飲食店のメニューをつくるとき、
「ペライチのほうが見やすいのか?」
「メニューブックのほうが料理の魅力を伝えられるのか?」
と悩むことがあります。
一覧性が高く、全体を見渡しやすいペライチ。
写真や説明を使いながら、料理の魅力をじっくり伝えられるメニューブック。
では、どちらが良いのでしょうか。
実は、大切なのはメニューの形を先に決めることではありません。
お客様に、どのように料理を選び、どんな時間を過ごしてほしいのか。
今回は「メニューの形」から、注文の仕方と食事体験について研究してみましょう。
ペライチとメニューブック、結局どっちがいいの?
若手コンサルタント先生。
メニューって、結局ペライチとメニューブック、どっちがいいんですか?



私はメニューブックのほうがいいと思いますよ。
写真も大きく使えるし、料理の説明もしっかり入れられるじゃないですか。



私はペライチのほうが好きです。
全部すぐ見られるし、お客様も選びやすいですよ。



でも、料理が多かったらゴチャゴチャするでしょう?
せっかくの料理も、小さい写真しか載せられなくなりますよ。



でもメニューブックって、後ろのページまで見てもらえないこともありますよね?



ああ……。
どっちも正しい気がしてきました(笑)。



そうなんだよ。
二人とも、それぞれのメリットをちゃんと言っている。



だから私は、
「ペライチとメニューブック、どちらが正解ですか?」
と聞かれても、どちらとも言えないんだ。
まず、それぞれのメリットとデメリットを考える



じゃあ、まず何から考えればいいんですか?



最初に、それぞれ何が得意なのかを整理したほうがいいよね。
例えばペライチの一番の強みは、何だと思う?



全体を一度に見られることじゃないですか?



そう。
一覧性が高い。
「何があるのかな」
と全体を見ながら選べる。
しかもページを行ったり来たりしなくていい。



その代わり、載せられる情報量には限界がありますね。



そうだね。
写真を大きくしたい。
料理説明も入れたい。
商品数も増やしたい。



全部やったら、今度は見づらくなる。
これがペライチの弱点だよね。



メニューブックは、その逆ですか?



そう。
写真も使える。
説明もできる。
カテゴリーごとに整理できる。



その代わり、
「ページをめくらないと出会えない商品」
が生まれる。
どちらにも、メリットとデメリットがあるんだよ。
赤提灯の居酒屋なら、なぜペライチが使いやすいのか?



じゃあ、どういう店ならペライチが向いているんですか?



例えば、昔ながらの赤提灯の居酒屋を考えてみようか。
お客様は席に座って、
まず刺身を頼む。
焼き物を頼む。



お酒を飲みながら、
「次、何にしようかな」
ってメニューを見るでしょう?



確かに。
一回注文して終わりじゃないですね。



そう。
食事をしながら全体を眺めて、
「じゃあ次はこれ」
「もう一品これ」
と追加していく。



つまり、
お客様自身が、その日の食事の時間を組み立てている。



だから全体が見渡せるペライチが便利なんですね。



そういうこと。
一覧性が高いから、
お客様自身が料理を探しながら、次の注文を考えやすい。
ペライチの強みが、お客様の注文行動と合っているんだよ。
落ち着いた個室居酒屋なら、なぜブック型が合うのか?



じゃあ、メニューブックが向いているのはどんな店ですか?



例えば、少し単価の高い落ち着いた個室居酒屋。
こういう店では、
「今日はこの店でゆっくり食事をしよう」
と来店するお客様も多いよね。



最初にある程度まとめて注文されることも多いです。



そう。
だったら店側から、
「まず、この店ならこれを食べてほしい」
をしっかり見せる意味がある。
最初に看板料理。



次に、その店らしいおすすめ。
そこから刺身、焼き物、揚げ物……。
というように、店側が料理の選び方を
ある程度提案できる。



ペライチがお客様自身で
食事を組み立てるなら、
ブック型は店側が食事の楽しみ方を
提案する感じですね。



私は、そんな違いがあると思う。
だから、
「ブック型のほうが高級に見えるから」
だけで決める話じゃないんだよ。
観光地では「何を食べればいいか分からない」が加わる



でも先生。
ここまでは普通の飲食店でも同じですよね?
観光地だと何が違うんですか?



観光客の立場になって考えてみよう。
初めて来た土地。
初めて入った店。
知らない料理もある。
そんな状態でメニューを渡されたら、どう思う?



何を頼めばいいのか分からないですね。



そうなんだよ。
地元のお客様なら知っている料理でも、
観光客には分からないことがある。
しかも旅行中の食事って、
回数が限られているでしょう?



昼と夜くらいですもんね。



そう。
せっかくその土地へ来たのだから、
「この土地らしいものを食べたい」
「この店へ来たなら、これを食べたい」
と思っている。



だから観光地のメニューでは、
何を食べるべきかが、ちゃんと伝わること
がすごく大切になるんだよ。
ペライチでも「名物」を埋もれさせない



じゃあ観光地では、ブック型のほうがいいんですか?



いやいや。
そこですぐ二択に戻らない(笑)。



またやっちゃいました(笑)。



観光地の赤提灯だってあるでしょう?
旅行先で、
「地元のものをいろいろ食べたい」
というお客様なら、
ペライチで全体を見ながら選べるのは楽しいと思う。



刺身を頼んで、地元料理を頼んで、もう一品追加して。



そう。
ただし、その中に、
「この土地ならこれ」
「この店ならこれ」
が埋もれてしまったらもったいない。



ペライチだから全部同じ大きさ、全部同じ見せ方ではなく、
名物や看板料理には、きちんと強弱をつける。
そこは必要だよね。
ブック型なら「食事のストーリー」をつくれる



観光地のブック型なら、どう考えればいいですか?



例えば、
「せっかく旅行に来たから、今日は少しいいものを食べたい」
というお客様が来る店なら、
最初の見開きで看板料理をしっかり見せる。
その料理がなぜこの土地、この店でおすすめなのかを伝える。



その次に地域の料理。
さらに追加で楽しめる料理。
そんな順番も考えられるよね。



ページの順番にも意味があるんですね。



もちろん。
メニューブックって、
商品をカテゴリー別にファイルするものではないと思うんだ。
どの料理から見てもらうか。
何を一番食べてほしいか。
その次に何を選んでもらうか。
ページをめくる順番そのものを、食事の提案にできる。



なるほど。
そう考えると、メニューブックを作る意味が全然違いますね。
ペライチとブック型を組み合わせてもいい



先生。
だったら、どっちか一つに決めなくてもいいんじゃないですか?



もちろん。
私は、それも全然ありだと思う。



例えば?



ブック型のメニューを基本にして、
「本日のおすすめ」
だけペライチにする。
季節料理だけ別紙にする。
逆にペライチを基本にして、
看板料理だけ写真と説明をしっかり入れた別メニューをつくる。
いろいろ考えられるよね。



それぞれのメリットだけ使えばいい。



そう。
大切なのは、
「うちはペライチ」
「うちはブック型」
と形式を決めることじゃない。
それぞれの良さを、どう使うか。
なんだよ。
メニューの形より先に「どんな時間を過ごしてほしいか」を決める



先生。
結局、
「ペライチとメニューブック、どっちがいいですか?」
への答えは何なんですか?



どちらも正解ではないし、
どちらも間違いではない。
私はそう思う。



また答えになってない(笑)。



(笑)。
でも本当にそうなんだよ。
先に考えたいのは、
「この店で、お客様にどんな時間を過ごしてほしいのか」
なんだ。



赤提灯なら、全体を見ながら自分で料理を選んで、少しずつ追加して楽しむ。



落ち着いた個室店なら、看板料理を中心に店側から食事の楽しみ方を提案する。



そう。
そして観光地なら、
限られた旅の一食で、
「この土地へ来て、これを食べて良かった」
と思ってもらえること。



そこまで考えてから、
ペライチがいいのか。
ブック型がいいのか。
両方使うのか。
を決めればいい。
メニューの形は、最後に決まるものなんだよ。
原島純一の視点
「メニューは、ペライチとブック型のどちらが良いですか?」
飲食店の現場では、よく出てくる話です。
ペライチには、全体を一度に見渡せる良さがあります。
お客様自身が、
「次は何を食べよう」
「もう一品頼もう」
と考えながら、食事の時間を組み立てやすい。
赤提灯の居酒屋のように、少しずつ追加注文しながら楽しむ店では、とても相性がいいと思います。
一方、メニューブックには、写真や文章を使って料理の魅力をしっかり伝えられる良さがあります。
看板料理を最初に見せる。
その料理の価値を伝える。
その次に何を食べてもらいたいかを提案する。
落ち着いた個室店などでは、店側がお客様の食事体験を組み立てることができます。
だから私は、
「どちらが優れているか」
という話ではないと思っています。
大切なのは、それぞれのメリットとデメリットを理解すること。
そして、その前に、
お客様に、この店でどんな時間を過ごしてほしいのか。
を考えることです。
さらに観光地では、もう一つ重要なことがあります。
観光客の多くは、その店を初めて訪れます。
その土地の料理についても詳しいとは限りません。
しかも旅行中に食べられる食事の回数には限りがあります。
だから、
「この土地なら、これ」
「この店へ来たなら、これ」
が、きちんと伝わらなければなりません。
ペライチなら、全体の中で名物や看板料理を埋もれさせない。
ブック型なら、最初のページから食事のストーリーをつくる。
必要なら、両方を組み合わせる。
メニューは、料理を一覧にして載せるためのものではありません。
お客様が何を選び、どの順番で注文し、どんな時間を過ごすのかを考えるもの。
私は、メニューの形を決める前に、まずそこを考えることが大切だと思っています。
ペライチか。
メニューブックか。
答えは、その店がどんな食事体験をお客様に提供したいのかを考えた先にあるのだと思います。
