記憶の一部になっています。

だから、

「ここでしか食べられない」という価値は、料理そのものの価値だけではありません。

その旅そのものの価値を高める力があります。

「ここでしか」は、「ここまで来た意味」をつくる

観光地の飲食店が目指したいのは、

「珍しい料理をつくること。」

だけではありません。

「限定商品を増やすこと。」

でもありません。

もっと大切なのは、

お客様に「ここまで来て良かった」と感じてもらうこと。

そのために、

この土地だから食べられる。

この店だから味わえる。

ここへ来なければ体験できない。

そんな価値を一つでもつくる。

あるいは、すでに持っている価値に気づき、きちんと伝える。

私は、それが観光地飲食店の大きな強みになると思っています。

原島純一の視点

全国の観光地を歩いていると、

「これ、もっと伝えればいいのになぁ。」

と思うことがあります。

地域の人にとっては普通の食材。

昔から当たり前に提供している料理。

何十年も続けている調理法。

店側からすると、あまりにも日常なので、特別な価値だと思っていない。

でも、観光客から見ると、

それが一番面白いことがあります。

だから私は、観光地の飲食店に新しいものばかりを求めなくてもいいと思っています。

もちろん、新しいことに挑戦することも大切です。

でも、その前に、

「自分たちにとって当たり前の中に、観光客にとっての特別はないか。」

を探してみてほしい。

観光地には、その土地にしかないものがあります。

そして、長く続いてきた店には、その店にしかないものがあります。

それを見つけ、磨き、伝える。

「ここでしか食べられない」は、希少性を売ることではありません。

お客様に「ここまで来た意味」をつくることです。

私は、それが観光地飲食店だからこそ提供できる、大きな価値だと考えています。

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