観光地の飲食店のホームページを見ると、アクセスページには通常、住所や最寄り駅が書かれています。
「○○駅から徒歩5分」
「○○インターから車で10分」
もちろん、必要な情報です。
しかし、初めてその土地を訪れる観光客にとって、本当にそれだけで場所が分かるのでしょうか。
例えば京都へ初めて旅行する人が、
「○○駅から徒歩5分」
と書かれているのを見ても、
「その○○駅って、どこ?」
となるかもしれません。
自分がこれから行く金閣寺から近いのか。
清水寺から近いのか。
次に行く知恩院とは同じ方向なのか。
それとも、まったく反対方向なのか。
地元の人なら当たり前に持っている「土地勘」を、観光客は持っていません。
今回は、観光地の飲食店が伝えるべき「アクセス情報」について考えてみます。
観光地によって、店の見つけられ方は違う
鎌倉の小町通りを歩いていると、たくさんの飲食店が目に入ります。
柴又の商店街もそうです。
浅草周辺も、徒歩で街を回りながら、
「ここ、美味しそう」
「ちょっと入ってみようか」
とお店を発見できます。
こうした観光地では、観光客が歩く動線上にお店があれば、存在そのものに気づいてもらえる可能性があります。
ところが、すべての観光地がそうではありません。
京都を考えてみてください。
金閣寺。
清水寺。
知恩院。
伏見稲荷。
嵐山。
観光スポットが広い範囲に点在しています。
同じ「京都観光」でも、観光客は街の中を大きく移動します。
こうした観光地では、偶然店の前を通って発見してもらうだけではなく、
旅行者の移動の中に、自店を入れてもらう
という視点が重要になります。
観光客は「京都の距離感」を知らない
京都をよく知っている人なら、
「清水寺と嵐山は離れている」
「金閣寺から祇園へ行くなら、このくらい時間がかかる」
という感覚を持っています。
しかし、初めて京都を訪れる人は違います。
清水寺も、金閣寺も、嵐山も、知恩院も、
頭の中では全部、
「京都」
なのです。
名前は知っていても、それぞれの位置関係までは分からない。
清水寺から嵐山までタクシーでどのくらいかかるのか。
金閣寺から次の観光地へ向かう途中に、その飲食店があるのか。
そこまで分かっている観光客ばかりではありません。
そんな人に、
「最寄りの○○駅から徒歩5分」
と伝えても、その駅自体の場所が分からなければ、自分の旅行に組み込めるか判断できないのです。
観光客が知りたいのは「住所」より「位置関係」
もちろん住所も必要です。
最寄り駅も必要です。
しかし、観光客が本当に判断したいのは、
「自分が行こうとしている場所から、この店は近いのか?」
ということではないでしょうか。
例えば、
「清水寺から車で約○分」
「八坂神社から徒歩約○分」
「金閣寺観光の前後に立ち寄りやすい場所です」
「京都駅から○○へ向かう途中にあります」
と書かれていれば、旅行者は一気にイメージしやすくなります。
「それなら清水寺を見たあとにランチに行けそうだ」
「次の観光地へ向かう途中だから寄れる」
と、自分の旅行の中にお店を置くことができます。
つまり観光地のアクセス情報では、
店がどこにあるのかを伝えるだけではなく、旅行者が知っている場所との位置関係を伝えることが大切なのです。
県が違っても、旅行者にとっては「途中」かもしれない
以前、富山県砺波市のお店について考えていたときにも、同じことがありました。
砺波市は富山県です。
飛騨高山は岐阜県。
金沢は石川県。
県名だけを見ると、それぞれ別の観光地に見えます。
しかし車で移動すると、
飛騨高山から砺波までは、およそ1時間程度。
砺波から金沢までも、およそ1時間程度です。
この位置関係を知らない観光客は少なくないでしょう。
ところがホームページに、
「飛騨高山から車で約○分」
「金沢から車で約○分」
「高山から金沢へ向かう途中のお食事にも便利です」
と書かれていたらどうでしょう。
「あれ? ここなら移動途中に寄れるじゃないか」
と気づく人が出てきます。
店の場所は何も変わっていません。
新しい道路ができたわけでもありません。
ただ、お客様が知らなかった位置関係を教えてあげただけです。
それによって、新しい利用機会が生まれる可能性があります。
「Googleマップで調べれば分かる」で終わらせない
ここまでの話をすると、
「Googleマップを見れば分かるでしょう」
と思う人もいるかもしれません。
確かに、その通りです。
店名を検索する。
地図を開く。
行きたい観光スポットを検索する。
ルートを表示する。
所要時間を見る。
調べれば、すぐに分かります。
でも、ここで考えてほしいのです。
なぜ、その作業をすべてお客様にやってもらうのでしょうか。
旅行者は、自店のことだけを調べているわけではありません。
ホテルを調べる。
観光地を調べる。
交通手段を調べる。
次の予定を調べる。
そして、何軒もの飲食店を比較する。
その中で気になる店を見つけるたびに、位置関係まで自分で調べてもらう。
それよりも店側から、
「あなたが行こうとしている○○から、当店まではこのくらいです」
と先回りして伝えた方が親切ではないでしょうか。
Googleマップで調べれば分かる情報だからこそ、
お客様に調べさせる前に、店側から提供しておく。
それも観光地の飲食店に必要な情報発信だと思います。
検索で見つかることと、旅程に入ることは違う
SEOやGoogleマップ対策によって、
「京都 ランチ」
「京都 和食」
などで自店が表示されたとします。
料理写真も魅力的。
口コミも良い。
価格も予算内。
お客様も、
「ここ、良さそうだな」
と思っている。
それでも、
「でも、どこにあるんだろう?」
が解決できなければ、予約や来店まで進まないことがあります。
検索で見つけてもらうことはゴールではありません。
観光客の場合、その次に、
「自分の旅行に、この店を入れられるか」
という判断があります。
だから、
検索で見つけてもらうことと、旅程に入れてもらうことは別なのです。
アクセスページには、その間をつなぐ役割があります。
AI検索時代には「旅程との関係」がさらに重要になる
これからは、この考え方がさらに重要になると考えています。
これまでなら、
「京都 ランチ」
と検索して、お店を一軒ずつ比較することが一般的でした。
しかしAIを使った検索や旅行相談が普及すると、
「午前中に清水寺へ行って、午後は嵐山へ行きます。その途中で京都らしいランチが食べたい」
「飛騨高山から金沢へ車で移動します。途中で昼食を食べるならどこがいい?」
という探し方も増えていくでしょう。
そのとき必要になるのは、料理ジャンルや価格だけではありません。
どの観光スポットから近いのか。
どの移動ルートに組み込みやすいのか。
車で何分なのか。
徒歩で何分なのか。
どんな観光の前後に利用しやすいのか。
こうした情報も、店を提案するための重要な判断材料になります。
だからこれからのアクセスページは、
「住所を教えるページ」から、「旅程に組み込んでもらうページ」へ。
そんな視点で見直す必要があるのではないでしょうか。
原島 純一の視点
観光地の飲食店を支援するとき、私はアクセスページに最寄り駅からの距離だけではなく、主要な観光スポットからの距離や所要時間も入れるようにお話ししています。
なぜなら、地元の人が当たり前に持っている土地勘を、観光客は持っていないからです。
「○○駅から徒歩5分」と言われても、その駅が自分の旅行ルートのどこにあるのか分からない。
一方で、
「清水寺から○分」
「高山から金沢へ向かう途中」
と伝えれば、自分の旅行との関係が見えてきます。
観光客に必要なのは、住所だけではなく「位置関係」です。
そして私は、Googleマップで調べれば分かるからこそ、お客様に調べてもらう前に店側から伝えてあげればいいと思っています。
これはアクセス情報だけの話ではありません。
お客様が店を選ぶために必要な情報を、店側がどこまで先回りして提供できるかという話です。
検索で見つけてもらっただけでは、まだ来店は決まっていません。
その店を自分の旅程に入れられると分かったとき、初めて具体的な来店候補になります。
私は、観光地の飲食店のアクセスページは、単に店の場所を伝えるのではなく、お客様の旅の中に自店を置いてもらうためのページであるべきだと考えています。
