旅行先で飲食店を探すとき、皆さんはどうしているでしょうか。
「松江 出雲そば」「下関 ふぐ」などとGoogleで検索する。
Googleマップを見る。
口コミサイトで評価や写真を確認する。
InstagramやTikTokで気になる店を探す。
ここ数年だけでも、旅行者の店の探し方はずいぶん変わりました。
そして今、さらに次の変化が始まろうとしています。
Airbnbが進める「知人の旅行履歴+AI」
Airbnbが、知り合い同士で旅行先や宿泊先、体験、レビューなどを共有できる機能や、AIを活用した旅行計画機能を進めています。
これを見て私が気になったのは、新機能そのものではありません。
旅行者が「どこへ行くか」「何をするか」を決める方法が変わってきていることです。
これまでは、自分で検索して、不特定多数の口コミを読み、比較して決めることが中心でした。
ところが、そこに「知っている人が実際に行って良かった場所」という情報が加わる。
さらにAIが、「あなたなら、ここが合いそうです」と提案する。
旅行者自身が何十軒もの店を検索して比較する必要が、少しずつ減っていく可能性があります。
人は店を薦めるとき、何を伝えているのか
ここで一度、AIから離れて考えてみたいと思います。
友人から、
「今度、別府へ行くんだけど、どこかいい店知らない?」
と聞かれたとします。
そのとき、
「Googleの評価が4.3だから、この店がいいよ」
とは、あまり言わないのではないでしょうか。
「地獄蒸しを食べるなら、あそこ面白かったよ」
「魚が好きなら、あの店が良かったよ」
「家族で行くなら、あそこは落ち着いて食べられるよ」
こんなふうに薦めるはずです。
つまり、人が誰かに店を薦めるときには、店名だけではなく、
「なぜ、その店なのか」
という理由が一緒についています。
私はここが、これから非常に重要になると思っています。
「口コミを増やす」だけでは足りなくなる
飲食店の集客支援をしていると、「口コミをもっと増やしたい」という相談をよく受けます。
もちろん口コミは大切です。
Googleマップでも口コミの数や内容は、店を選ぶ大きな材料になります。
ただ、これから考えなければならないのは、その一歩先です。
その口コミには、「この店を誰に、どんな時に薦めたいのか」が残っているでしょうか。
たとえば、
「美味しかったです」
「雰囲気が良かったです」
「スタッフが親切でした」
という口コミも、もちろんありがたいものです。
しかし、
「両親を連れて行ったら、とても喜んでくれた」
「結婚記念日の旅行で利用した」
「伊勢旅行で伊勢うどんを食べるなら、ここを選んで良かった」
「子ども連れでもゆっくり食事ができた」
となると、情報としての意味が変わります。
そこには、
誰が、どんな旅行で、なぜその店を選んだのか
が入っているからです。
AIに聞く内容も、もっと具体的になっていく
これはAIによる店探しとも関係してきます。
旅行者がAIに、
「長崎で美味しい店を教えて」
と聞くだけとは限りません。
むしろ今後は、
「長崎へ両親を連れて旅行します。落ち着いて食事ができて、長崎らしい料理を楽しめる店を教えて」
あるいは、
「倉敷で地元らしいものを食べたいけれど、観光客向けすぎない店がいい」
「結婚記念日に函館へ行くので、少し特別なディナーを探している」
といった聞き方が増えていくでしょう。
このとき必要なのは、
「和食店です」
「海鮮があります」
という情報だけではありません。
どんな人が、どんな時に利用すると満足できる店なのか。
AIがそれを理解できるだけの情報が、ホームページやGoogleマップ、口コミ、SNSなどに存在していることが重要になります。
「何屋か」の次は、「どんな時に選ぶ店か」
以前から私は、飲食店の情報発信では、まず「何屋なのか」が一目で分かることが大切だと考えています。
たとえば「和食」というだけでは広すぎます。
出雲そばなのか。
ふぐなのか。
伊勢うどんなのか。
海鮮なのか。
郷土料理なのか。
旅行者が探しているものと店の特徴が結びついていなければ、そもそも候補に入りにくいからです。
ただ、その先にもう一段階あると思います。
それが、
「どんな時に選ぶ店なのか」
です。
家族旅行なのか。
記念日なのか。
友人との旅行なのか。
一人旅なのか。
その土地ならではの料理を食べたいのか。
少し贅沢な食事をしたいのか。
旅行者が店を選ぶ理由は、「料理のジャンル」だけではありません。
ここまで伝わって初めて、
「あ、この店は自分たちに合いそうだ」
となります。
観光地の飲食店は「薦める理由」を作れているか
今回のAirbnbの動きを見ながら、私は改めてこのことを考えました。
これから飲食店が考えるべきなのは、
どうすれば口コミを増やせるか
だけではないのではないでしょうか。
その前に、
お客様が誰かにこの店を薦めるとしたら、何と言って薦めるのか。
ここを考える必要があります。
「○○へ行ったら、あそこに行ってみて」
と言われる店。
そして、
「なぜ?」
と聞かれたときに、一言で理由が出てくる店。
それは料理かもしれません。
景色かもしれません。
職人の仕事かもしれません。
歴史かもしれません。
接客かもしれません。
そこでしかできない体験かもしれません。
大切なのは、その理由が店側にも分かっていて、それがきちんと外へ伝わっていることです。
検索される店から、薦められる店へ
Google検索がなくなるわけではありません。
Googleマップも、口コミサイトも、SNSも、これからも重要でしょう。
ただ、旅行者の店探しにAIが入ってくることで、
旅行者自身が大量の情報を比較する時代から、自分に合う店をAIに絞ってもらう時代
へ少しずつ進んでいく可能性があります。
そのとき、店側が発信しなければならない情報も変わります。
営業時間や住所、メニュー、価格。
もちろん、それらは必要です。
しかし、それだけではなく、
「この店は、こんな人が、こんな時に選ぶといい」
という理由まで伝えていく。
そして実際に訪れたお客様が、
「○○なら、あの店がいいよ」
と誰かに話したくなる体験を作る。
これから観光地の飲食店に必要なのは、
「検索される店」を作ることだけではなく、「人に薦めたくなる店」を作ること。
Airbnbの新しい取り組みを見ながら、そんな時代がもう始まりつつあるように感じました。
参考記事
Travel Voice「Airbnb、知人との旅行情報共有やAI活用を強化」
元記事を読む
