「料理説明」、すべてのお客様に同じようにしていませんか?

料理の食べ方や楽しみ方を、お客様にきちんと説明する。

とても大切な接客です。

ところが、丁寧に説明すればするほど良いとは限りません。

何度も食べたことがあるお客様に、毎回最初から最後まで説明すれば、

「それ、知っているんだけどな……」

と思われてしまうこともあります。

一方で、初めて食べるお客様には、何も説明しなければ、その料理ならではの楽しみ方を知らないまま食事が終わってしまうかもしれません。

大切なのは、全員に同じ説明をすることではありません。

まず少しだけ伝える。

そして、お客様の反応を見る。

必要なら、そこから詳しく説明する。

今回は、名古屋のひつまぶしと味噌カツを例に、お客様に合わせて「説明の深さ」を変える接客について研究してみましょう。

目次

丁寧に説明したのに、お客様がちょっと困った顔をした

ホールスタッフ

先生、この前ちょっと気になったことがあったんです。
料理を出すときに、食べ方をちゃんと説明したんですよ。

飲食店コンサルタント 原島

うん。
いいことじゃない。

ホールスタッフ

でも、お客様が途中から、
「ああ、はいはい。知ってます」
みたいな感じになってしまって……。

若手コンサルタント

せっかく丁寧に説明したのに(笑)。

ホールスタッフ

そうなんです(笑)。
説明しないより、したほうがいいと思っていたんですけど。

飲食店コンサルタント 原島

もちろん説明は大切だよ。
でも、
「説明すること」と
「お客様に喜んでもらうこと」は、
必ずしも同じじゃないんだよね。

観光客だから「初めて」とは限らない

若手コンサルタント

でも観光地なら、
観光客には説明したほうがいいんじゃないですか?

飲食店コンサルタント 原島

じゃあ、名古屋へ旅行に来たお客様だったら、
全員ひつまぶしを初めて食べるかな?

若手コンサルタント

あっ。
2回目、3回目の人もいますね。

飲食店コンサルタント 原島

そう。
名古屋が好きで、毎年来ている人だっている。
ひつまぶしが好きで、
「名古屋へ来たら必ず食べる」
という人だっているよね。

ホールスタッフ

その人に毎回、
「まず4等分していただいて……」
から始めたら、
「俺は知ってんだよ!」
ってなりますね(笑)。

最初から全部説明しなくてもいい

経営者

でも、それをスタッフが
見分けるのって難しくないですか?
初めてかどうかなんて、
見ただけでは分からないでしょう。

飲食店コンサルタント 原島

そう。
だから、当てようとしなくていいんだよ。

経営者

当てなくていい?

飲食店コンサルタント 原島

最初に少しだけ説明して、
お客様の反応を見ればいい。
例えば、ひつまぶしなら料理を出したときに、
「こちらがお出汁になります。
最後にお茶漬けとしてもお楽しみいただけます」
くらいから入る。

ホールスタッフ

それだけですか?

飲食店コンサルタント 原島

まずはそれだけ。
そこで、お客様がどう反応するかを見るんだよ。

ひつまぶしなら、お客様の反応で説明を変える

ホールスタッフ

こちらがお出汁になります。
最後にお茶漬けとしてもお楽しみいただけます。

日本人観光客

はいはい。
いつも最後は出汁で食べています。

ホールスタッフ

ありがとうございます。
では、ごゆっくりお楽しみください。

若手コンサルタント

これなら早いですね。

飲食店コンサルタント 原島

そう。
このお客様は、もう食べ方を知っている。
だったら、それ以上説明する必要はないよね。

ホールスタッフ

逆に、
「へえ、出汁をかけるんですか?」
って言われたら?

飲食店コンサルタント 原島

そこで初めて、
「よろしければ、お召し上がり方をご説明しましょうか?」
と聞けばいい。
興味を示してくれたら、そこから詳しく説明する。
それなら押しつけにならないでしょう?

「薄く説明する → 反応を見る → 深く説明する」

若手コンサルタント

なるほど。
最初から全部説明するか、まったく説明しないか、
ではないんですね。

飲食店コンサルタント 原島

そう。
私は、
薄く説明する → お客様の反応を見る → 必要なら深く説明する
くらいが自然だと思う。

ホールスタッフ

知っている感じなら、
そこで終わる。
知らなそうだったり、
興味を持ってくれたら詳しく話す。

飲食店コンサルタント 原島

そういうこと。
お客様も、
「説明を聞きたい人」
「もう知っている人」
「詳しく知りたい人」
いろいろだからね。

経営者

全員に同じ説明をするほうが、
スタッフとしては楽なんですけどね。

飲食店コンサルタント 原島

そうなんだよ(笑)。
でも、
スタッフにとって楽な接客と、
お客様にとって心地いい接客は、必ずしも同じじゃない。
そこは考えたいよね。

味噌カツでも、同じことが起きる

シェフ

これ、ひつまぶしだけじゃないですよね。

飲食店コンサルタント 原島

もちろん。
例えば味噌カツでも同じだよね。

ホールスタッフ

こちら、お好みで七味や白ごまをかけてお召し上がりください。

日本人観光客

へえ!
七味と白ごまをかけるんですか?

ホールスタッフ

はい。
まずはそのまま召し上がっていただいて、途中から七味や白ごまを加えていただくと、味の変化も楽しんでいただけます。

若手コンサルタント

今は、お客様が興味を示したから説明を深くしたんですね。

飲食店コンサルタント 原島

そう。
逆に、
「ああ、いつもかけています」
と言われたら、
「ありがとうございます。では、お好みでお楽しみください」
でいい。
大事なのは、説明文を最後まで言い切ることじゃないんだ。

知っている人にも「店独自の情報」なら価値がある

経営者

じゃあ、食べ方を知っているお客様には、何も説明しなくていいんですか?

飲食店コンサルタント 原島

そこも、もう一つ考えたい。
一般的な食べ方を知っていても、
その店独自の楽しみ方は
知らないかもしれないでしょう?

シェフ

例えば、店独自の薬味とか、味噌の使い方とか。

飲食店コンサルタント 原島

そう。
ひつまぶしを何度も食べている人でも、
「こちらの山椒は当店で合わせているものなので、
よろしければ途中でお試しください」
なら、
「それは知らなかった」
になるかもしれない。

ホールスタッフ

知っていることを長々説明されるのは嫌だけど、
知らないことを教えてもらえるのは嬉しい。

飲食店コンサルタント 原島

まさにそれ。
だから、
基本説明をどこまで省くか
と、
店独自の価値として何を伝えるか
は分けて考えたほうがいいと思う。

マニュアル化するのは「セリフ」ではなく「接客の流れ」

経営者

でも、これをスタッフ全員ができるようにするには、
やっぱりマニュアルが必要ですよね。

飲食店コンサルタント 原島

私は、マニュアルはあったほうがいいと思う。
ただし、
「料理を出したら、この文章を全部言いましょう」
というマニュアルにはしないほうがいい。

若手コンサルタント

じゃあ、何を決めるんですか?

飲食店コンサルタント 原島

流れを決めるんだよ。
まず、最初に何を一言伝えるのか。
次に、お客様の反応を見る。
知っていそうなら、基本説明は終える。
知らなそうだったり、興味を示したら、詳しく説明する。
そして必要なら、店独自の楽しみ方を伝える。

ホールスタッフ

セリフを暗記するんじゃなくて、
「こういう反応なら、こうする」
を決めておくんですね。

飲食店コンサルタント 原島

そう。
そのほうがスタッフも自然に話せるし、
お客様に合わせた接客ができるようになると思う。

良い接客は「説明量」をお客様に合わせる

若手コンサルタント

先生。
今回の話って、
「料理をちゃんと説明しましょう」
という話ではなかったんですね。

飲食店コンサルタント 原島

そうなんだよ。
たくさん説明することが、良い接客ではない。
逆に、説明しないことがスマートな接客でもない。
大切なのは、
目の前のお客様に、どれくらいの説明が必要なのか。
そこを見ることだと思う。

ホールスタッフ

だから最初は薄く伝えて、反応を見る。

飲食店コンサルタント 原島

そう。
そして必要なら深くする。
知っているなら、邪魔をしない。
でも、その店でしか知らない楽しみ方があるなら、
一言伝えてあげる。
そのくらいが自然なんじゃないかな。

経営者

全員に同じ接客をすることが、
平等な接客ではないということですね。

飲食店コンサルタント 原島

私はそう思う。
同じ料理でも、お客様によって必要な接客は違う。
そこまで考えて接客を設計できる店は、強いと思うよ。

原島純一の視点

料理の食べ方を説明することは、とても大切です。

特に観光地では、その土地ならではの料理を初めて食べるお客様もたくさんいます。

食べ方を知らなければ、本来の美味しさや楽しみ方を十分に体験できないこともあります。

だから、きちんと説明する。

これは大切です。

しかし一方で、観光客だからといって、全員が初めてとは限りません。

その土地を何度も訪れている人もいます。

その料理が好きで、毎回食べている人もいます。

そんなお客様に、毎回最初から最後まで同じ説明をしたら、

「それは知っているよ」

と思われてしまうこともあります。

だから私は、最初からすべてを説明する必要はないと思っています。

まず、少しだけ伝える。

そして、お客様の反応を見る。

知っている様子なら、そこで止める。

初めてだったり、興味を示してくれたりしたら、そこから詳しく説明する。

つまり、

薄く説明する。 反応を見る。 必要なら深く説明する。

この流れです。

そして、基本的な食べ方を知っているお客様にも、その店独自の楽しみ方なら伝える価値があります。

秘伝の味噌。

店独自の薬味。

七味や白ごま。

途中から加えるトッピング。

おすすめの〆方。

「それは知らなかった」

と思ってもらえる情報なら、何度もその料理を食べているお客様にも、新しい体験を提供できます。

だから接客マニュアルも、

「この料理を出したら、この文章を全部言う」

ではなく、

お客様の反応によって、どう説明を変えるのか。

そこまで決めておいたほうがいいと思っています。

良い接客とは、たくさん説明することではありません。

目の前のお客様に必要な説明をすること。

観光客か、地元客か。

初来店か、常連か。

見た目だけで決めるのではなく、お客様との短い会話や反応から判断していく。

同じ料理でも、お客様によって必要な接客は違います。

私は、その違いに合わせられることが、本当の意味での「お客様に寄り添った接客」だと考えています。

目次