飲食店のホームページを見ると、こんな表現をよく見かけます。
「旬の食材を使ったこだわりの料理」
「心を込めたおもてなし」
「地元ならではの味をお楽しみください」
もちろん、間違っているわけではありません。
ただ、これからの検索環境を考えると、それだけでは少し足りなくなってきました。
なぜなら、お店の情報を探しているのが、人間だけではなくなってきたからです。
2026年9月、JNTO(日本政府観光局)が「生成AIに選ばれる観光情報とは?」という興味深い記事を公開しました。
そこで示されている考え方は、観光地の飲食店にとっても、かなり重要だと思います。
「検索する」から「AIに聞く」へ
旅行先を決めるとき、こんなふうに調べる人が増えています。
- 高山で飛騨牛が食べられる店は?
- 金沢駅から歩いて行ける和食店は?
- 小田原城の近くで地元料理が食べられる店は?
- 子ども連れでも入りやすい店は?
これまでは、Googleなどで検索し、いくつものサイトを見比べるのが一般的でした。
ところが現在は、こうした質問を生成AIに、そのまま聞く人が増えています。
さらにGoogle検索でも、検索結果の上部にAIによる要約や回答が表示されるようになりました。
つまり、これからは
「検索結果で上位になるか」だけではなく、
「AIがその店を候補として理解できるか」
という視点が必要になってきます。
そして起きる「ゼロクリック」
ここで、もう一つ見逃せないのが、ゼロクリックという問題です。
ゼロクリックとは、検索した人が検索結果やAIの回答だけで必要な情報を得てしまい、元のホームページをクリックしない状態です。
たとえば、
「○○駅近くでランチ営業している海鮮料理店は?」
と検索したとします。
AIが、
「A店は徒歩3分。海鮮丼1,800円。11時30分から営業。予約不要」
と答えてしまえば、利用者は公式ホームページを開かず、そのままGoogleマップを見たり、予約画面へ進んだりするかもしれません。
以前なら、
検索
↓
ホームページを見る
↓
店を知る
↓
予約する
という流れでした。
これからは、
AIに聞く
↓
AIの回答で店を知る
↓
そのまま地図や予約へ進む
という流れが増えていく可能性があります。
これは飲食店にとって、かなり大きな変化です。
ホームページを見てもらうこと自体が、集客のゴールではなくなるからです。
クリックされなくても、情報は使われる
ただし、ここで一つ勘違いしてはいけないと思います。
「ホームページがクリックされないなら、作る意味がない」
という話ではありません。
むしろ逆です。
AIが回答を作るためには、どこかに正確な情報が存在していなければなりません。
その情報源として重要になるのが、公式サイトに掲載された一次情報です。
- 営業時間
- 価格
- 料理名
- 所在地
- アクセス
- 予約方法
- 駐車場
- 個室
- 子ども対応
- アレルギー対応
- 外国語対応
こうした情報が公式サイトにきちんと整理されていれば、たとえ利用者がホームページを直接開かなかったとしても、その情報がAIの回答の中で使われる可能性があります。
つまり、これからのホームページは、
「クリックしてもらうためのページ」
だけではなく、
「AIに正確な情報を渡すための情報源」
としての役割も持つようになります。
ここは、とても大きな変化だと思います。
AIは、店の雰囲気だけでは選べない
たとえば、ホームページに、
「地元食材を使った料理を提供しています」
と書いてあったとします。
人が読めば、なんとなく意味は伝わります。
でも、
- 何の食材なのか
- どんな料理なのか
- いくらなのか
- ランチなのかディナーなのか
- 予約が必要なのか
そこまでは分かりません。
これを、
「飛騨牛を使った朴葉味噌御膳を3,800円で提供しています。ランチタイムも注文可能です」
と書けば、一気に情報として使いやすくなります。
生成AIにとっても同じです。
抽象的な表現よりも、
- 具体的な料理名
- 料金
- 距離
- 時間
- 利用条件
こうした情報のほうが、その店を理解しやすくなります。
飲食店サイトに必要なのは「魅力」だけではない
飲食店のホームページ制作では、どうしても、
- 写真をきれいにする
- デザインを格好よくする
- 料理へのこだわりを書く
という方向に意識が向きがちです。
もちろん、それも必要です。
ただ、旅行者が本当に知りたい情報は、もっと現実的です。
- 何が食べられるのか
- 代表料理はいくらなのか
- 営業時間は何時から何時までなのか
- 定休日はいつなのか
- 予約できるのか
- 当日でも入れるのか
- 駅や観光地から何分なのか
- 駐車場はあるのか
- 子ども連れでも利用できるのか
- 個室はあるのか
- クレジットカードは使えるのか
- 外国語メニューはあるのか
こうした情報です。
しかも、この情報は旅行者だけでなく、生成AIにとっても重要です。
つまりこれからの飲食店サイトでは、
「お店の魅力を伝えるページ」
と
「お店を正しく理解してもらうための情報ページ」
この両方が必要になります。
「何屋なのか」が分かることが、ますます重要になる
私は以前から、飲食店のホームページやGoogleマップを見るとき、
「結局、この店では何が食べられるのか」
が、すぐ分かることが大切だと考えています。
「和食店です」だけでは広すぎます。
寿司なのか。
天ぷらなのか。
うなぎなのか。
会席料理なのか。
海鮮丼なのか。
旅行者は、その違いから店を選びます。
生成AIも同じです。
これからは、
「浅草で和食の店を教えて」
だけではなく、
「浅草で天ぷらが食べられて、4,000円以内で、昼営業している店」
といった条件付きの質問が、ますます増えていくでしょう。
そのとき、公式サイトにその情報が書かれていなければ、AIはその店を候補として判断しにくくなります。
逆に言えば、有名店でなくても、
「何が食べられる店なのか」が明確で、判断材料になる情報が整理されている店にはチャンスがあります。
FAQは、これからかなり重要になる
これから特に有効だと思うのが、FAQです。
たとえば、
- 予約なしでも利用できますか?
- 子ども用メニューはありますか?
- ベジタリアン対応はできますか?
- 駐車場はありますか?
- ランチでも○○は注文できますか?
- 個室は何人から使えますか?
こうした質問に、一問一答で答えておく。
これは、お客様に親切というだけではありません。
AIが、
- 子ども連れで行ける店
- 駐車場がある店
- 予約不要の店
といった条件を判断する材料にもなります。
これまでFAQは「問い合わせを減らすためのページ」として考えられることが多かったと思います。
しかしこれからは、AIに店の条件を正確に伝えるページという役割も持つようになるかもしれません。
Googleマップだけに頼るのも少し怖い
もちろん、Googleマップの情報整備も重要です。
むしろ飲食店にとっては、必須でしょう。
ただ私は、
Googleマップだけに店の情報を預けてしまうのは、少しもったいない
と思います。
公式ホームページには、
- なぜこの料理を出しているのか
- どんな食材を使っているのか
- 創業何年なのか
- どんな場面で利用してほしいのか
など、自分たちだから発信できる一次情報があります。
口コミサイトやSNSではなく、
店自身が語っている情報。
生成AI時代には、この一次情報の価値が、むしろ高くなっていくのではないでしょうか。
ホームページは「見てもらう場所」から「情報を供給する場所」へ
今回、JNTOの情報を見ていて、私が特に重要だと感じたのはここです。
これまでホームページは、
「お客様にアクセスしてもらう場所」
として考えられてきました。
ところがこれからは、必ずしもお客様がホームページを開いてくれるとは限りません。
AIがホームページの情報を参照し、
「この条件なら、この店があります」
と回答する。
そして、お客様はその回答を見て、そのままGoogleマップを開いたり、予約したりする。
ゼロクリックが増えるということは、ホームページが不要になるのではありません。
むしろ、
ホームページにある情報だけが、外へ持ち出されて使われる時代になる。
そう考えたほうが分かりやすいと思います。
だからこそ、
- 何を書くのか
- どう整理するのか
- どこまで具体的に書くのか
という「情報設計」が重要になります。
観光地の小さな飲食店ほど、今から情報を整えておきたい
生成AI対策というと、
「難しそうだ」
「また新しいSEO対策なのか」
と思うかもしれません。
でも、基本はそれほど難しい話ではありません。
- 正確な情報を書く
- 具体的に書く
- 分かりやすく整理する
- 情報を更新する
- 公式サイトに一次情報を蓄積する
むしろ、
「お客様が店を選ぶために必要な情報を、ちゃんと書いておく」
という、とても基本的な話です。
料理名。
価格。
営業時間。
アクセス。
予約方法。
利用シーン。
店の特徴。
こうした情報を、一つずつ整理していく。
それだけでも、これからのAI検索時代への準備になります。
観光地には、たくさんの良い飲食店があります。
料理も良い。
接客も良い。
地域ならではの歴史もある。
それなのに、ネット上では、
「何が食べられる店なのか」
さえ十分に伝わっていない店が、まだ少なくありません。
これからは、検索順位だけを追う時代ではありません。
たとえクリックされなくても、
AIの回答の中で、自分の店が正しく紹介されるか。
そこまで考えて、公式サイトの情報を整える。
生成AI時代だからこそ、派手なAI対策を考える前に、
まず、自分たちの店のことを、ネット上できちんと説明する。
そこから始めるべきなのだと思います。
参考:
日本政府観光局(JNTO)
「生成AIに選ばれる観光情報とは? 旅行者の検索行動の変化とウェブサイト改善のポイント」
