観光客の「行きたい」と「ここにしよう」は、別の情報から生まれるのかもしれない

先日、オーストラリア政府観光局の情報発信について、とても興味深い記事を読みました。

これからAIが旅行先選びにも大きく関わってくる中で、観光情報をどのように発信していくのか。

その取り組みの中で、私が特に気になったのが、

「Why」と「How」

という考え方でした。

私なりに観光地の飲食店へ置き換えると、Whyとは、

なぜ高山が良いのか。
なぜ飛騨牛がおすすめなのか。
なぜこの店に行きたいのか。

を伝える情報です。

一方のHowは、

高山でどのように過ごすのか。
どんな順番で観光するのか。
どれくらい時間がかかるのか。
その旅程のどこで食事をするのか。

を具体化する情報です。

この「Why」と「How」という考え方を見たとき、

これって、観光地の飲食店にもそのまま当てはまるんじゃないか。

と思いました。

目次

Whyは、「なぜ行きたいのか」をつくる情報

例えば、高山へ旅行するとします。

Instagramで古い町並みの写真を見る。

飛騨牛の料理を見る。

歴史ある町家を見る。

四季の景色を見る。

それを見て、

「高山、いいな」

「古い町並みを歩いてみたい」

「せっかくなら飛騨牛を食べたい」

と思う。

これがWhyなのだと思います。

Whyは、「なぜその土地へ行きたいのか」「なぜその料理を食べたいのか」「なぜその店に行きたいのか」をつくる情報。

飲食店なら、

「この料理を食べてみたい」

「この店、雰囲気がいいな」

「この店には、この土地らしさがありそうだ」

と思ってもらうことです。

写真や動画、料理の背景、店の歴史、土地ならではの食材、そこでしかできない体験。

そうした情報が、旅行者の「行ってみたい」「食べてみたい」を作ります。

Howは、「その旅をどう過ごすのか」を具体化する情報

でも、旅行者は「行きたい」と思っただけでは、まだ旅を決められません。

高山へ行くことを決めた後、今度は旅を組み立て始めます。

例えば、

「午前中は古い町並みを歩こう」

「白川郷までどのくらいかかるんだろう」

「白川郷を観光するなら何時間くらい必要だろう」

「何時ごろ高山市内へ戻れるだろう」

「夕食はどこで食べよう」

と考え始めます。

そこでモデルコースを見る。

Googleマップを見る。

観光サイトを見る。

実際に旅行した人のSNSを見る。

そうして、少しずつ一日の流れを具体化していきます。

例えば、こんな旅の流れです。

9:00 古い町並みを散策
12:00 高山市内で昼食
14:00 白川郷へ移動・観光
17:00 高山市内へ戻る
18:00 夕食

ここまで一日の流れが見えてくると、飲食店の選び方も変わります。

単に、

「飛騨牛を食べたい」

だけではなく、

「この旅程なら、18時にこの店へ行けそう」

という判断ができるようになります。

これがHowの役割なのだと思います。

Howは、「どのように旅を過ごすのか」「どの順番で回るのか」「どのくらい時間がかかるのか」を具体化し、その中に飲食店を入れられるようにする情報。

Whyは「行きたい」をつくる。Howは「ここにしよう」を後押しする

私は今回の記事を読みながら、この二つはどちらも必要なのだと思いました。

Whyだけなら、

「高山へ行ってみたい」

「飛騨牛を食べてみたい」

「この店も良さそうだ」

までは行ける。

でも、旅行者が最後に知りたいのは、

「自分の旅の中に、この店を入れられるのか」

ということです。

どれくらい離れているのか。

何分くらいかかるのか。

観光の前後に立ち寄れるのか。

駐車場はあるのか。

予約できるのか。

何時ごろ行くと利用しやすいのか。

そうしたHowの情報が揃うことで、

「この旅程なら行けそう」
↓
「じゃあ、ここにしよう」

へ進んでいく。

Whyは「行きたい」をつくる。

Howは「ここにしよう」を後押しする。

飲食店も、「旅の過ごし方」の中から自店を考える

ここで、以前考えた「旅の動線」の話ともつながりました。

飲食店のホームページには、

「○○駅から車で15分」

「○○観光地から20分」

と書かれていることがあります。

もちろん必要な情報です。

でも、Howとして考えるなら、もう一歩踏み込めます。

例えば、

白川郷を15時半ごろ出発すると、高山市内には17時ごろ戻れます。
古い町並み観光の後、そのまま夕食に立ち寄れます。
食事後にホテルへ戻りやすい場所です。

と伝える。

そうすると、単なる距離情報ではなく、

「この旅程なら、この店を使える」という判断材料

になります。

店から見た距離ではなく、

旅行者が、どのように一日を過ごすのか。その中で、自分の店がどこに入るのか。

そこまで考えることが、観光地の飲食店にとってのHowなのかもしれません。

モデルコースは、旅行者の「ここにしよう」を作る

観光サイトを見ると、

「1泊2日おすすめコース」

「○○を巡る半日コース」

といったモデルコースがあります。

モデルコースを見ることで、旅行者は、

どんな順番で回ればいいのか。

どれくらい移動に時間がかかるのか。

それぞれの場所で、どれくらい時間を使えるのか。

が見えてきます。

そして、その流れの中に飲食店が入ることで、

「この店、良さそう」から「この時間なら行ける。ここにしよう」へ変わる。

飲食店も、自店だけを見るのではなく、モデルコースや周遊ルートを見ながら、

お客様はどこから来るのか。

どこへ向かうのか。

どのくらい時間があるのか。

その中で、どんな食事が必要なのか。

を考えてもいいのだと思います。

そしてAIは、WhyとHowをつなぐ存在になるのかもしれない

今回の記事には、もう一つ興味深い点がありました。

AIです。

これから旅行者がAIに旅の相談をすることが増えていけば、

「70代の両親を連れて高山へ行きます。午前中は古い町並み、午後は白川郷へ行きたいです。夕方に高山市内へ戻って、駐車場があって、ゆっくり飛騨牛を食べられる店はありますか?」

といった相談も増えていくでしょう。

この質問には、WhyとHowの両方が含まれています。

高山へ行きたい。

飛騨牛を食べたい。

これがWhy。

古い町並みから白川郷へ行き、夕方に戻る。

駐車場が必要。

ゆっくり食事したい。

これがHowです。

AIは、その両方の情報を組み合わせながら、

「あなたの旅なら、この店が合いそうです」

と提案するようになるのかもしれません。

AI対策の前に、WhyとHowの情報は揃っているだろうか

AI検索という言葉を聞くと、

「AIに表示されるには、どうすればいいのか」

と考えてしまいます。

もちろん、それもこれから重要になると思います。

でも、その前に確認したいことがあります。

自分の店には、旅行者が「なぜ行きたいのか」を感じるWhyと、
「どう旅に組み込めるのか」を判断するHowの両方があるだろうか。

料理写真はある。

店の歴史もある。

料理の魅力も伝えている。

でも、

どんな観光の前後に使えるのか。

どのくらい移動時間がかかるのか。

何時ごろ利用しやすいのか。

どんな旅行者に向いているのか。

旅行者が自分の旅を具体化するための情報は、意外と少ない。

AIに理解してもらう以前に、

人間である旅行者自身が、自分の旅にその店を入れられるか判断できない。

そんな状態になっていないかを、まず考える必要があるように思います。

「行きたい店」と「旅に入れられる店」

観光地の飲食店では、

「行きたい店になること」

が大切です。

なぜこの地域へ行きたいのか。

なぜこの料理を食べたいのか。

なぜこの店を選びたいのか。

Whyをしっかり伝える。

そして同時に、

「自分の旅に入れられる店」

になるためのHowも伝える。

モデルコース。

周遊ルート。

距離。

所要時間。

営業時間。

駐車場。

予約。

利用シーン。

その両方が揃うことで、

Whyは「行きたい」をつくる。

Howは「ここにしよう」を後押しする。

そしてAIは、その二つを旅行者ごとにつなぐ存在になっていくのかもしれない。

観光客には、その両方が必要なのだと思います。

オーストラリア政府観光局の「Why」と「How」という発信の考え方を知って、

観光地の飲食店も、「なぜ行きたいのか」を伝えることと、「どのように旅の中で使えるのか」を伝えること。その両方を考える時代になっていくのかもしれない。

そんなことを考えました。

この記事を書くきっかけになった情報

オーストラリア政府観光局が、AI時代を見据えた観光マーケティングを進めているという記事を読んだことが、今回の記事を書くきっかけになりました。

特に興味深かったのが、Instagramで「なぜオーストラリアへ行きたいのか」という旅への動機づけを担う「Why」と、モデル日程や具体的な旅行計画など「どのように旅をするのか」を伝える「How」の役割を分けていることです。

この記事は、オーストラリア政府観光局の施策そのものを評価・解説するものではありません。「Why」と「How」という考え方を知り、観光地の飲食店に置き換えると何が見えてくるのだろう、と考えたことを書いたものです。

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