「インバウンドと日本人、予約もメニューも『同じ』でなくていい」~「ノーショーと商品設計、二つの悩みを解決する新しい予約の考え方」~

インバウンドのお客様が増えてきた。

観光地の飲食店にとってはありがたいことですが、その一方で、新しい悩みも増えています。

その一つが、予約のノーショー(無断キャンセル)です。

海外から予約が入るのはうれしい。しかし、もし連絡もなく来店されなかったら、確保していた席だけでなく、用意した食材やスタッフの時間まで無駄になってしまいます。

「予約時にクレジットカードを登録してもらった方がいいのではないか」

そう考える店も増えてきました。

ところが、ここで別の問題が出てきます。

昔から利用してくれている地元のお客様や日本人のお客様にまで、予約のたびにカード登録をお願いする必要があるのだろうか。

特に老舗の場合、電話一本で予約してきた常連客も少なくありません。

ノーショー対策を強化した結果、これまでのお客様にとって予約が面倒になってしまっては本末転倒です。

そして、もう一つ悩ましいのがメニューです。

目次

日本人とインバウンドでは、選びやすいメニューが違う

日本人のお客様なら、料理名を見ればある程度どんな料理なのか想像できます。

好きなものを一品ずつ注文したい人もいるでしょう。

一方、初めて日本を訪れた海外のお客様にとっては、事情が違います。

料理名を外国語に翻訳したとしても、

「この店では何を食べればいいのか」

「どれを組み合わせれば、この店らしい料理を楽しめるのか」

まで伝わるとは限りません。

そこで、海外のお客様には、店のおすすめ料理をまとめたコースの方が選びやすい場合があります。

店側にとっても、注文内容をある程度事前に把握できれば、仕込みやオペレーションがしやすくなります。

日本人向けにはアラカルトも残したい。
インバウンドには分かりやすいコースを勧めたい。

ここで悩んでいる飲食店もあるのではないでしょうか。

全員を同じにする必要はない

こうした二つの問題を考えていくと、一つの考え方にたどり着きます。

そもそも、日本人のお客様とインバウンドのお客様を、すべて同じ予約方法、同じメニューにする必要があるのでしょうか。

現在は、予約システムもかなり進化しています。

たとえば、お客様が利用しているブラウザの表示言語によって、予約画面に表示するコースを変える仕組みがあります。

日本語環境から予約するお客様には、これまでの国内向けメニュー。

外国語環境から予約するお客様には、インバウンド向けに設計したコース。

さらに、外国語環境からの予約だけ、クレジットカード情報の登録を求める。

そんな予約設計もできるようになっています。

つまり、

「メニューの出し分け」と「予約条件の出し分け」

を同時に行うわけです。

実際に「商品」と「予約」の両方を変えた店がある

実際に、この考え方を取り入れている老舗飲食店があります。

1801年創業の「駒形どぜう」を運営する株式会社駒形どぜうのグループ店「ちゃんこ部屋 浅草店」です。

予約システムを提供するトレタの導入事例によると、同店ではインバウンド客の増加に伴い、いくつかの課題を抱えていました。

その一つが、海外客のノーショー。

そしてもう一つが、海外客の注文金額にばらつきがあったことです。

そこで海外のお客様向けに専用コースを用意し、コース予約へ誘導するようにしました。

その結果、トレタの導入事例では、最低でも4,500円程度の注文につながるようになり、海外客の客単価は2,000円以上上昇したと紹介されています。

さらに、コース予約客については来店率100%を継続しているとされています。

ここで注目したいのは、特定の予約システムそのものではありません。

「海外客のノーショー」という問題と、「海外客の商品選び」という問題を、別々に考えたことです。

ノーショーには「予約」で対応する

ノーショーが心配なら、予約時にカード情報を登録してもらう。

しかし、それをすべてのお客様に求める必要はありません。

海外からの予約など、店側がリスクを感じている予約に限定して導入する方法もあります。

先ほどの事例でも、海外のお客様にはキャンセルプロテクションを設定する一方、国内の常連客などにはカード登録を求めない運用が行われています。

これなら、ノーショー対策を強化しながら、既存のお客様の予約方法を大きく変えずに済みます。

商品選びには「メニュー」で対応する

一方、

「何を注文したらいいのか分からない」

という問題は、カード登録では解決できません。

こちらは商品設計の問題です。

外国語に翻訳した大量のメニューから選んでもらうのではなく、

「この店に来たら、まずこれを食べてほしい」

という料理をコースにまとめて提示する。

旅行者にとっては選びやすくなり、店にとっては自店の魅力を伝えやすくなります。

結果として客単価が安定する可能性もあります。

これは単純に「外国人向けに高いコースを売る」という話ではありません。

初めて店を利用する人が、迷わず店の魅力を体験できるように商品を組み立て直す。

そう考えた方が、本質に近いと思います。

予約システムは、ここまでできるようになっている

今回の事例で利用されているトレタでは、ブラウザの表示言語などに応じて国内客向けとインバウンド客向けのコースを出し分けたり、インバウンド向けの予約にカード登録を求めたりする仕組みが提供されています。

もちろん、すべての飲食店が同じシステムを導入する必要はありません。

大切なのは、

「そんな出し分けまでできるようになっている」

と知っておくことです。

インバウンドが増えてきたからといって、店全体の予約方法を変える必要はない。

海外のお客様向けのコースを作ったからといって、日本人のお客様にも同じコースだけを見せる必要もない。

今は、お客様に合わせて入口そのものを変えるという選択肢もあります。

インバウンド対応は「外国人仕様に変えること」ではない

インバウンド対応というと、

外国語メニューを作る。

外国語を話せるスタッフを増やす。

キャッシュレス決済に対応する。

こうしたことが最初に思い浮かびます。

もちろん、どれも大切です。

しかし、もう一歩踏み込むなら、

「日本人のお客様と海外のお客様では、何に困っているのかが違う」

というところから考えてみてもいいのではないでしょうか。

予約に対する不安も違う。

料理について持っている知識も違う。

注文の仕方も違う。

店を訪れる目的も違うかもしれません。

それなら、すべてを同じにする必要はありません。

原島純一の視点

今回の事例を見て、私が面白いと思ったのは、新しい予約システムそのものではありません。

「全員を同じにしなくてもいい」と考えたことです。

長年利用してくれている日本人のお客様には、これまで通り使いやすく。

海外から初めて訪れるお客様には、店の料理を選びやすく。

そして店側が安心して予約を受けられる仕組みにする。

どちらかのお客様に店全体を合わせるのではなく、それぞれのお客様に合った入口を用意する。

これはインバウンド対策だけの話ではないと思います。

飲食店の商品やサービスを考えるとき、大切なのはいつも、

「このお客様は、何に困っているのだろう」

というところから考えることです。

インバウンドのノーショーに困っている。

日本人と海外客でメニューをどう分ければいいのか悩んでいる。

そんな店にとって、今回のような仕組みも解決方法の一つとして知っておいてよいのではないでしょうか。

特定の仕組みに店を合わせるのではなく、まず現場の困りごとを見つけ、その解決に使える仕組みを選ぶ。

その順番が大切だと思います。


参考:
トレタ導入事例|ちゃんこ部屋 浅草店
トレタ|国内客とインバウンド客で予約条件を出し分ける機能について

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