駅のAI観光案内に、あなたの店はどう紹介される?――松山市の実証から考える
~観光客の「何を食べよう?」に、店の魅力は伝わっているか~
旅先の駅で、観光客が「この近くで郷土料理を食べられる店は?」と尋ねる。これまでは観光案内所のスタッフが答える場面でしたが、その案内役をAIが担う取り組みが始まっています。
松山市のJR松山駅では、生成AIを活用した多言語観光案内の実証が行われています。観光スポットや交通情報だけでなく、飲食店情報も案内の対象です。
ここで飲食店経営者に考えていただきたいのは、AIの仕組みではありません。もし旅行者が「この地域らしいものを食べたい」と尋ねたとき、自分の店は何が食べられる店として伝わるだろうか、ということです。
お客様は、最初から店名を知っているとは限りません。何を食べたいか、どんな時間を過ごしたいかから店を探しています。
松山駅に登場した、AIの観光案内役
2026年9月、JR松山駅で生成AIを活用した観光案内の実証が始まりました。松山市とJTBが連携し、松山城のマスコットキャラクター「よしあきくん」をAIアバターとして活用する取り組みです。
旅行者が音声で質問すると、観光スポットや交通情報、飲食店情報などを案内します。日本語のほか、英語、中国語、韓国語にも対応すると発表されています。
注目したいのは、AIの見た目や技術そのものではありません。旅先で「何を食べよう」と考えた人が、店を選ぶための情報に触れる場所が増えていることです。
旅行者は、最初から店名を知っているわけではない
例えば、松山に着いた旅行者が「松山らしい料理を食べたい」「鯛めしを食べたい」「家族で入れるお店はある?」と尋ねる場面を想像してみてください。これらは想定例であり、実証で実際に記録された質問ではありません。
旅行者が探しているのは、必ずしも特定の店名ではありません。食べたい料理や、一緒に食べる人、使える時間などから店を選ぼうとしています。
だからこそ、店の情報には「和食」「レストラン」という業態だけでなく、何が食べられるのか、どんな場面で利用できるのかが具体的に書かれていることが大切です。
「何が食べられる店か」は、伝わっているだろうか
ホームページに「和食・会席料理・各種宴会承ります」とだけ書かれている店と、「地元の魚を使った料理が食べられ、昼は一人でも利用でき、家族向けの席もある」と紹介されている店では、初めて訪れる人の理解しやすさが違います。
何が看板料理なのか。昼食と夕食のどちらに利用できるのか。予約は必要なのか。駅や観光施設からどう行けばよいのか。
こうした情報は、AIのためだけに整えるものではありません。観光案内所のスタッフにも、ホテルのフロントにも、初めて訪れるお客様にも役立ちます。
外国語で探せても、最後に迎えるのはお店
多言語で質問できる仕組みは、日本語の店名を知らない旅行者にとって、地域の飲食店を知るきっかけになり得ます。
一方で、案内されることと、安心して利用できることは別です。料理の内容、注文方法、支払い方法など、実際に来店した際に必要な情報も整えておきたいところです。
AIが店を紹介する機会が増えても、お客様の期待に応え、満足していただくのは飲食店自身です。
AIに選ばれることより、お客様に選ばれる理由を伝える
今回の実証で、どの情報源や基準を使って個々の飲食店を紹介しているかは、公表情報だけでは確認できません。ホームページに詳しく書けば必ず案内される、という話ではありません。
それでも、店の特徴や利用条件を分かりやすく伝えるという基本は変わりません。お客様の「あったら良いな」に応えられること。そして、その価値をお客様が店に来る前に知ることができること。
「何屋なのか」「何が食べられるのか」「どんなときに利用できるのか」。この3つを、初めて訪れる旅行者の目線で見直してみてはいかがでしょうか。
店の前に来るより先に、店選びは始まっている
駅の観光案内、スマートフォン、宿泊施設の案内。旅行者が食事場所を考えるきっかけは、店の外にたくさんあります。
今回の松山市の実証は、そうした接点にAIが加わる可能性を示しています。
大切なのは、AIに合わせて店を変えることではありません。お客様に選ばれる理由を、初めてその土地を訪れる人にも分かる言葉で伝えることです。
AIに選ばれるために店を変えるのではなく、お客様に選ばれる理由を、AIにも人にも分かる形で伝える。
参考資料・元記事
※個別の発表記事への直接リンクは未検証のため、公式サイトの入口を掲載しています。
