春スキー、クルーズ船、団体旅行。観光客の動きを先に知ることが、繁盛店づくりの第一歩
観光地の飲食店では、お客様の数が季節や曜日によって大きく変わります。
「今日は観光客が多かった」「今週は外国人のお客様が増えている」「近くでイベントがあったらしく、急に忙しくなった」。そんな話を聞くことがあります。
しかし、観光客は突然その地域にやって来るわけではありません。
旅行会社がツアーを企画し、クルーズ船の寄港が決まり、地域のイベントや大会の日程が発表される。観光客が訪れる何か月も前から、その動きを知る手がかりは存在しています。
大切なのは、観光客が来てから対応するのではなく、これからどのようなお客様が訪れるのかを知っておくことです。
今回は、日本旅行業協会(JATA)が発表した春スキーの早期予約キャンペーンをきっかけに、観光地飲食店が考えておきたいことを紹介します。
3月の春スキー旅行が、10月には販売されている
日本旅行業協会(JATA)は、2027年3月出発の春スキー・スノーボード旅行を対象に、早期予約キャンペーンを展開しています。
旅行会社が参加し、秋の段階から翌年3月の旅行商品の販売を促進する取り組みです。
旅行会社が何か月も先の商品を企画・販売すること自体は、特別なことではありません。
しかし、観光地の飲食店にとって注目したいのは、別のところにあります。
翌年3月に、どの地域へ、どのような目的でお客様が訪れようとしているのか。その情報が、すでに公開されているということです。
春スキーを楽しみたい人。春休みを利用する学生や家族。混雑する時期を避けて旅行したい人。
実際にどのような客層が訪れるかは商品によって異なりますが、旅行商品の内容を見ることで、想定されるお客様の姿を考えることができます。
そして、スキー場周辺の飲食店にとっては、そうしたお客様を迎える準備を考えるきっかけになります。
観光客の動きを知る情報は、身近なところにある
今回の春スキーだけではありません。観光客の動きを知る手がかりは、さまざまなところにあります。
例えば、クルーズ船の寄港予定です。港によっては、数か月先までの入港予定が公表されています。
船の規模、寄港日、入港・出港予定時刻などを知ることができる場合もあります。
寄港する船によって、乗客の国籍構成や旅行スタイルが異なることもあります。
また、フェリーや観光列車の運航予定も、地域を訪れる人の動きを考える材料になります。
旅行会社が販売しているツアーも同じです。
どの地域を訪れるのか。どのような観光施設を巡るのか。何を楽しむことを目的とした旅行なのか。
こうした情報から、地域に訪れるお客様の特徴を考えることができます。
さらに、スポーツ大会、音楽イベント、祭り、展示会などの開催予定も重要です。
観光客が増えるという結果だけを見るのではなく、そのきっかけとなる情報を知っておくこと。
それが、観光地飲食店の経営を考えるうえで大切なのです。
同じ観光客でも、求める食事は違う
観光客と一口に言っても、すべてのお客様が同じものを求めているわけではありません。
例えば、春スキーを楽しむ旅行者。一日中スキーを楽しんだ後に、温かい食事をゆっくり楽しみたい人もいるでしょう。
一方、クルーズ船で寄港する旅行者は、限られた滞在時間の中で観光や食事を楽しみます。
地域のイベントを目的に訪れる人なら、イベントの開始前や終了後に食事をするかもしれません。
また、家族連れとシニア層、国内旅行者とインバウンド旅行者では、食事に求めるものが違う場合もあります。
もちろん、旅行の目的や年齢、国籍だけで、お客様の好みを決めつけることはできません。
どのような目的で、いつ、どのくらいの時間その地域に滞在するのかを知ることは、飲食店にとって大切な情報です。
例えば、同じ観光地でも、昼食を求めるお客様が多い日と、夕食を楽しむお客様が多い日では、店の状況は変わります。
旅行者の動きを知ることは、単に客数を予想することではありません。
お客様がどのような時間を過ごし、その中で食事に何を求めるのかを考えることでもあるのです。
情報を知るだけでは、売上にはつながらない
ここで大切なのは、情報を集めること自体が目的ではないということです。
例えば、近くの港に大型クルーズ船が寄港すると分かったとします。
「その日は観光客が増えそうだ」。そう考えるだけでは、十分ではありません。
そのお客様は、どのような目的で地域を訪れるのでしょうか。
自分の店の近くを通る可能性はあるのでしょうか。食事をする時間はあるのでしょうか。
そして、自分の店の商品やサービスは、そのお客様が求めるものと合っているのでしょうか。
こうしたことを考える必要があります。
もちろん、すべての観光客を自分の店に呼び込めるわけではありません。
地域に訪れるお客様の中で、自分の店を利用してくれる可能性があるのは、どのようなお客様なのかを考えること。
そのうえで、今のメニューや営業時間、サービス、情報発信が、そのお客様に合っているのかを見直してみる。
観光客の動きを知ることは、こうした経営判断の出発点になります。
観光地の飲食店は、これから来るお客様を見ているか
飲食店では、日々の売上や客数を確認することが大切です。
前年と比べて売上はどうだったのか。客数は増えたのか、減ったのか。どの商品が売れたのか。
こうした数字を確認することで、店の現状を知ることができます。
しかし、観光地の飲食店では、過去の数字を見るだけでは分からないこともあります。
来月、地域でどのようなイベントがあるのか。来春、どのような旅行商品が販売されているのか。
クルーズ船やフェリーの運航予定に変化はないか。新しい観光施設が開業する予定はないか。
こうした情報によって、地域を訪れるお客様の動きが変わる可能性があります。
過去の売上を分析することと、これから地域に訪れるお客様を知ること。
観光地の飲食店では、その両方が重要だと思います。
特に、季節による繁閑差が大きい地域ほど、先の動きを知っておくことには意味があります。
観光客が増える時期に、どのようなお客様が訪れるのか。反対に、観光客が少なくなる時期に、どのような旅行需要が生まれているのか。
そうした情報をもとに、自分の店で何ができるのかを考える。
そこに、観光地飲食店ならではの経営の面白さがあります。
観光客が来てから考えるのではなく、来る前から考える
今回のJATAの春スキー早期予約キャンペーンは、旅行業界のニュースです。
しかし、観光地の飲食店にとっても、考えるきっかけになる情報だと思います。
旅行会社がどのような商品を販売しているのか。クルーズ船がいつ寄港するのか。地域でどのようなイベントが開催されるのか。
こうした情報を知ることで、これから地域に訪れるお客様の姿が少しずつ見えてきます。
そして、そのお客様が何を求めているのかを考え、自分の店がどのように迎えられるのかを準備していく。
もちろん、情報を知ったからといって、必ず売上が増えるわけではありません。
しかし、何も知らずにお客様を待つのと、これから訪れるお客様を想像しながら準備するのとでは、経営の考え方が変わってきます。
観光客が来てから、何をすればよいか考える。観光客が来る前に、どのようなお客様を迎えるのか考える。
この違いは、決して小さくないと思います。
観光地の繁盛店づくりは、お客様が店の前を通ったときに始まるのではありません。
そのお客様が地域を訪れることを決める、もっと前から始まっているのです。
参考資料・元記事
日本旅行業協会(JATA)「春スキー・スノボは先取りがお得!3月出発キャンペーン」
https://heijitsu.jp/ski/
