観光地へ車で向かっていると、こんな看板を見かけることがあります。
「名物○○ この先3km」
まだ店は見えません。
しばらく走ると、
「名物○○ あと1km」
さらに進むと、
「○○ 次の信号を右折」
そして、その先に店がある。
いわゆる「第二看板」です。
店頭に置かれている看板ではなく、店から少し離れた道路沿いや、観光地へ向かう途中に設置されている看板です。
一見すると、単なる道案内のようにも見えます。
しかし、私は第二看板には、場所を知らせることとは別の大切な役割があると思っています。
それは、
お客様に何度か店の情報に触れてもらい、その店を「目的地」に変えていくことです。
一枚目の看板だけでは、まだ店へ行くとは決めていない
例えば、旅行先で車を走らせているとします。
道路沿いに、
「名物○○ この先3km」
という大きな看板がある。
おいしそうな料理写真も載っています。
その瞬間、
「へえ、こんなお店があるんだ」
と思う。
しかし、それだけですぐに、
「よし、この店へ行こう」
となるとは限りません。
まだその店のことを知らないからです。
そのまま車を走らせます。
ところが、しばらくすると、
「○○ あと1km」
という看板がまた出てくる。
そこで、
「あ、さっきの店だ」
となります。
一枚目では、知らなかった店。
二枚目では、見たことのある店。
同じ店でも、お客様の頭の中で少しずつ存在が変わっていきます。
車で移動している観光客は、その場でGoogleを調べにくい
前回、駅看板について考えました。
駅で看板を見る。
その後、食事を探すときにGoogleで検索する。
そこで、
「あ、さっき駅で見た店だ」
と再び出会う。
駅看板の場合には、こうしたリアルとデジタルの組み合わせが起こります。
しかし、車で移動しているときは少し違います。
運転しながらスマートフォンを取り出して、
「さっきの店、Googleの評価はいくつかな」
と調べるわけにはいきません。
だからこそ、
看板を見る。
しばらく走る。
また看板を見る。
さらに走る。
また店名を見る。
という、道路上での繰り返しの接触が意味を持つことがあります。
二度目の「あ、さっきの店だ」が大切
広告やマーケティングでは、同じ対象に繰り返し接触することで、その対象への親近感や認知が高まりやすくなるという考え方があります。
第二看板も、そのような働きをすることがあります。
一枚目の看板では、
「知らない店」
だった。
二枚目では、
「あ、さっき見た店」
になる。
さらに三枚目があれば、
「また出てきた」
となる。
お客様は、その店について詳しく知ったわけではありません。
料理を食べたわけでもありません。
それでも、何度か店名や料理写真を見ることで、まったく知らなかった店が少しずつ頭の中に残っていきます。
だから第二看板は、
同じ情報を何度も見せるためだけの看板ではありません。
一度目の接触を、二度目、三度目へつなげる役割があります。
「2kmも先」が「あと2km」に変わる
そして、第二看板にはもう一つ面白い役割があります。
それが、店を「目的地」に変えることです。
例えば、知らない店の看板に、
「この先2km」
と書いてあったとします。
興味がなければ、
「2kmも先なのか」
と思うかもしれません。
しかし、
テレビで見たことがある。
以前から名前を知っている。
一枚目の看板を見て気になっていた。
何度か看板を見ているうちに食べたくなってきた。
そんな店なら、同じ「2km」という表示でも感じ方が変わります。
「2kmも先」ではなく、「あと2km」になるのです。
この違いは、とても大きいと思います。
お客様の頭の中で、
「この辺にあるらしい店」
から、
「これから行く店」
へ変わったということだからです。
有名店ほど距離表示が意味を持つ
有名な飲食店へ向かう途中で、
「○○まであと5km」
「○○まであと2km」
という看板を見かけることがあります。
これは単なる道案内ではありません。
すでにその店へ行こうとしているお客様にとっては、
「あと5km」
「あと2km」
「もうすぐだ」
と、目的地へ近づいていることを感じさせます。
テーマパークへ向かっているときに、
「○○まであと10km」
という看板を見て、
「もうすぐだね」
と思うのと似ています。
飲食店でも、お客様の頭の中で店が目的地になれば、距離そのものが期待感に変わることがあります。
だから、
「店から遠い場所に看板を出しても意味がない」
とは限りません。
その距離を使って、店への期待を高めることもできるのです。
第二看板には「食べたくなる情報」が必要
ただし、第二看板を何枚出しても、店名と矢印だけでは十分ではないことがあります。
まだその店を知らないお客様には、
「なぜそこまで行くのか」
という理由が必要だからです。
例えば、
名物料理の大きな写真。
「創業○年」の歴史。
「この土地に来たらこれ」という商品。
行列のできる人気店であること。
ここでしか食べられないもの。
第二看板を見た瞬間に、
「ちょっと食べてみたい」
と思える何かが必要です。
一枚目で興味を持つ。
二枚目で思い出す。
そして、
「せっかくだから、そこまで行ってみようか」
になる。
第二看板は、場所を教えるだけでなく、行く理由を少しずつ強くしていく看板でもあるのです。
店頭看板と第二看板では仕事が違う
店頭看板と第二看板は、同じ看板でも役割が違います。
店頭看板を見るお客様は、すでに店の前まで来ています。
そこで、
「ここに入ろうか」
「やめようか」
を判断します。
一方、第二看板を見るお客様は、まだ店の前まで来ていません。
だから第二看板の仕事は、
「入店してもらうこと」より先に、「そこまで行ってみよう」と思ってもらうこと。
です。
店頭看板は入店への最後の一押し。
第二看板は、店を行き先の候補に入れる。
同じ看板でも、お客様の意思決定のどこに置かれているかによって、役割が変わります。
看板は「店の前」にだけ置くものではない
飲食店の看板というと、多くの場合、
「店の前で何を見せるか」
を考えます。
もちろん、それも大切です。
しかし観光地では、お客様が店の前へ来るずっと前から、店選びが始まっています。
車で観光地へ向かっている途中。
駐車場を探しているとき。
観光スポットから次の場所へ移動しているとき。
「そろそろ何か食べたいね」
と話しているとき。
そのタイミングで店の情報に触れることができれば、
「こんな店がある」
という認知をつくることができます。
そしてもう一度見てもらう。
さらにもう一度思い出してもらう。
そうして、
「行ってみよう」
へ変えていく。
だから看板は、
店の場所を知らせるためだけではなく、お客様が店を決めるまでの途中に置くもの
とも考えられます。
原島 純一の視点
第二看板を見ると、
「店はまだ先なのに、こんなところに看板を出して意味があるのだろうか」
と思うことがあります。
しかし、お客様は一枚の看板だけですぐに行動するとは限りません。
一枚目で知る。
二枚目で、
「あ、さっきの店だ」
と思う。
そして三枚目で、
「もうすぐそこなら行ってみようか」
となることがあります。
特に車で移動する観光地では、その場ですぐにGoogleを調べられるとは限りません。
だからこそ、道路上で何度か情報に触れてもらうことにも意味があります。
そして私は、第二看板のもう一つの大切な役割は、店を「目的地」に変えることだと思っています。
「2kmも先にある店」なのか。
「あと2kmで着く店」なのか。
距離は同じです。
違うのは、お客様の気持ちです。
店の名前を知ってもらう。
料理を見てもらう。
もう一度思い出してもらう。
そして、
「そこまで行ってみよう」
と思ってもらう。
私は、第二看板とは単なる道案内ではなく、お客様の頭の中で店を目的地へ変えていくための仕掛けなのだと考えています。
