空いている大広間は、本当に「使えない席」なのか。30人を60分で受けるという商品

日帰りバスツアーの検索が伸びています。

旅行比較サイト「トラベルコ」が2026年のシルバーウィークに向けた検索データをまとめたところ、日帰りバスツアーの検索数は東京発で前年比220%、大阪発で278%まで増えていました。

さらに興味深いのが、検索されている言葉です。

「シャインマスカット」
「海鮮」
「食べ放題」
「信玄餅」
「温泉」

上位には、食に関係する言葉が多く並んでいます。

このニュースを見て、私は「日帰りバスツアーが人気なんだな」とだけは思いませんでした。

観光地の飲食店にとって、まだ取り切れていない商売があるのではないか。

そんなことを考えました。

目次

日帰りツアーを見ると、食が旅程の真ん中にいる

人気のツアー内容を見ると、そのことがよく分かります。

果物狩りとランチビュッフェ。

シャインマスカット食べ放題と信玄餅の詰め放題。

海鮮と肉料理。

地域の名物を食べながら観光地を回るコース。

観光というと、景勝地や寺社、温泉などに目が行きます。

でも実際には、

「何を食べるか」そのものが、旅を選ぶ理由になっています。

これは飲食店側から見ると、とても大きな話です。

団体客は「大変だから受けたくない」になりやすい

観光地の飲食店で団体の話をすると、よく聞く言葉があります。

「団体は大変だからね」

確かにそうです。

30人が一度に来れば、厨房もホールも一気に忙しくなります。

一般客と重なれば、さらに大変です。

料理を一斉に出さなければいけない。

トイレも混む。

大型バスが店の前まで入れないケースもある。

しかも時間が決まっています。

だから、

「個人客を普通に取っていたほうが楽」

と考える店があるのもよく分かります。

ただ、ここで少し考え方を変えてみてもいいと思います。

30人を受けるのではなく、「30人を60分で受ける商品」を作る。

こう考えると、団体客の見え方が変わります。

団体客を受けることと、団体商品を持つことは違う

例えば、2階に40席の大広間がある店を考えてみます。

昔は宴会でよく使っていた。

でも今は、大人数の宴会が減って、ほとんど稼働していない。

個人客を2階へ案内すると、配膳も大変。

階段の上り下りも増える。

少人数で使えば効率も悪い。

いつの間にか、

「あまり使いたくない席」

になっていく。

ところが旅行会社から、

「12時に30名。食事時間60分。予算2,500円」

という問い合わせが入ったらどうでしょう。

ここで確認するべきなのは、

「30名入れます」

だけではありません。

  • 何分前までに料理を並べられるか
  • 着席してから何分で食事を始められるか
  • 料理は何品にするか
  • 配膳回数を何回にするか
  • 飲み物をどうするか
  • 会計は一括にできるか
  • トイレは足りるか
  • 大型バスから店まで何分かかるか
  • 添乗員やドライバーの食事をどうするか
  • 本当に60分後に出発できるか

ここまで決めて初めて、

「団体客が入れる店」から「旅行商品に組み込める店」になります。

旅行会社が欲しいのは「おいしい店」だけではない

飲食店側は当然、

「料理がおいしい」

「地元の食材を使っている」

「創業○年の老舗である」

ということを強みとして伝えます。

もちろん、どれも大切です。

ただ、旅行会社側には、別の事情があります。

時間通りに次の場所へ移動しなければならない。

30人を一度に受けられなければならない。

食事時間が延びると、その後の観光が全部ずれる。

雨の日でも対応できる必要がある。

バスの乗降場所も必要になる。

つまり、

飲食店として魅力的であることと、旅行商品の中で使いやすいことは別の話です。

ここを理解すると、団体商品の作り方も変わります。

「空いている大広間」は、売れていない商品なのかもしれない

観光地の老舗旅館や日本料理店などを見ていると、昔は宴会で使っていた大広間が、ほとんど使われなくなっていることがあります。

会社宴会が減った。

地域の集まりが減った。

大人数の法事も減った。

すると、

「昔はここもよく使ったんだけどね」

という空間になっていきます。

でも、部屋そのものの価値がなくなったわけではありません。

今の使い方と、需要が合わなくなっただけかもしれない。

30人を一度に座らせられる。

一般客と分けられる。

同じ料理を一斉に出せる。

多少にぎやかでも問題ない。

こうした条件は、個人客には使いにくくても、団体旅行には向いている場合があります。

「使いにくい席」が、「団体商品を作る設備」に変わる可能性があります。

30人×2,500円を、どう見るか

例えば、1人2,500円で30人。

売上は75,000円です。

数字だけ見ると、

「大した売上ではない」

と思うかもしれません。

でも、それが通常なら空いている大広間で行われるとしたらどうでしょう。

予約なので人数が事前に分かる。

料理内容を決められる。

仕込み数量を読める。

注文を一人ずつ取らなくていい。

会計も一括。

そして60分で終わる。

そうなると、同じ75,000円でも意味が変わります。

空いていた時間と空いていた席を、売上を生む商品に変えた75,000円だからです。

もちろん、団体だから必ず儲かるわけではありません。

原価もあります。

人件費もあります。

旅行会社との取引条件もあります。

だからこそ、

「団体なら何でも受ける」

ではなく、

自分の店にとって利益が残る団体商品を設計することが必要です。

観光地の飲食店は、店の中だけを見ない

観光地の飲食店ほど、自分の店だけを見ていてはいけないと思っています。

旅行者の一日を考えてみます。

朝、都市部を出発する。
果物狩りをする。
昼食を食べる。
観光地を歩く。
買い物をする。
温泉に入る。
夕方、帰る。

その流れの中に飲食店があります。

だから、

「うちのランチは何を売ろう」

だけではなく、

「この日の旅程の中で、うちはどんな役割を持てるか」

まで考える。

ここが観光地の飲食店には重要だと思います。

「昼食場所」になるのか、「旅の目的」になるのか

旅行会社にとって、食事場所は必ず必要です。

だから、

「30人入れる店」

というだけでも一定の価値はあります。

でも、さらに一歩進むと、

「この料理を食べること自体がツアーの魅力になる」

というところまで持っていけます。

地元でしか食べられない料理。

季節限定の食材。

地域の文化につながる御膳。

目の前で仕上げる料理。

食後に地域の話を聞ける。

土産を買える。

こうした要素が加われば、ただの昼食休憩ではなくなります。

「この食事が入っているから、このツアーを選ぶ」

という商品になる可能性があります。

飲食店側から旅行会社へ提案してもいい

今回の検索キーワードを見ると、「食」がかなり強い旅行動機になっています。

それなら、旅行会社から問い合わせを待つだけでなく、飲食店側から商品を整理してもいいと思います。

例えば、

  • 地元の海鮮を使った30名対応の昼食
  • 60分で食事完了できる郷土料理御膳
  • 大型バス乗降可能
  • 40名まで同時提供可能
  • 食後に地域土産の購入可能
  • 雨天でも対応可能

こういう情報です。

これは一般客向けのメニューページとは、まったく違います。

でも旅行会社から見ると、とても使いやすい。

そのまま行程を組む材料になるからです。

空席を見て、「集客不足」とだけ考えない

店に空席があると、

「もっとお客様を集めなければ」

と考えます。

それは当然です。

ただ、もう一つの見方があります。

今の商品では、その席を売れていない。

ということです。

個人客には使いづらい大広間でも、30人の団体なら使える。

夜は稼働しなくても、昼なら使える。

通常メニューでは効率が悪くても、専用御膳なら利益が残る。

そう考えると、

「使えない席」

だったはずの場所が、

新しい商品を作るための設備

に変わります。

日帰りバスツアーの検索が伸びているというニュースを見ながら、私はそんなことを考えました。

観光地の飲食店に必要なのは、単純に団体客を増やすことではありません。

自分の店が持っている、

席。
厨房。
料理。
営業時間。
駐車場。
地域の食材。
立地。

それらを組み合わせて、

「旅程の中で売れる商品」に変えること。

もしかすると、今ずっと空いている大広間は、
使えない席なのではなく、
まだ商品になっていない席なのかもしれません。

この記事のきっかけになった情報

シルバーウィーク「日帰りバスツアー人気ランキング」
旅行比較サイト「トラベルコ」

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