はしご酒イベントは、開催して終わりではもったいない――未使用チケットを次の来店につなげる工夫

商店街や飲食店街で開催される「はしご酒」や「街バル」。参加者がチケットを購入し、複数の飲食店を巡りながら、お酒や料理を楽しむイベントです。

こうした取り組みは決して新しいものではありません。全国各地で以前から行われてきた、飲食店の集客方法の一つです。

しかし、今回目にした街バルのニュースには、改めて考えさせられる工夫がありました。

イベント期間中に使い切れなかったチケットを、終了後にも利用できるようにしていること。

一見すると小さな工夫ですが、イベントを単発の集客で終わらせないという点で、飲食店経営にも参考になる取り組みだと思います。

目次

42店舗が参加する「いきつけ探し」イベント

東京都内のある飲食店街で、42店舗が参加する街バルイベントが開催されました。

2026年9月25日から10月9日までの期間、参加者は3枚4,000円のチケットを購入し、対象店舗で「ドリンク1杯とおすすめ料理1品」のセットを楽しむことができます。

この仕組みの良いところは、普段入ったことのないお店にも、比較的気軽に足を運べることです。

初めて訪れる飲食店には、意外と入りにくさがあります。

  • どんな料理があるのか
  • 価格はいくらぐらいなのか
  • 店内の雰囲気はどうなのか

特に、昔から営業している個人店や老舗飲食店では、常連客が多いように見えて、初めてのお客様には入りづらく感じられることもあります。

しかし、「ドリンク1杯とおすすめ料理1品」という内容が決まっていれば、利用する側も安心です。

お店にとっても、自慢の料理を初めてのお客様に知ってもらう機会になります。

街バルは、単に飲食店を巡るイベントではなく、初めてのお客様がお店に入るきっかけをつくる取り組みなのです。

注目したいのは、未使用チケットの使い方

今回、私が特に面白いと感じたのは、イベント終了後の仕組みです。

このイベントでは、期間中に使い切れなかったチケットを、10月10日から16日までの間、一部の参加店舗で1枚500円分として利用できるようにしていました。

つまり、イベントが終わったらチケットがすべて無効になるわけではありません。

これは、参加者にとってありがたい仕組みです。

仕事の都合などで、予定していたお店を回れなかった人もいるでしょう。また、イベント中に気に入ったお店があっても、時間の関係で再び訪れることができなかった人もいるかもしれません。

そうした人たちに、もう一度お店を利用する機会を提供しているのです。

イベント終了後にも、もう一度来店する理由を残している。

もちろん、未使用チケットを持っている人が必ず再来店するとは限りません。しかし、この仕組みには販促上の意味があると思います。

イベント当日の売上だけを考えていないか

飲食店の販促イベントでは、どうしても開催期間中の売上や来場者数に注目しがちです。

  • 何人のお客様が来たのか
  • 何枚のチケットが売れたのか
  • どれだけの売上になったのか

もちろん、これらは大切な数字です。

しかし、飲食店にとって本当に重要なのは、イベントが終わった後ではないでしょうか。

例えば、イベント期間中に初めて来店したお客様が、その後も通常営業で利用してくれるようになったとします。

そのお客様が友人や家族を連れて再来店してくれれば、イベントによる集客効果は一度きりでは終わりません。

反対に、イベント中だけお客様が増えても、その後の来店につながらなければ、販促効果は限定的です。

イベントで何人集めたかだけでなく、そのうち何人が次の来店につながったのか。

ここまで考えることが大切だと思います。

未使用チケットは、次の来店を促すきっかけになる

今回のような未使用チケットのアフター利用は、比較的取り入れやすい工夫です。

例えば、3枚つづりのチケットを購入したものの、2店舗しか利用できなかったお客様がいたとします。

残った1枚が無効になるのであれば、そこでイベントは終了です。

しかし、残ったチケットを翌週も利用できるのであれば、もう一度街を訪れる理由が生まれます。

ここで重要なのは、未使用チケットを単なる割引券として考えないことです。

もう一度お店に来てもらうための、次の来店動機として活用する。

そのように考えると、チケットの役割も変わってきます。

ただし、アフター利用時の金額や利用条件によっては、店舗側の負担が大きくなることもあります。参加店舗が無理なく協力できる仕組みにすることも重要です。

本当に大切なのは、初回来店時の接客

私は、このようなイベントの成果を左右するのは、仕組みだけではないと思っています。

初めて来店したお客様に、スタッフがどのように接するか。ここが非常に重要です。

例えば、イベント用の料理を提供して終わりにするのか。それとも、料理の特徴や普段のおすすめメニューを紹介するのか。

「今日はイベントでのご利用ありがとうございます。普段はこんな料理も人気なんですよ」

そんな一言があるだけでも、お客様のお店に対する印象は変わるかもしれません。

また、イベント用の料理を気に入ってくださったお客様に、通常営業での利用シーンを紹介することもできます。

  • ランチも営業していること
  • 家族で利用できること
  • 少人数の宴会や会食にも対応していること

初めてのお客様は、こうした情報を知らないことが少なくありません。

イベントは来店のきっかけをつくるもの。そのお客様を次の来店につなげるのは、現場の接客なのです。

観光地では「常連化」だけが目的ではない

今回の街バルは、都市部の飲食店街で開催された取り組みです。

都市部では、近隣で働く人や地域住民が、イベントをきっかけに新しい行きつけのお店を見つけることも期待できます。

一方、観光地では少し考え方が異なります。

遠方から訪れた観光客に、毎週、毎月のように再来店してもらうことは簡単ではありません。

だからこそ、観光地の飲食店では、イベントの目的を分けて考える必要があります。

  • 地域住民や近隣で働く人:日常的な利用につなげる
  • 比較的近い地域から訪れる観光客:次の旅行で再び立ち寄ってもらう
  • 遠方から訪れる観光客:お店の魅力を知ってもらい、口コミや紹介につなげる

同じイベントでも、お客様によって期待できる成果は違います。

観光客を無理に常連客にしようとするのではなく、それぞれのお客様に合った次の接点を考えることが大切なのです。

昔からある販促方法でも、工夫次第で価値は変わる

今回の事例を見て、改めて感じたことがあります。

それは、必ずしも新しい販促方法を考える必要はないということです。

はしご酒や街バルは、以前からある集客方法です。

しかし、未使用チケットのアフター利用を設けたり、初回来店時の接客を工夫したりすることで、その役割を広げることができます。

例えば、次のような取り組みです。

  • イベント終了後に再来店してもらうための仕組みを用意する
  • イベントで提供する料理を、通常営業の看板商品につなげる
  • 初めてのお客様に、お店の利用シーンを知ってもらう

こうした小さな工夫の積み重ねが、イベントの成果を変えていくのではないでしょうか。

すでに行っている取り組みを、もっと効果的にできないかと見直すことも重要です。

原島純一の視点|イベントの成功は、終わった後に分かる

私は飲食店の集客を考えるとき、イベント当日の売上だけで成果を判断するべきではないと思っています。

もちろん、多くのお客様に来店していただき、売上が増えることは喜ばしいことです。

しかし、そのために特別な料理を用意し、人員を増やし、通常よりも大きな負担が発生しているのであれば、利益がどれだけ残ったのかも確認する必要があります。

そして、もう一つ考えたいのが、イベント終了後の来店です。

  • 初めて来店したお客様が、お店を気に入ってくれたのか
  • また利用したいと思ってくれたのか
  • 次の来店につながるきっかけをつくれたのか

今回の未使用チケットの仕組みは、そうしたことを考えるきっかけになりました。

ただし、チケットを再び利用してもらうこと自体が最終目的ではありません。

その来店をきっかけに、お店の料理や接客、雰囲気を気に入ってもらうことが大切です。

販促イベントは、お客様を集めるためだけのものではなく、お店を好きになってもらうための機会でもあります。

昔からある販促方法であっても、目的を明確にし、少し仕組みを変えるだけで、新しい価値を生み出せる可能性があります。

今回の事例は、そんなことを改めて考えさせてくれる取り組みでした。


参考資料
「第4回 浜町いきつけ探し」主催者発表(2026年9月18日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000169840.html

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