観光地の飲食店で、料理を前に楽しそうに写真を撮っているお客様を見かけることがあります。
家族旅行。
夫婦旅行。
友人との旅行。
ところが、誰か一人がスマートフォンを持てば、その人だけ写真には入りません。
そんなとき、
「よろしければ、皆さんでお撮りしましょうか?」
とスタッフから声を掛ける。
ほんの数十秒の接客です。
でも、その一枚が何年後にも残る「旅の思い出」になるかもしれません。
今回は、観光地の飲食店だからこそ考えたい「写真を撮ってあげる接客」について研究してみましょう。
写真を撮ることも、接客なんですか?
ホールスタッフ先生、この前ちょっと迷ったことがあったんです。
家族のお客様が料理を前に写真を撮っていたんですけど、お父さんが撮っていたので、お父さんだけ写真に入っていなかったんです。



うん。



「お撮りしましょうか?」って声を掛けようかなと思ったんですけど……。
忙しかったし、写真を撮るのって私たちの仕事なのかなって。



確かに。
飲食店の仕事かと言われると、
ちょっと迷いますね。



じゃあ逆に聞いてみようか。
飲食店の接客って、どこまでが仕事だと思う?



注文を取って、料理を出して、
お客様に気持ちよく過ごしてもらう……。



だったら、
お客様に気持ちよく過ごしてもらうために
写真を撮るのも、
立派な接客じゃないかな。
観光客は「食事」だけをしに来ているわけではない



でも、それなら普通の飲食店でも同じですよね?



もちろん。
でも観光地では、少し意味が大きくなると思うんだ。
例えば、家族で下田へ旅行に来たとする。



せっかく伊豆まで来たからと、
伊勢海老が豪快に盛られた料理を注文する。
料理が運ばれてきた瞬間、
「うわー、すごい!」
ってなるよね。



絶対、写真撮ります(笑)。



そうでしょう。
料理だけ撮るかもしれないし、家族みんなで伊勢海老を囲んで撮りたくなるかもしれない。
でも、お父さんがスマートフォンを持ったら、お父さんだけ写真に入れない。



そこでスタッフが、
「よろしければ、皆さんでお撮りしましょうか?」
と声を掛ける。



それなら、伊勢海老と家族全員が一緒に残りますね。



そう。
何年か経ってその写真を見たとき、
「下田へ行ったとき、みんなで伊勢海老を食べたよね」
って思い出すかもしれない。
料理は食べたらなくなる。



でも、
その日に撮った一枚の写真は、何年後にも残るかもしれない。
観光地の飲食店では、そこまで考えて接客してもいいと思うんだよ。
大切なのは「写真を撮ること」ではなく「気づくこと」



でも先生。
「お客様を見つけたら写真を撮ってあげましょう」
みたいにルールにするのは、ちょっと違いますよね。



うん。私は違うと思う。
何でも、
「お写真撮りましょうか?」
と言えばいいわけじゃない。



写真を撮られたくない人もいますもんね。



そう。
だから最初に必要なのは、
「気づくこと」
なんだよ。



そう。
だから最初に必要なのは、
「気づくこと」
なんだよ。
家族全員で写真を撮りたそうなのに、
一人だけカメラマンになっている。



記念日の料理が出て、
みんなで楽しそうに写真を撮っている。
店内や料理を何枚も撮影している。



そんな様子を見て、
「もしかしたら、皆さんで写真を撮りたいのかな」
と気づく。



接客って、マニュアルを見る前に、
お客様を見るところから始まるんですね。



そういうことだと思う。
親切は、押しつけない



声の掛け方も大事ですよね。



大事だね。
私は、
「よろしければ、皆さんでお撮りしましょうか?」
くらいがいいと思う。



それなら必要なければ断りやすいですしね。



そうなんだよ。
接客って、親切を押しつけることじゃないから。
声を掛けて、
「大丈夫です」
と言われたら、
「かしこまりました」
で終わればいい。



写真を撮ること自体が目的じゃないんですね。



そう。
お客様が必要としていることに気づいて、
必要なら手を差し伸べる。
写真撮影は、その一つなんだよ。
忙しいときまで写真を撮るのか?



でも現実的な話をすると、ピーク中は難しいですよ。
満席で料理も待っているのに、スタッフがあちこちで写真撮影を始めたら困ります(笑)。



「記念撮影係」になっちゃいますね(笑)。



そこは当然、店全体を見て判断すればいい。
接客だからといって、何でもやればいいわけじゃない。



余裕があるときなら声を掛ける。
ピーク中なら無理をしない。



それでいいと思う。
大事なのは、
「写真撮影サービスを始める」ことではない。
スタッフがお客様を見て、
自分で気づけるようになること。



それなら分かります。
写真撮影を新しい業務として増やす話じゃないんですね。



そう。
ここを間違えたくないんだよね。
小さな「気づき」が、接客を変える



ということは、これは写真だけの話ではない?



そうなんだ。
例えば、お客様が料理を迷っていたら、
「初めてでしたら、こちらがおすすめですよ」
と伝える。



観光マップを見ていたら、
「このあと、どちらへ行かれるんですか?」
と聞いてみる。



帰り際に、
「ありがとうございました」
だけではなく、
「このあとも素敵なご旅行を」
と一言添える。



全部、お客様を見ていないとできませんね。



そう。
マニュアルに書かれた言葉を言うだけではなく、
目の前のお客様を見て、
「今、この人に何ができるだろう?」
と考える。
そこから接客が始まるんだと思う。
その一枚が、何年後にも残るかもしれない



そう考えると、写真を撮るのも結構大事ですね。



私はそう思う。
その場では、ほんの30秒かもしれない。
でも家に帰って旅行の写真を見返したとき、
家族全員で笑っている写真が残っている。



しかも、その後ろにはお店や料理も写っています。



そう。
もしかしたら何年後かに、
「あのお店の人、写真撮ってくれたよね」
なんて話になるかもしれない。
それって、すごくいいことじゃない?



いいですね。



観光地の飲食店は、料理を提供して終わりじゃない。
お客様の旅の途中に、自分たちの店がある。



だから、
その旅をより良いものにするために、
自分たちに何ができるだろう。
そんなことを考えられるスタッフが増えたら、
接客はもっと良くなると思うよ。
原島純一の視点
「お客様の写真を撮ってあげる」
これだけを見ると、とても小さなサービスに思えるかもしれません。
でも私は、観光地の飲食店では、こうした小さな気づきを大切にしてほしいと思っています。
写真を撮ること自体が目的ではありません。
大切なのは、
目の前のお客様を見ているか。
ということです。
家族全員で写真を撮りたそうだ。
料理を選ぶのに迷っている。
観光情報を探している。
何か困っていそうだ。
そこに気づいて、
「何かできることはないかな」
と考える。
そして必要なら、一言声を掛ける。
接客とは、決められた言葉を言うことだけではありません。
目の前のお客様に合わせて、自分にできることを考えることです。
特に観光地では、そのお客様にとって今日の食事も旅行の一部です。
料理は食べればなくなります。
しかし、
その日に撮った一枚の写真は、何年後にも残るかもしれません。
その写真を見たときに、
「あのお店、良かったね」
と思い出してもらえたら、とても素敵なことだと思います。
観光地の接客とは、
お客様の旅をより良くすること。
そのための小さな気づきを、一つずつ増やしていくことが大切だと考えています。
