地域のことを聞かれて、答えられるスタッフを育てていますか?

観光地の飲食店では、お客様から地域のことを聞かれることがあります。

「このあと、どこへ行くのがおすすめですか?」
「ここから宮島までは、どうやって行けばいいですか?」
「この季節なら、どこを見るといいですか?」

飲食店のスタッフは、観光案内所ではありません。

すべての観光情報を知っている必要もありません。

でも、自分たちが働いている地域のことを少し知り、お客様との会話の中で伝えることができれば、その人の旅をより良くできることがあります。

そして私は、そこには観光地で働くことならではの、大きな意味があると思っています。

今回は「地域のことを話せるスタッフ」について研究してみましょう。

目次

飲食店なのに、宮島のことまで答えるんですか?

日本人観光客

ごちそうさまでした。
このあと宮島へ行こうと思っているんですけど、
今からでも楽しめますか?

ホールスタッフ

宮島ですか!
潮の満ち引きで景色もかなり変わるので、
行かれる前に今日の潮の時間を確認してみるといいですよ。

日本人観光客

えっ、そうなんですか?
そういうの全然知らなかったです。

ホールスタッフ

海の中に鳥居が見える時間と、
近くまで歩ける時間では、雰囲気が全然違うんですよ。
ぜひ楽しんできてください。

若手コンサルタント

先生。
今の接客、すごく親切だと思うんですけど……。
飲食店のスタッフが、
宮島のことまで説明する必要ってあるんですか?
もう観光案内所ですよね(笑)。

飲食店コンサルタント 原島

確かに(笑)。
でも私は、観光地の飲食店なら、
こういう会話ができるスタッフがいるのはすごくいいことだと思うんだ。

お客様は「店」だけではなく「地域」に来ている

飲食店コンサルタント 原島

ちょっと考えてみて。
さっきのお客様は、何のために広島へ来たんだろう?

若手コンサルタント

旅行ですよね。
食事だけが目的ではない。

飲食店コンサルタント 原島

そう。
飲食店側から見ると、
「うちのお店へ食事に来たお客様」
なんだけど、

飲食店コンサルタント 原島

お客様側から見ると、
「広島旅行の途中で、この店に食事へ来た」
なんだよ。

ホールスタッフ

ああ。
見ている範囲が違うんですね。

飲食店コンサルタント 原島

そうなんだ。
お店にいる時間は、その人の旅行の一部分。
食事が終わったあとも、お客様の旅は続いている。

飲食店コンサルタント 原島

だから、
「このあと、どこへ行くんですか?」
という会話があっても、
私はすごく自然だと思うんだよ。

若手コンサルタント

自分たちのお店だけで
接客を完結させなくてもいい。
ということですね。

スタッフに観光情報まで覚えさせるの?

経営者

先生、言っていることは分かります。

経営者

でも現実的には、
スタッフに料理を
覚えてもらうだけでも大変ですよ。
そこへ観光情報まで覚えてくださいって言ったら、
仕事が増えませんか?

飲食店コンサルタント 原島

その心配は当然だと思う。
だから私は、
「地域の観光情報を全部覚えましょう」
なんて言うつもりはないよ。

経営者

じゃあ、どこまで知っていればいいんですか?

飲食店コンサルタント 原島

まずは、お客様からよく聞かれることだけでいいと思う。
例えば、
「このあと、どこへ行くのがおすすめ?」
「ここから○○まで、どうやって行くの?」
「この季節なら、何を見るといい?」
こういう質問って、ある程度決まってくるでしょう?

ホールスタッフ

確かに。
同じことを聞かれること、結構あります。

飲食店コンサルタント 原島

だったら、そこから始めればいい。
観光ガイドになってもらう必要はないんだよ。

まず「よく聞かれる3つ」から始める

若手コンサルタント

具体的には、どうやってスタッフへ教えたらいいですか?

飲食店コンサルタント 原島

難しくしないことだね。
まず、お客様からよく聞かれる質問を3つ集めてみる。
それに対して、スタッフみんなが簡単に答えられるようにしておく。

ホールスタッフ

例えば、
「このあと行くなら、どこがおすすめ?」
みたいな質問ですね。

飲食店コンサルタント 原島

そう。
あとは、
「どうやって行く?」
「どのくらい時間がかかる?」
みたいな移動の質問。
それから、
「今の季節なら何がおすすめ?」
くらいでもいい。

経営者

それなら、そんなに負担じゃないですね。

飲食店コンサルタント 原島

でしょう?
まず3つ。
慣れてきたら、少しずつ増やせばいい。
最初から観光案内所をつくろうとするから大変になるんだよ(笑)。

知らないことは「知らない」でいい

ホールスタッフ

でも、お客様から知らないことを聞かれたら困りませんか?
答えられないと、ちょっと恥ずかしい気もします。

飲食店コンサルタント 原島

全然恥ずかしくないよ。
知らないことは、
「すみません、そこまでは分からないんです」
でいいと思う。

若手コンサルタント

適当に答えるほうが危ないですもんね。

飲食店コンサルタント 原島

その通り。
特に営業時間や交通、天候、潮の時間みたいに変わる情報は、曖昧な記憶で断定しないほうがいい。
「最新の情報を確認してみてください」
と案内すればいいんだよ。

ホールスタッフ

何でも答えられることが、良い接客ではないんですね。

飲食店コンサルタント 原島

そう。
大切なのは、
「知らないから関係ない」
ではなく、
「何か役に立てることはないかな」
という気持ちだと思う。

自分たちの地域を好きなスタッフを増やしたい

若手コンサルタント

先生。
ここまで聞いていると、観光情報を覚えるというより、
スタッフ自身が地域のことを知る話に聞こえてきました。

飲食店コンサルタント 原島

私は、そっちのほうが大事だと思っている。
マニュアルで、
「宮島について、この3つを暗記してください」
だけでは、あまり面白くないでしょう?

ホールスタッフ

確かに(笑)。

飲食店コンサルタント 原島

自分で宮島へ行ってみる。
地域のお祭りへ行ってみる。
近くの観光スポットを歩いてみる。
地元の名物を食べてみる。
そうすると、自分の言葉で話せるようになる。

経営者

スタッフ自身が地域を好きになるということですか?

飲食店コンサルタント 原島

そう。
自分がいいと思っているものを、
「ここ、いいですよ」
って紹介する言葉は強いよ。
それは暗記した観光案内とは全然違うからね。

お店のスタッフの印象が、観光地の印象になる

飲食店コンサルタント 原島

そしてね。
私は、ここが一番大切だと思っている。

若手コンサルタント

何ですか?

飲食店コンサルタント 原島

旅行から帰ったとき、
「あの街の人たち、親切だったね」
って話すことがあるでしょう?

ホールスタッフ

ありますね。
逆もありますけど……。

飲食店コンサルタント 原島

そうなんだよ。
観光地の印象って、景色や観光施設だけで決まるわけじゃない。
飲食店で会った人。
ホテルで会った人。
お土産屋さんで会った人。
旅先で出会った人たちの印象も、その地域の印象になる。

経営者

つまり、うちのスタッフの接客が、
「広島って良かったね」
につながる可能性もある?

飲食店コンサルタント 原島

私は、十分あると思う。
だから観光地で働くというのは、実はすごく意味のある仕事なんだよ。

私たちには毎日でも、お客様には一生に一度かもしれない

ホールスタッフ

でも先生。
毎日たくさんのお客様を接客していると、
そこまで考えられないときもあります。

飲食店コンサルタント 原島

それも当然だと思う。
私たちにとっては、毎日の営業だからね。
今日も営業して、明日も営業する。

若手コンサルタント

でも、お客様にとっては違う?

飲食店コンサルタント 原島

そう。
その旅行は、一生に一度かもしれない。
何年も前から楽しみにしていた家族旅行かもしれない。
結婚記念日の旅行かもしれない。
もしかしたら、その土地を訪れるのは人生で一度だけかもしれない。

ホールスタッフ

そう考えると、一人のお客様の見え方が変わりますね。

飲食店コンサルタント 原島

だからこそ、
一生に一度かもしれない旅の思い出を、大切にしてあげたいよね。
私は、そこに観光地で働くことのやりがいがあると思うんだ。

原島純一の視点

観光地の飲食店で働くということには、私は大きな意味があると思っています。

私たちにとっては、毎日の営業です。

今日もたくさんのお客様が来て、料理を提供して、また明日も営業する。

でも、お客様にとっては違います。

その旅行は、一生に一度かもしれません。

何年も前から楽しみにしていた家族旅行かもしれない。

結婚記念日の旅行かもしれない。

子どもが大きくなる前の、家族みんなで行く大切な旅行かもしれない。

もしかしたら、その土地を訪れるのは人生で一度だけかもしれません。

そんな大切な旅の途中で、自分たちのお店を選んでくれた。

私は、そのことをもっと大切に考えていいと思っています。

そして、お客様がその観光地を好きになるかどうかは、有名な観光名所や美しい景色だけで決まるわけではありません。

飲食店で出会ったスタッフ。

ホテルや旅館で出会った人。

お土産屋さんで話した人。

旅先で出会った「人」の印象も、その土地の印象になります。

「あの街の人たちは親切だったね」

「あのお店の人、いろいろ教えてくれたよね」

そんな一言が、そのまま地域の思い出になることがあります。

つまり、

お店のスタッフの印象が、その観光地の印象をつくることもある。

私はそう思っています。

だから、観光地の飲食店で働くスタッフは、料理を運んでいるだけではありません。

その地域を訪れてくれた人を迎える一人でもあります。

もちろん、観光案内所のように何でも知っている必要はありません。

でも、自分たちの地域のことを少し好きになって、少し知って、お客様から聞かれたときに、

「それなら、ここがおすすめですよ」

「今の季節なら、ぜひ見ていってください」

と話せる。

それだけで、お客様の旅が少し変わることがあります。

そして私は、そこに観光地で働くことの社会的な意義があり、仕事のやりがいもあると思っています。

毎日何十人、何百人と接客していると、どうしても「今日のお客様の一人」になってしまいます。

でも、お客様にとっては、

「一生に一度の旅行で出会った人」

になるかもしれない。

だからこそ、一人ひとりの旅の思い出を大切にしてあげてほしい。

観光地の接客とは、お客様の旅をより良くすること。

そして、その積み重ねが、自分たちのお店だけではなく、その地域そのものを好きになってもらうことにつながる。

私は、観光地で働くということには、そんな素敵な役割があると考えています。

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