~話題になった商品は、本当に売れているのか。Googleマップのデータから考える飲食店経営~
2026年10月8日、Googleが世界10都市の最新グルメトレンドを発表しました。
東京、ニューヨーク、ロンドン、シカゴなどを対象に、Googleマップの口コミや評価、経路検索などのデータを分析したものです。
その中で、特に興味深い数字がありました。
東京では「お餅」に言及したGoogleマップの口コミが、前年と比較して168%増加しました。これは販売数や売上高の増加率ではありません。
Googleは、訪日外国人観光客の増加も、この動きに影響している可能性があると説明しています。
ここで飲食店経営者なら気になることがあります。「お餅が168%も売れるようになったのか?」しかし、今回の数字はそういう意味ではありません。増えたのは、Googleマップの口コミで「お餅」が話題にされた回数です。
この違いを理解することが、今回の記事の出発点になります。
口コミの168%増は、売上168%増ではない
例えば、昨年「お餅」に言及した口コミが100件だったとします。それが今年268件になれば、前年比168%増です。
口コミ件数の説明用イメージ(仮の数字)
前年100件 → 今年268件
+168%
※Googleが公表した実際の口コミ件数ではありません。
ところが、この数字だけでは、お餅の販売数が増えたのかどうかは分かりません。
口コミを書く人が増えたのかもしれません。観光客が新しい食体験として、お餅を積極的に紹介するようになったのかもしれません。あるいは、SNSなどで話題になった商品について、口コミでも触れる人が増えた可能性もあります。
今回のGoogleの発表では、増加前後の具体的な口コミ件数や、実際の販売数量は示されていません。
分かるのは「お餅について語る人が増えた」ということまで。数字が何を表しているのかを正しく理解することが大切です。
なぜ、東京のお餅が話題になったのか
Googleは、今回の発表で「餅甚」や「ツバメヤ 日本橋店」などの店舗を紹介しています。また、インバウンド観光客の増加が、お餅への関心の高まりに影響している可能性を挙げています。
日本人にとって、お餅は昔から馴染みのある食べ物です。しかし、外国人観光客にとっては、独特の食感や製法を持つ、日本らしい食文化の一つとして映ることがあります。
日本人には当たり前の食べ物でも、海外から訪れた人には新鮮な体験になる。そして、その体験をGoogleマップの口コミに残す。こうした行動が、今回の数字の背景にある可能性も考えられます。
商品の新しさと、話題の新しさは必ずしも同じではありません。昔からある商品でも、新しいお客様に発見されることで再び注目されることがあります。
Googleマップには、異なる種類の数字がある
今回のGoogleの発表では、口コミだけでなく、経路検索などのデータも利用されています。しかし、それぞれの数字が表していることは違います。
| 指標 | 分かること | それだけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 口コミでの言及 | 何が話題になっているか | 販売数・売上 |
| 口コミの評価 | 利用者の満足度や感想 | 全顧客の満足度 |
| 経路検索 | 店への行き方を調べた行動 | 実際の来店数 |
| Googleマップでの閲覧 | 店舗情報への関心 | 購入や飲食の有無 |
| POS・売上データ | 実際に売れた数量や金額 | お客様が話題にした理由 |
Googleビジネスプロフィールでは、閲覧数や経路検索などのパフォーマンス情報を確認できます。ただし、経路検索が増えたからといって、その人数がすべて来店したわけではありません。
口コミはお客様の関心や体験を知る情報。売上データは実際の購買を知る情報。それぞれ役割が違うのです。
口コミで話題の商品と、実際に売れている商品を比べてみる
では、飲食店では今回のニュースをどう生かせばよいのでしょうか。まず考えたいのは、Googleマップの口コミに書かれている内容と、実際の商品別売上を比較することです。
| 商品 | 口コミでの話題 | 実際の販売状況 |
|---|---|---|
| 看板定食 | よく登場する | 販売数も多い |
| 季節限定パフェ | 写真や口コミが多い | 販売数は少ない |
| 日替わりランチ | 口コミでは目立たない | 販売数は多い |
| 地元の郷土料理 | 観光客の口コミに登場 | 販売数は増加傾向 |
※説明のための架空の事例です。
季節限定パフェは、販売数こそ少なくても、写真を撮りたくなる商品なのかもしれません。
日替わりランチは、話題にはなりにくくても、地元のお客様が繰り返し注文する商品なのかもしれません。
郷土料理は、観光客にとって、その地域を訪れた思い出になっている可能性があります。
よく売れる商品と、よく語られる商品は、必ずしも同じではありません。そして、どちらも飲食店にとって大切な商品です。
口コミは、商品が持つ「もう一つの価値」を教えてくれる
飲食店の商品分析では、売上高、販売数、粗利益などを確認します。もちろん、これらは経営判断に欠かせない数字です。
しかし、口コミには、売上データだけでは見えない情報があります。
「旅行中に食べた料理の中で、一番印象に残った」「初めて食べる食感だった」「この料理を食べるために、また来たい」。
こうした言葉は、商品が単に食事として消費されるだけでなく、お客様の体験や思い出になっていることを教えてくれます。
特に観光地の飲食店では、この視点が重要です。地元のお客様には馴染みのある料理でも、観光客にとっては、その土地でしか味わえない特別な体験になることがあります。
売れている商品を知ることと、お客様の記憶に残る商品を知ること。この二つを組み合わせることで、商品を見る視点が広がります。
数字を正しく読むことが、次の一手につながる
今回、Googleが発表した「お餅の口コミ言及168%増」という数字は、興味深い食トレンドを示しています。しかし、その数字だけで、お餅の市場が168%成長したと判断することはできません。
飲食店でも同じです。Googleマップの閲覧数が増えた。口コミが増えた。経路検索が増えた。こうした変化は、集客の手がかりになります。
しかし、実際に来店客数が増えたのか、何が売れたのか、売上や利益にどうつながったのかは、店舗の実績データと合わせて確認する必要があります。
一方で、売上データだけを見ていても、お客様が何に魅力を感じ、何を思い出として語っているのかは分かりません。
Googleマップの口コミと、店舗の売上データ。両方を見ることで、初めて見えてくることがあるのです。
今回のニュースをきっかけに、自分のお店の口コミを読み直してみてはいかがでしょうか。
お客様は、どの商品について話しているでしょうか。そして、その商品は実際にどのくらい売れているでしょうか。
そこには、まだ気づいていないお店の強みが隠れているかもしれません。
参考資料・元記事
- Google Japan公式ブログ(2026年10月8日のグルメトレンド発表)
- トラベルボイス(Googleマップの食トレンド関連記事)
- Googleビジネスプロフィール ヘルプ(パフォーマンス情報)
※上記のGoogle公式ブログとトラベルボイスはサイト入口です。個別記事への直接URLは未確認のため、掲載前に差し替えてください。
