旅行先で食事をするお店を、どのように探していますか。
以前であれば、旅行ガイドブックや観光パンフレット、グルメサイトなどを参考にすることが一般的でした。
現在では、GoogleマップやSNSに加えて、生成AIを使って飲食店を探すという方法もあります。
例えば、AIに次のように質問することができます。
「この観光地で、地元の名物料理が食べられるお店を教えて」
「家族で利用できる、駐車場のある和食店を探して」
「観光の途中で立ち寄れる、地元の人にも親しまれている飲食店は?」
このように、旅行者が希望する条件を伝えれば、AIが飲食店の候補を探してくれる時代になってきました。
では、観光地の飲食店は、この変化に対応できているのでしょうか。
AIを使った飲食店探しで課題になっていた情報の信頼性
2026年9月、飲食店探しとAIの利用に関する調査結果が発表されました。
調査の主な対象は、普段AIを利用しているものの、飲食店探しにはAIを使わない20〜50代の360人です。
この調査では、飲食店を探す際に情報が古かったり、不足していたりすることを理由に、お店を候補から外した経験がある人が7割以上に上りました。
この数字は、一般消費者全体の割合でも、AIが提示した情報だけに限定した割合でもありません。
しかし、飲食店探しにおいて、情報の正確さが重要であることを考えさせられる結果です。
生成AIが登場した当初は、飲食店を探しても古い情報が表示されたり、実際の営業状況と異なる回答が返ってきたりすることがありました。
一方、現在では、インターネット上の情報を検索し、複数の情報源を参照しながら飲食店を探せるAIサービスもあります。
AIによる飲食店検索は進歩しています。
だからこそ、これからの観光地の飲食店は、AIを通じて自店の魅力を知ってもらうことも考える必要があるのではないでしょうか。
観光客は、初めて訪れるお店を探している
観光地の飲食店には、地元のお客様と観光客という、異なる利用者がいます。
地元のお客様であれば、お店の場所や料理の内容、営業時間などを知っていることもあります。
しかし、観光客は違います。
初めて訪れる地域で、限られた時間の中から食事をするお店を選ばなければなりません。
しかも、旅行中の食事は、その地域を訪れる楽しみの一つです。
- せっかくなら地元の名物料理を食べたい
- その土地ならではのお店を訪れたい
- 観光地らしい雰囲気を楽しみたい
こうした希望を持って飲食店を探す人もいるでしょう。
AIは、旅行者が求める条件を整理し、候補を探すための便利な手段になり得ます。
ただし、AIがお店の魅力を理解するためには、その魅力がインターネット上で分かりやすく紹介されている必要があります。
老舗の魅力は、店名だけでは伝わらない
観光地には、何十年も営業を続けている老舗飲食店があります。
長年受け継がれてきた名物料理。地元の食材を使った料理。地域の人たちに親しまれてきた歴史。
こうしたものは、観光地の飲食店にとって大きな強みです。
しかし、ホームページに店名と営業時間、簡単なメニューしか掲載されていなければ、その魅力は十分に伝わらないかもしれません。
例えば、地元では有名な郷土料理を提供しているお店があったとします。
地域の人たちは、その料理の名前を聞けば、どのような料理なのか分かるでしょう。
しかし、初めて訪れる観光客は、その料理を知らないかもしれません。
- どのような食材を使っているのか
- どんな味わいなのか
- なぜ、その地域で親しまれてきたのか
こうした説明があれば、料理の魅力を理解しやすくなります。
AIが飲食店の特徴を把握するうえでも、具体的な説明は重要な材料になります。
老舗だからこそ、当たり前だと思っている魅力を、初めてのお客様にも分かる言葉で伝える必要があるのです。
AIに選んでもらう前に、お客様に選んでもらえる情報を
AI検索への対応というと、特別な技術が必要だと思われるかもしれません。
しかし、まず取り組みたいのは、基本的な情報の整備です。
① その地域で何を食べられるのか
名物料理や地元食材を使った料理について、写真だけでなく、料理の内容も説明します。
観光客がその料理を知らなくても、魅力が伝わることが大切です。
② どのような利用シーンに対応しているのか
家族旅行、夫婦旅行、一人旅、団体旅行など、観光客の利用目的はさまざまです。
どのようなお客様が利用しやすいお店なのか、具体的に紹介します。
③ 営業時間や定休日は正確か
観光地では、季節によって営業時間が変わるお店もあります。
現在の営業情報が正しく掲載されているか、定期的に確認する必要があります。
④ 価格や予約方法が分かるか
旅行中の食事では、予算や時間も重要です。
料理の価格や予約の必要性が分かれば、観光客も予定を立てやすくなります。
⑤ 駐車場やアクセス情報は分かりやすいか
車で訪れる観光客にとって、駐車場の有無や場所は大切な情報です。
最寄り駅や観光施設からのアクセスも、分かりやすく掲載したいところです。
AI検索は、観光地の小さなお店にも機会を広げるかもしれない
私は、AIによる飲食店検索には、観光地の小さなお店にとっても可能性があると思っています。
これまで、旅行者が飲食店を探すときには、有名店や口コミ件数の多いお店が目に入りやすい面がありました。
しかし、AIに具体的な条件を伝えて探す場合には、必ずしも知名度だけが判断材料になるとは限りません。
例えば、「地元食材を使った家庭料理を、静かな雰囲気で楽しめるお店」といった条件で探すこともできます。
そのような特徴を持つ小さなお店でも、情報が適切に公開されていれば、候補として見つけてもらえる可能性があります。
もちろん、情報を掲載すれば必ずAIに紹介されるというわけではありません。
それでも、これまで知名度だけでは伝わりにくかったお店の魅力を、具体的な条件によって知ってもらえる可能性はあります。
自分のお店がどのようなお客様に、どのような価値を提供できるのかを明確にすることが大切です。
原島純一の視点|観光地の老舗こそ、情報発信を見直したい
私は、観光地の老舗飲食店には、まだ十分に伝えられていない魅力がたくさんあると思っています。
長年受け継がれてきた料理。地域の生産者とのつながり。地元のお客様に親しまれてきた歴史。
こうしたものは、簡単に真似できるものではありません。
しかし、経営者やスタッフにとって当たり前のことほど、ホームページには掲載されていないことがあります。
「うちの名物料理は、みんな知っている」
「昔から営業しているから、説明しなくても分かる」
地元のお客様には、それで通用するかもしれません。
しかし、初めて訪れる観光客には、その魅力が伝わらないこともあります。
AIが飲食店を探して紹介する時代になれば、インターネット上で自店の特徴をどう伝えるかは、さらに重要になっていくでしょう。
ただし、私はAIに紹介されること自体を目的にする必要はないと思っています。
大切なのは、お客様が知りたい情報を、正確に、分かりやすく伝えることです。
その結果として、Google検索やGoogleマップ、そしてAIを通じて、お店を知ってもらう機会が広がる可能性があります。
観光地の繁盛店づくりでは、料理や接客の品質を高めることと同じように、その魅力を来店前のお客様に伝えることも大切です。
AIという新しい技術が登場した今だからこそ、老舗飲食店も、自分たちの強みを改めて整理してみる必要があるのではないでしょうか。
参考資料
株式会社mov「飲食店探しに関する調査」(2026年9月18日発表)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001408.000024246.html
