なぜ観光地では「売れる時に売り切る」ことが大切なのか?

なぜ観光地では「売れる時に売り切る」ことが大切なのか?

観光地の飲食店には、売上が大きく伸びる時期があります。

ゴールデンウィーク。

夏休み。

紅葉シーズン。

年末年始。

地域によっては、桜や祭り、スキーシーズンなどもあるでしょう。

こうした繁忙期になると、街には観光客があふれ、人気店には行列ができます。

店内は満席。

スタッフは朝から晩まで忙しい。

売上も通常月より大きく伸びる。

すると経営者は、

「これだけ売れているんだから十分だろう。」

と思ってしまいがちです。

でも私は、観光地の飲食店ほど、そこで満足してはいけないと思っています。

なぜなら、

商売の王道は、売れる時に徹底的に売り切ることだからです。

目次

観光地の需要は、自分たちではコントロールできない

観光地の売上は、店の努力だけで決まるわけではありません。

天気。

気温。

暦の並び。

桜や紅葉の見頃。

大型連休の日数。

交通事情。

イベント。

旅行需要。

そして、他の観光地の盛り上がり。

さまざまな外部要因によって、観光客の数そのものが大きく変わります。

去年のゴールデンウィークが好調だったからといって、今年も同じだけのお客様が来るとは限りません。

逆に、天候や暦に恵まれ、予想以上のお客様が訪れる年もあります。

つまり観光地では、

「売れる時期」が毎年同じように訪れる保証はありません。

だからこそ、お客様が来てくださっているときに、どこまで需要を取り切れるかが重要になります。

「売れた」と「売り切った」は違う

繁忙期に前年を超える売上をつくった。

これは素晴らしいことです。

でも、そこで一度考えてみてほしいのです。

本当に、売り切ったでしょうか。

満席だったから、これ以上売れなかった。

そう考えてしまいがちですが、

満席になったことと、売上を最大化できたことは同じではありません。

営業時間は適切だったか。

席をもっと効率よく使えなかったか。

予約の取り方に改善余地はなかったか。

料理の提供時間を短くできなかったか。

繁忙期には必要のないメニューが、厨房の負担になっていなかったか。

もっとおすすめすべき商品はなかったか。

客単価を高める余地はなかったか。

人員配置によって、断るお客様を減らせなかったか。

テイクアウトなど、店内以外の需要を取る方法はなかったか。

見るところはいくつもあります。

繁忙期に考えるべきなのは、

「今日は売れたか。」

だけではありません。

「今日の需要を、どこまで取り切れたか。」

なのです。

人は「満ちているところ」より「欠けているところ」が気になる

ここで、経営者が陥りやすい考え方があります。

人間は、満ちているところより、欠けているところに目が向きます。

繁忙期に十分売れていると、

「ここはもう大丈夫。」

と思います。

一方、閑散期の売上を見ると、

「ここを何とかしなければ。」

と思います。

もちろん、閑散期への対策は必要です。

でも、年間であと200万円の売上を増やしたいとしたら、どこで200万円をつくるほうが現実的でしょうか。

すでに多くのお客様が来ている繁忙期なのか。

それとも、そもそも観光客そのものが少ない閑散期なのか。

私は、まず繁忙期を見ます。

経営では、伸ばしやすいところを伸ばすという発想が必要だからです。

需要があるところで売上を伸ばすことと、

需要そのものが少ないところで新しい売上をつくることでは、

難易度がまったく違います。

なぜ、売れる時期にさらに販促するのか

これは飲食店だけの話ではありません。

例えば、コンビニでは、もともとおにぎりが売れる時期に、さらに値引きキャンペーンを行うことがあります。

一見すると、

「売れているなら、わざわざ値引きしなくてもいいのでは?」

と思うかもしれません。

でも、考え方は逆です。

売れる時だからこそ、さらに売る。

需要があるところに、さらに仕掛けをつくることで、販売数量を大きく伸ばす。

ここで大切なのは、

「観光地の飲食店も値引きをしましょう。」

という話ではありません。

学びたいのは、その考え方です。

売れる時期だから何もしないのではなく、売れる時期だからこそ、さらに売るための準備をする。

観光地の繁忙期にも、同じ発想が必要です。

観光地では、閑散期に販促しても限界がある

都市部と観光地では、閑散期の意味が違います。

都市部であれば、自店の売上が落ちていても、商圏そのものには多くの人がいます。

販促によって、他店を利用しているお客様に自店を選んでもらうこともできるでしょう。

しかし、観光地では事情が違います。

閑散期になると、

地域そのものから観光客が減ります。

街を歩いている人そのものが少ない。

その状況で広告や販促を強化しても、できることには限界があります。

いないお客様を、今日突然増やすことはできません。

だから観光地では、

繁忙期と閑散期の売上差をすべて埋めようとしないこと

も大切です。

売上の波をなくすのではなく、波があることを前提にする

観光地には、繁忙期と閑散期があります。

これは弱点ではありません。

観光地という市場の特徴です。

だから私は、

売上の波をなくそうとするのではなく、波があることを前提に経営する。

という考え方が必要だと思っています。

繁忙期には、

売れる時に、徹底的に売り切る。

そして閑散期には、

少ない需要の中で、どう売上を確保し、どう乗り切るのかを考える。

繁忙期の売上を閑散期と同じにする必要もありません。

閑散期の売上を繁忙期と同じにする必要もありません。

大切なのは、

一年間を通して、必要な利益を残すことです。

「繁忙期の山」を、どこまで高くできるか

観光地の年間売上をグラフにすれば、大きな山と谷ができるはずです。

経営者はどうしても、谷を見ると埋めたくなります。

でも私は、まず山を見てほしいと思っています。

すでに需要がある。

すでにお客様が来ている。

すでに売れている。

そこには、まだ伸ばせる可能性が残っているかもしれません。

だから、

閑散期の谷を埋めることばかり考えるのではなく、繁忙期の山をもっと高くできないかを考える。

これが、観光地飲食店の年間経営では非常に重要です。

原島純一の視点

観光地の飲食店を見ていると、

繁忙期には、

「今日は忙しかった。」

「今年のGWも売れた。」

と安心し、

閑散期になると、

「売上が足りない。」

「何か販促をしなければ。」

と考えるお店があります。

でも私は、順番が逆ではないかと思うことがあります。

観光地の需要は、天気や暦、旅行需要、他地域の盛り上がりなどによって大きく変わります。

お客様が来てくださる時期は、決して当たり前ではありません。

だからこそ、

まず、売れる時に徹底的に売り切る。

年間であと200万円の売上が必要なら、

観光客そのものが少ない閑散期に200万円をつくる前に、

お客様があふれている繁忙期に、あと200万円伸ばせないかを考える。

私は、そのほうが商売として自然だと思っています。

人は、満ちているところより、欠けているところが気になります。

しかし経営では、

伸ばしやすいところを伸ばすという発想が必要です。

そして、そのうえで、

閑散期をどう乗り切るかを考える。

売れる時に、徹底的に売り切る。

売れない時を、どう乗り切るか。

そして、一年間で利益を残す。

私は、これが観光地飲食店の繁忙期・閑散期戦略の基本だと考えています。

目次