新米を主役に16店舗が定食を開発――地域の名物を、みんなで売るという発想

目次

地域のブランド食材を主役にした取り組み

ある米どころの観光地で、地域のブランド米の新米を主役にした定食キャンペーンが始まったというニュースがありました。

参加するのは、地域内の16店舗。和食店、洋食店、焼肉店、カフェ、宿泊施設など、業態の異なる飲食店が、それぞれ独自の定食を提供します。

面白いのは、主役はどの店も同じ「新米」なのに、おかずは店ごとに違うということです。

焼き魚、肉料理、煮物、天ぷらなど、それぞれの店が得意な料理で新米のおいしさを引き立てます。地域全体で共通の商品価値を打ち出しながら、各店の個性も生かしているのです。

主役は同じ新米。でも、味わい方は店ごとに違う。

おかずではなく、ご飯を主役にする

通常、定食のメニューでは、ハンバーグや焼き魚、とんかつなど、おかずが主役になります。ご飯は、あくまでセットの一部です。

しかし、今回の取り組みは逆です。

「この新米をおいしく食べるために、どんなおかずを用意するか」

という発想で商品を組み立てています。同じ定食でも、主役を変えるだけで、お客様に伝える魅力が変わります。

例えば、焼き魚定食という名前では、どこの地域でも食べられる料理に見えるかもしれません。しかし、「地元の新米を味わう焼き魚定食」であれば、その地域を訪れたからこそ食べたい商品になります。

私は、ここに観光地のメニューづくりのヒントがあると思います。

同じ食材でも、店ごとに違う楽しみがある

今回のキャンペーンでは、各店舗が同じ定食を提供するわけではありません。

ある店は肉料理。ある店は魚料理。ある店は地元のお母さんたちがつくるような家庭料理。それぞれの店が、自分たちの得意な料理で新米を引き立てています。

これは、地域全体で取り組むうえで大切なことだと思います。

もし16店舗がまったく同じ定食を販売していたら、お客様は価格や立地だけで店を選ぶことになるかもしれません。

しかし、店ごとに料理が違えば、「今日はこの店で食べてみよう」「次は別の店の定食も食べてみたい」という楽しみが生まれます。

地域としては同じ名物を売りながら、店舗としてはそれぞれ違う価値を提供する。

競争するだけでなく、地域全体で食事の選択肢を増やすことにもつながります。

地域の名物を、観光客が食べられる商品にする

観光地には、全国的に知られた食材や特産品が数多くあります。しかし、有名な食材があることと、観光客が実際に食べられることは別です。

例えば、地域のブランド米が有名でも、観光客がどの店で食べられるのかわからなければ、食事の目的にはなりにくいでしょう。

今回のように、複数の飲食店が共通のテーマで定食を提供すれば、観光客にとって選びやすくなります。しかも、参加店舗をまとめて紹介することで、地域全体の食の魅力も伝えやすくなります。

地域の名物を知ってもらうだけでなく、実際に食べられる商品として見せる。

私は、観光地の集客では、この視点が重要だと思っています。

参加店舗が考えたいのは、キャンペーン終了後

今回の取り組みは、新米の季節に合わせた期間限定のキャンペーンです。季節感があるからこそ、お客様に「今、食べに行きたい」と思ってもらいやすいのでしょう。

ただし、参加店舗にとって大切なのは、キャンペーン期間中の売上だけではありません。

✓ どの定食が人気だったのか

✓ どんなお客様が来店したのか

✓ 普段より客単価は上がったのか

✓ 他の商品への追加注文は増えたのか、など

こうしたことを確認すれば、次の商品づくりにも生かせます。地域のキャンペーンを、単なる一時的な集客イベントで終わらせないことです。

地域が集客のきっかけをつくり、各店舗がそのお客様を満足させる。

その積み重ねが、観光地全体の食の魅力を高めていくのではないでしょうか。

原島 純一の視点

私は、今回の取り組みで最も面白いと感じたのは、地域のブランド米を主役にしたことです。

普通なら、料理人は自分の得意料理を主役にしたいと考えるでしょう。しかし、今回は違います。

主役は地域の新米。各店の料理は、そのおいしさを引き立てる役割です。

この発想は、観光地の飲食店にとって参考になると思います。

観光客は、その地域ならではのものを食べたいと考えていることがあります。だからこそ、地域の食材をどう料理するかだけでなく、その食材を食べること自体が来店目的になるかを考えたいのです。

そして、地域全体で同じ食材を打ち出しても、各店が同じ料理をつくる必要はありません。それぞれの店が、自分たちの得意な料理やサービスで個性を出せばよいのです。

地域で共通の魅力を発信することと、店舗ごとの違いをつくることは両立できます。

私は、観光地の飲食店が一緒に取り組むのであれば、同じ商品を販売することよりも、地域の共通した魅力を、それぞれの店が違う方法で表現することが、地域全体の集客力を高めることにつながると考えています。

出典記事

魚沼市観光協会「メインはお米!魚沼市産コシヒカリ定食 本日10月10日(土曜日)スタート!」(2026年10月10日)
https://www.iine-uonuma.jp/31782/

日刊にいがた「絶品おかずで味わう魚沼市の新米コシヒカリ」(2026年10月8日)
https://tjniigata.jp/gourmet/202610uonuma-koshihikari/

目次