なぜ外国人観光客は「老舗」に惹かれるのか?

なぜ外国人観光客は「老舗」に惹かれるのか?

観光地を歩いていると、外国人観光客が古い建物の前で足を止めていることがあります。

暖簾の前で写真を撮る。

古い町家を眺める。

昔ながらの店内に興味を示す。

私たち日本人にとっては、見慣れた風景かもしれません。

でも外国人観光客にとっては、

「日本へ来たからこそ触れられるもの」

なのかもしれません。

では、なぜ外国人観光客は老舗に惹かれるのでしょうか。

単に、

「古い建物が珍しいから。」

だけではないと思います。

私は、

老舗で食事をすることを通して、日本の文化に触れることができるから

ではないかと考えています。

目次

老舗にあるのは「古いもの」だけではない

老舗というと、

古い建物。

昔ながらの店構え。

長い歴史。

そんなものを思い浮かべます。

でも、老舗に積み重なっているものは、それだけではありません。

暖簾。

器。

料理。

調理方法。

食べ方。

接客。

季節のしつらえ。

店内のつくり。

地域との関わり。

そして、その店が長い年月をかけて受け継いできた考え方。

一つひとつを見ると、私たち日本人にとっては当たり前に感じるものもあります。

でも、それらが一つの店の中に積み重なることで、

その店ならではの日本文化が形づくられています。

食事をしながら、日本文化の中に入る

例えば、暖簾をくぐる。

靴を脱いで座敷へ上がる。

畳の部屋で食事をする。

季節の器に盛られた料理を見る。

地域に伝わる料理を食べる。

日本独特の接客を受ける。

その店の歴史を聞く。

私たちにとっては、一つひとつが特別なことではないかもしれません。

でも外国人観光客からすると、

そのすべてが、

「日本で食事をしている。」

という体験になります。

つまり老舗は、

料理を食べる場所であると同時に、

食事を通して日本文化の中に入る場所

にもなり得るのです。

日本人には「古い」。外国人には「日本らしい」

ここは、観光地の老舗にぜひ考えてほしいところです。

長く商売をしていると、

「建物が古くなった。」

「店内が今風ではない。」

「昔の器だから新しくしたい。」

と思うことがあります。

もちろん、修繕が必要なものは直さなければなりません。

使いづらいものを改善することも必要です。

でも、

「古いから価値がない。」

と判断するのは少し違うと思っています。

日本人には古く見えるものが、

外国人観光客には、

「日本らしい。」

と感じられることがあります。

それは単なる古さではありません。

長い年月をかけて残ってきたものだからこそ感じられる、

時間の積み重なり

なのだと思います。

新しくすれば、必ず価値が上がるわけではない

飲食店を改装するとき、

新しくする。

明るくする。

きれいにする。

使いやすくする。

という方向へ進みがちです。

もちろん、それが必要な場合もあります。

でも老舗の場合は、

新しくすることで失うものがないか

も考えなければなりません。

昔からある柱。

古い梁。

暖簾。

器。

看板。

庭。

建具。

そうしたものを全部新しくしてしまったら、

便利にはなるかもしれません。

でも、

その店でしか感じられなかった時間まで消えてしまう

ことがあります。

特に外国人観光客にとっては、

そこが日本文化に触れる大切な部分だったかもしれません。

だからといって「古ければ残す」でもない

ただし、

古いものはすべて残せばいい、

という話でもありません。

老朽化して危険なもの。

使い勝手が悪いもの。

お客様に不便をかけているもの。

今の衛生基準や営業に合わないもの。

こうしたものは変える必要があります。

大切なのは、

「古いか、新しいか。」

で判断することではありません。

「これは、この店の価値なのか。」

と考えることです。

なぜ、この暖簾を使ってきたのか。

なぜ、この料理を提供してきたのか。

なぜ、この器を使っているのか。

なぜ、この店構えなのか。

その理由を考える。

そして、

守るべき価値は残し、やり方は今の時代に合わせて変えていく。

私は、老舗にはこの考え方が大切だと思っています。

「創業○年」だけでは、価値は伝わらない

老舗では、

「創業100年。」

「創業150年。」

と歴史を伝えることがあります。

もちろん、それ自体に価値があります。

でも外国人観光客に、

「100年前から営業しています。」

と伝えるだけでは、その店の本当の価値までは分からないかもしれません。

大切なのは、

その100年間で、何を受け継いできたのか。

です。

創業当時から続く料理。

何代にもわたって受け継いだタレ。

地域の食材を使い続けてきたこと。

昔から変わらない調理方法。

地域の人との関係。

建物。

器。

店の考え方。

そうした背景まで分かると、

「古い店」から、

「日本の文化を受け継いできた店」

へ見え方が変わります。

老舗の価値は、説明しなければ分からないこともある

一方で、

日本文化だからといって、外国人観光客がすべて自然に理解できるわけではありません。

なぜ暖簾が掛かっているのか。

なぜこの器を使うのか。

なぜ季節によって料理が変わるのか。

なぜこの食べ方をするのか。

日本人なら説明されなくても分かることが、外国人観光客には分からないことがあります。

だからこそ、

文化を変えるのではなく、文化の意味を伝える。

という発想が必要です。

多言語で短く説明する。

料理の背景を伝える。

食べ方を紹介する。

店の歴史を写真で見せる。

スタッフが一言説明する。

それだけでも、

ただ食事をするだけだった時間が、

日本文化を知る体験

へ変わることがあります。

外国人向けにつくり直すのではなく、価値を伝える

前の記事では、

外国人観光客が日本人の食べているものを食べること自体が、

日本での食体験

になるという話をしました。

今回の老舗は、そこからさらに広がります。

料理だけではありません。

建物。

暖簾。

器。

歴史。

接客。

しつらえ。

そこに積み重なってきた文化そのものが体験になります。

だからインバウンド対応だからといって、

老舗を外国人向けの店につくり直す必要はありません。

むしろ、

その店にすでにある日本文化を、外国人観光客にも分かるようにする。

そのほうが、その店でしかできない体験につながるのではないでしょうか。

老舗は「食べる文化」を次の世代へ伝える場所でもある

料理には、その土地の歴史があります。

食材には、地域との関係があります。

器には、使われてきた理由があります。

食べ方にも、長く続いてきた文化があります。

そして老舗には、

そうしたものが長い年月をかけて積み重なっています。

だから私は、老舗を単に、

「昔から続いている飲食店」

とは考えていません。

老舗は、

食を通して、その土地や日本の文化を次の世代へ伝えていく場所

でもあると思っています。

そこには日本人だけではなく、

日本を訪れる外国人観光客へ文化を伝える役割もあります。

原島純一の視点

私は、老舗の事業承継や店づくりを考えるとき、

「何を変えるか。」

だけではなく、

「何を残すべきか。」

を考えることが、とても大切だと思っています。

古いから残す。

昔からやっているから残す。

という意味ではありません。

反対に、

古いから変える。

今風ではないから変える。

でもありません。

なぜ、それがこの店に残ってきたのか。

を考える。

そこに、お客様が感じている価値があるかもしれません。

特に外国人観光客にとって、

私たち日本人が当たり前だと思っているものが、

日本文化に触れる貴重な体験になることがあります。

暖簾。

建物。

料理。

器。

しつらえ。

接客。

歴史。

その一つひとつが、店の価値です。

だから私は、

老舗を外国人向けにつくり変えるのではなく、

老舗にすでにある文化的な価値を、外国人にも分かるように伝える。

ことが大切だと思っています。

老舗は、料理を提供する場所であると同時に、

食を通して日本文化に触れてもらえる場所でもある。

そして、

守るべきなのは「古さ」ではなく、その店に積み重なってきた価値です。

私は、そう考えています。

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