InstagramやTikTokなどのショート動画が日常になり、お客様のお店選びも変わってきました。
料理を見るだけでなく、焼き上がる瞬間、店内の雰囲気、そこで楽しむ人の姿まで、来店する前から見ることができます。
以前は写真を見て、その先にある時間を「想像」していました。
今は、お店へ行く前から「未来の体験」を疑似体験しているのです。
だから繁盛店は、商品だけではなく、「ここへ行ったら、どんな時間を過ごせるのか」まで見せています。
なぜ繁盛店は「未来の体験」を見せているのか?
最近、お客様がお店を選ぶまでのプロセスが、大きく変わってきていると感じています。
その大きな要因の一つが、InstagramやTikTok、YouTube Shortsなどのショート動画です。
私たちは毎日のように、さまざまな動画を目にしています。
目の前で肉が焼き上がる。
熱々の料理が運ばれてくる。
素敵なカフェでコーヒーを飲む。
ホテルの部屋から美しい景色を見る。
温泉につかりながら絶景を眺める。
古い町並みを歩く。
以前であれば、実際にその場所へ行かなければ分からなかったことを、今ではスマートフォンの画面を通して、行く前から見ることができます。
私は、この変化によって、お客様の「行ってみたい」の生まれ方そのものが変わってきていると考えています。
静止画の時代は、その先を「想像」していた
もちろん、以前から飲食店は写真を使って集客してきました。
美味しそうな料理写真。
きれいな店内。
雰囲気の良い外観。
そうした写真を見たお客様は、
「美味しそうだな」
「雰囲気が良さそうだな」
「一度行ってみたいな」
と考えます。
しかし、静止画で伝えられるのは、基本的には一つの瞬間です。
その写真を見て、
「ここで食事をしたら、きっと楽しいだろうな」
と、その先にある体験をお客様自身が想像していました。
つまり、静止画の時代には、お客様の想像力が大きな役割を果たしていたのです。
ショート動画では、行く前から「体験」が見える
ところが動画になると、少し違います。
店に入る。
席に座る。
料理が運ばれてくる。
蓋を開ける。
肉を焼く。
湯気が上がる。
料理を取り分ける。
乾杯する。
楽しそうに食事をする。
そして店を出る。
ほんの数十秒の動画でも、そこで過ごす時間の流れまで見ることができます。
つまり、お客様は実際に店へ行く前から、
「この店へ行ったら、自分はこんな体験ができる」
という未来を、動画を通して疑似体験しているのです。
だから動画を見た瞬間に、
「これ食べたい」
「ここ行きたい」
「この景色を見たい」
「こんなカフェで過ごしたい」
という感情が生まれます。
詳しい説明を読んで、じっくり比較して、頭で判断しているわけではありません。
未来の自分をイメージした瞬間に、感情が動いているのです。
お客様は「商品」だけを見ているのではない
ここを飲食店は考える必要があります。
例えば、美味しそうな料理の写真を一枚掲載する。
もちろん、それも大切です。
しかし、お客様が本当に知りたいのは、
「どんな料理があるのか」
だけなのでしょうか。
その店へ行ったら、どんな雰囲気なのか。
誰と、どんな時間を過ごせそうなのか。
料理が目の前に来たとき、どんな気持ちになるのか。
その店だからこそ楽しめることは何なのか。
そして店を出るとき、自分はどんな気持ちになっているのか。
お客様が買おうとしているのは、料理だけではありません。
その店でこれから自分に起きる「未来の体験」まで含めて、お店を選んでいるのです。
「何があるか」だけでは、未来が見えない
これはSNSだけの話ではありません。
ホームページも同じです。
店頭も同じです。
メニューも同じです。
「○○産の食材を使用しています」
「創業○年です」
「個室があります」
「宴会できます」
「厳選した食材を使用しています」
こうした情報は、もちろん必要です。
しかし、それだけではお客様自身がその場所で過ごしている姿が見えてきません。
情報は分かる。
でも、体験が見えない。
今のお客様は、毎日のように動画を通して他人の体験を見ています。
だからこそ私は、以前よりも、
「ここへ行ったら、自分に何が起きるのか」
が見えることが、お店選びにおいて重要になってきていると感じています。
観光地では、さらに「未来の体験」が重要になる
特に観光地では、この考え方が重要です。
旅行へ行く前から、お客様はすでに旅を始めています。
SNSで美しい景色を見る。
美味しそうな料理を見る。
素敵な宿を見る。
楽しそうな街歩きを見る。
そして、
「この景色を自分も見たい」
「ここでこれを食べたい」
「この宿に泊まりたい」
「こんな時間を過ごしたい」
と考えます。
つまり、旅行そのものが、実際に現地へ到着する前から未来の体験を選ぶ行為になっています。
だから観光地の飲食店も、
「うちにはこの料理があります」
だけではなく、
「この店へ来たら、旅の中でどんな時間を過ごせるのか」
まで伝えることが大切なのです。
繁盛店は「未来の体験」を見せている
繁盛店を見ていると、商品だけを上手に見せているわけではありません。
店頭を見ただけで、
「なんだか面白そうだ」
「ここで食事をしたら楽しそうだ」
「誰かを連れてきたら喜びそうだ」
と感じる店があります。
SNSを見ても、
「この料理を食べたい」
だけではなく、
「この店で、こんな時間を過ごしてみたい」
と思わせる店があります。
お客様はまだ店に入っていません。
まだ料理も食べていません。
それでも、すでに頭の中では自分がその店にいる。
これが、私はこれからの集客で非常に重要になると考えています。
商品を見せるだけではなく、お客様がそこで過ごす「未来の体験」を見せる。
繁盛店は、来店してから価値を提供しているだけではありません。
来店する前から、その店で待っている体験を伝えているのです。
原島 純一の視点
私は最近、顧問先でも「未来の体験を見せる」という話をすることが増えています。
以前は、一枚の写真を見て、その先にある体験をお客様自身が想像していました。
しかし現在は、ショート動画によって、行ったことのない店や場所であっても、そこで何が起きるのかを事前に見ることができます。
その結果、お客様のお店選びも少しずつ変わってきているのではないかと感じています。
だからといって、すべてを動画にすればいいという話ではありません。
大切なのは動画という手段ではなく、
「この店へ来たら、どんな素敵な時間が待っているのか」を伝えられているか。
SNSでも、ホームページでも、店頭でも同じです。
料理や設備などの「モノ」を伝えるだけではなく、その先にあるお客様の時間まで見せる。
これからの集客では、お客様が自分自身の「未来の体験」を思い描けることが、ますます重要になる。
私は、そのように考えています。
