先日、旅行とAIについて、とても興味深い調査を見ました。
Booking.comが発表したAIに関する意識調査です。
旅行者の多くが、これから旅行計画にAIを使いたいと考えている。
その一方で、AIを完全に信頼している人は決して多くない。
特に日本では、AIから得た情報を別の情報源で確認する人が多いという結果も出ています。
最初にこの数字を見たとき、
AIは使いたい。
でも、AIに全部任せたいわけではない。
ということなのかなと思いました。
そして、自分が旅行するときのことを考えてみると、なんとなく分かる気がしました。
旅行先の店探しは、結構大変です
旅行先で食事をする店を探す。
これ、楽しみでもありますが、結構大変です。
例えば、
「伊勢へ行ったら、伊勢らしいものを食べたい」
と思ったとします。
検索すれば、たくさんのお店が出てきます。
そこから一軒ずつ、
場所を見る。
営業時間を見る。
メニューを見る。
駐車場を確認する。
口コミを読む。
予約できるか調べる。
さらに旅行の場合は、
「自分たちの旅程に入るのか」
まで考えなければなりません。
午前中は伊勢神宮。
そのあと鳥羽へ向かう。
途中で昼食を食べたい。
車なので駐車場が必要。
できれば伊勢らしい料理がいい。
こうなると、単純な「伊勢 人気 ランチ」ではなかなか決まりません。
ここでAIは、とても便利だと思います。
AIには「おすすめ」より、「私に合う店」を探してほしい
例えばAIに、
「午前中に伊勢神宮を参拝します。そのあと鳥羽へ向かいます。途中で、駐車場があって伊勢らしい昼食を食べられる店を探してください」
と聞く。
すると、
場所。
移動。
時間。
料理。
駐車場。
いろいろな条件をまとめて考えたうえで、候補を数軒まで絞ってくれる。
これは便利です。
何十軒もの店を自分で一軒ずつ調べなくて済む。
おそらく私たちがAIに期待しているのは、
「一番いい店を決めて」ではなく、
「私の条件に合いそうな店まで絞って」
なのではないでしょうか。
同じ「店を探して」でも、旅行者によって条件はまったく違う
ここを考えていたら、面白くなってきました。
同じ「飲食店を探してください」でも、旅行先や旅の目的によってAIへの質問はまったく変わります。
例えば金沢なら、
「70代の両親と兼六園を見たあと、歩き疲れているので、近くで座ってゆっくり加賀料理を食べられる店はありますか?」
函館なら、
「19時ごろ函館山から夜景を見る予定です。その前に海鮮を食べたいのですが、移動時間を考えるとどの辺りの店が利用しやすいですか?」
京都なら、
「午前中に清水寺を見て、そのあと嵐山へ向かいます。移動の途中で京都らしい昼食を食べたいのですが、どの辺りで食べるのが効率的ですか?」
別府なら、
「午後は温泉を楽しんで、18時ごろホテルへ戻る予定です。その前後で大分らしい料理を食べられて、家族で入りやすい店を探してください」
同じ飲食店検索なのに、選ばれる条件が全然違います。
誰と旅行するのか。
何を見に行くのか。
何時なのか。
どこからどこへ移動するのか。
車なのか、公共交通なのか。
どんな料理を食べたいのか。
どれくらい時間があるのか。
AIは、そうした条件を整理して、
「今回のあなたの旅なら、このあたりの店が合いそうです」
と候補を絞ってくれる。
ここに、これまでの検索とは違う便利さがあるのだと思います。
AIに任せたいのは「選択」ではなく「絞り込み」なのかもしれない
例えば京都で飲食店を探したら、何百、何千という候補があります。
その中から自分たちの旅行に合う店を全部調べるのは大変です。
AIが、
何百軒
↓
条件に合いそうな20軒
↓
その中でも特に合いそうな3軒
くらいまで絞ってくれる。
ここまでは、ぜひお願いしたい。
でも、その3軒の中から、
「あなたはこの店に行きなさい」
と決めてほしいかというと、少し違う。
少なくとも私は、
そこから先は自分で見たい。
と思います。
AIが3軒教えてくれたら、私はたぶんGoogleを見る
AIから、
「この3軒が条件に合いそうです」
と教えてもらった。
では、その一番上の店をそのまま予約するか。
私は、おそらくしません。
店名を検索します。
Googleマップを見る。
料理写真を見る。
最近の口コミを見る。
公式ホームページを見る。
メニューを見る。
Instagramがあれば、それも見るかもしれません。
そして、
「この料理、美味しそうだな」
「店内も落ち着いていそうだな」
「最近の口コミもいいな」
「ここなら両親と一緒でも大丈夫そうだ」
と確認する。
そこで初めて、
「うん、ここにしよう」
となる。
AIを使っているのに、最後は自分で確かめています。
AIを信用していないだけではない気がする
もちろん、
「AIの情報が本当に正しいのか」
を確認する意味もあります。
でも、それだけではないような気がします。
旅行って、
決める時間そのものも楽しい。
どこへ行こう。
何を食べよう。
どのホテルに泊まろう。
写真を見ながら、
「ここ良くない?」
と言う。
口コミを見ながら、
「こっちも良さそう」
と迷う。
そして最後に、
「じゃあ、ここにしよう」
と決める。
そこからもう、旅は始まっているのだと思います。
だからAIには、
面倒な検索をしてもらう。
条件を整理してもらう。
候補を絞ってもらう。
知らなかった店を見つけてもらう。
でも、
AIには「探す手間」を省いてほしい。
でも、「決める楽しさ」までは渡したくない。
そんなことなのかもしれません。
だとすると、AIに選ばれるだけでは予約にならない
ここで、飲食店側から考えてみます。
これからAI検索が増えていけば、
「AIに自分の店をおすすめしてもらうにはどうすればいいのか」
という話は、ますます重要になると思います。
AIが候補として挙げてくれなければ、旅行者に存在を知ってもらえないこともあるでしょう。
でも、
AIに選ばれることがゴールではない。
AIが候補に入れてくれたあと、今度は旅行者本人が見に来ます。
そこで、
もう一度選ばれる必要がある。
これが、これからかなり重要になるように思います。
せっかくAIが薦めてくれたのに、最後の確認で落ちることもある
例えば、AIから、
「この店なら条件に合いそうです」
と教えてもらった。
そこでGoogleマップを開いてみる。
料理写真が何年も前のものばかり。
現在のメニューが分からない。
公式ホームページとGoogleマップで営業時間が違う。
店内の雰囲気もよく分からない。
最近の口コミもほとんどない。
予約できるのかも分からない。
どうでしょう。
少し不安になります。
せっかくAIが候補に入れてくれたのに、
最後の確認で選ばれない。
そんなことも起こると思います。
逆に、
最近の料理写真がある。
現在のメニューと価格が分かる。
店内の様子が分かる。
駐車場の場所まで確認できる。
最近のお客様の口コミがある。
公式ホームページの情報も最新。
予約方法も分かる。
そうなれば、
「ここなら大丈夫そうだ」
↓
「ここにしよう」
になる。
AI時代になると、Googleマップやホームページの役割が変わるのかもしれない
AI検索が増えると、
「Google検索はいらなくなるのか」
「Googleマップ対策は必要なくなるのか」
という話も出てくると思います。
でも私は、今回の調査を見ながら、むしろ違う役割が生まれるのではないかと思いました。
AIが、
自分に合いそうな店を発見する場所。
Googleマップ、公式ホームページ、口コミ、SNSなどが、
その店で本当に大丈夫か、自分の目で確かめる場所。
になる。
これまでは、
検索 → 比較 → 決定
だった。
これからは、
AIに相談
↓
候補を絞ってもらう
↓
Googleマップ・HP・口コミなどで確認
↓
自分で決める
↓
予約
という流れが増えていくのかもしれません。
そう考えると、AI時代だからGoogleマップやホームページが不要になる、というより、
AIから送られてきたお客様を最後に受け止める場所として、ますます重要になる可能性もある。
そんなふうにも考えられます。
AIに理解してもらう情報と、人に「ここがいい」と思ってもらう情報
ここ数日、AI時代の観光地飲食店について考える機会が増えました。
AIに、
誰に向いている店なのか。
どんな旅で使いやすいのか。
何が食べられるのか。
どこにあるのか。
何時に使えるのか。
どんな利用目的に合うのか。
そうした情報を理解してもらうことは、これから大切になると思います。
でも、その先には人がいる。
AIから店を知った旅行者が、
写真を見る。
口コミを見る。
メニューを見る。
店内を見る。
ホームページを見る。
そして、
「私は、この店がいい」
と思う。
だからこれからの飲食店には、
AIに理解してもらうための情報。
そして、
人に安心して選んでもらうための情報。
その両方が必要になるのではないでしょうか。
最後に「ここにしよう」と決めるのは、人なのだと思う
AIはこれから、もっと便利になると思います。
何百軒もの店を調べる手間を減らしてくれる。
自分の旅行条件に合う店を探してくれる。
知らなかった店を教えてくれる。
旅程まで考えてくれる。
その中に飲食店まで組み込んでくれる。
旅行者にとって、とても便利な存在になるでしょう。
でも、
最後に「ここにしよう」と決めるのは、人なのだと思います。
AIには、手間を省いてもらう。
候補を絞ってもらう。
知らなかった店を見つけてもらう。
でも最後は、
写真を見て、
口コミを読んで、
店の雰囲気を感じて、
「私は、この店がいい」
と自分で決める。
だとすれば、AI時代の飲食店集客は、
「AIに選ばれる店になること」だけでは足りない。
AIに見つけてもらう。
候補に入れてもらう。
そして最後に、
人からもう一度選ばれる。
そこまで考える必要があるのかもしれません。
Booking.comのAIに関する調査を見ながら、
AIには「探す手間」を省いてほしい。
でも、最後は自分で決めたい。
そんな旅行者の気持ちが、これからの飲食店選びを変えていくのかもしれない。
そんなことを考えました。
この記事を書くきっかけになった情報
Booking.comが公表した「AIに関するグローバル意識調査レポート」を読んだことが、今回の記事を書くきっかけになりました。
調査では、今後の旅行計画にAIを活用したいという人が多い一方で、AIを完全に信頼している人は少なく、AIから得た情報を別の情報源で確認する行動も多く見られました。
この記事は、その調査結果自体を評価・解説することを目的としたものではありません。調査を見て、「旅行者はAIに何を任せ、何を自分で決めたいのだろう」と考えたことを、観光地の飲食店集客に置き換えて書いたものです。
参考・元記事
