うな重を高く売ったのではない。職人の時間まで商品にした川越のうなぎ店

川越の創業50年以上のうなぎ店が、Airbnb Experiencesでうなぎの食文化を体験するツアーの販売を始めました。

基本料金は1人1万2100円。

内容は、単にうな重を食べるだけではありません。

職人によるうなぎの捌き。

炭火で焼き上げる工程。

うなぎについての説明。

そして、実際に料理を味わう。

日本酒のペアリングや、本わさびのすりおろし体験などを組み合わせることもできます。

約2時間をかけて、うなぎという日本の食文化そのものを体験してもらう商品です。

この取り組みを見て、私はとても面白いと思いました。

うな重の価格を上げたのではなく、
売っているものそのものを変えた。

目次

「うな重1万2100円」と考えると高く見える

仮に、

「うな重 1万2100円」

とメニューに書かれていたら、どうでしょうか。

多くのお客様は、

「少し高いな」

「他の店ならいくらだろう」

と考えると思います。

そしてGoogleマップやグルメサイトで、周辺のうなぎ店と価格を比較するかもしれません。

4500円。
6000円。
8000円。

その中に1万2100円の商品があれば、当然「高い」という印象になります。

でも今回の商品は違います。

お客様が買っているのは、うな重だけではありません。

職人が一尾のうなぎを料理する時間そのものです。

ここが非常に重要だと思います。

今まで無料だったものに、実は価値がある

飲食店には、売上になっていない価値がたくさんあります。

職人が魚を捌いているところ。

出汁を引いているところ。

蕎麦を打っているところ。

炭を起こしているところ。

味噌や漬物を仕込んでいるところ。

料理人にとっては、毎日の仕事です。

だから店側は、

「そんなものを見せても仕方がない」

と思ってしまうことがあります。

でも、お客様からすると違います。

特に旅行者にとっては、
普段見ることのできない仕事そのものが体験になります。

まして海外から来た旅行者なら、

「日本の職人が、どのようにうなぎを料理するのか」

という時間は、単なる食事とはまったく違う価値を持ちます。

店側にとっての日常が、お客様にとっては非日常になる。

観光地の飲食店には、こうしたものがまだたくさん眠っているように思います。

商品を高くするのではなく、比較されない商品にする

飲食店の値上げ相談をしていると、

「5000円を5500円にして大丈夫でしょうか」

「周りの店より高くならないでしょうか」

という話になります。

もちろん、それは大切です。

でも価格競争から抜ける方法は、値段の付け方だけではありません。

そもそも、他店と単純比較されない商品を作る。

という方法があります。

たとえば、

「うな重5000円」と「うな重6000円」であれば比較されます。

でも、

職人の捌きを目の前で見て、日本のうなぎ文化を知り、炭火で焼き上がるまでを体験して、最後に料理を味わう2時間

となれば、比較対象は近所のうなぎ店ではありません。

旅行中の体験商品になります。

美術館。
観光ツアー。
料理教室。
文化体験。

そうしたものと同じ財布から選ばれる商品になります。

比較対象そのものが変わる。

これは大きな違いです。

観光地の飲食店ほど「料理の外側」に価値がある

観光地の飲食店には、料理そのもの以外にも多くの資産があります。

その土地の食材。

地域独特の調理法。

昔から使っている道具。

店の歴史。

先代から受け継いだレシピ。

職人の技術。

生産者との関係。

季節ごとの仕込み。

地元では当たり前すぎて、店側が価値として認識していないものもあります。

しかし旅行者は、

「そこでしかできないこと」

を求めています。

だから私は、観光地の飲食店では、

「何を食べてもらうか」だけではなく、
「何を見てもらえるか」「何を知ってもらえるか」「何を体験してもらえるか」

まで考える価値があると思っています。

「体験を作ろう」と無理をする必要はない

ここで少し注意したいことがあります。

体験商品が流行っているからといって、無理にイベントを作る必要はありません。

新しい設備を入れる必要もありません。

毎日やっている仕事を見直してみるだけでもいいと思います。

朝の仕込み。

市場から届いた魚。

出汁を取る工程。

職人が包丁を入れる瞬間。

その土地の食材についての説明。

先代から受け継いできた料理の話。

今まで厨房の中だけで行っていたことを、少しお客様に見てもらう。

それだけで、

「料理を食べる店」から、
「その料理が生まれるところを体験する店」

へ変わる可能性があります。

老舗には、まだ値段を付けていない資産がある

特に老舗飲食店には、この考え方が合うと思います。

長く続いてきた店には、新しい店にはすぐ作れないものがあります。

歴史。

技術。

道具。

仕入先との関係。

昔から続く料理。

そして、その店で長年働いてきた人。

でも、それらの多くは料理の価格には十分反映されていません。

むしろ、

「昔からやっていることだから」

と無料のまま提供されていることがあります。

今回の川越のうなぎ店の取り組みを見ていると、

老舗の高付加価値化とは、高級食材を使うことだけではない。

と改めて感じます。

今まで店の中にあった価値を見つけて、それをお客様が体験できる形にする。

そこにも、大きな可能性があります。

料理の価格を上げる前に、「料理の周り」を見てみる

原材料費も上がっています。

人件費も上がっています。

これからさらに価格改定を考えなければならない飲食店も多いと思います。

もちろん、必要な値上げはしなければなりません。

ただ、

「原価が上がったから500円上げる」

だけでは、お客様には値上げしか見えません。

その時に一度、

この料理の周りに、まだ商品にしていない価値はないだろうか。

と考えてみる。

職人の仕事。
店の歴史。
食材の背景。
地域の文化。
料理が完成するまでの時間。

そこまで含めてお客様へ伝えることができれば、同じ料理でも見え方は大きく変わります。

今回の川越のうなぎ店が売り始めたのは、高いうな重ではありません。

「日本のうなぎ文化に触れる2時間」

観光地の飲食店には、まだ値段を付けていない価値が、たくさん残っているのではないでしょうか。

参考・元記事:川越のうなぎ店によるAirbnb Experiencesでの体験商品販売に関する運営会社の公式発表・掲載情報

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