なぜ2代目・3代目経営者は「変えたいのに動けない」のか?

「変えなければいけないのは分かっている。」

それでも、一歩を踏み出せない2代目・3代目の経営者がいます。

それを単純に「決断力がない」と片づけていいのでしょうか。

2代目・3代目は、社長になる前から「後継者」だった。

そこから考えると、彼らが背負っているものが見えてきます。

目次

なぜ2代目・3代目経営者は「変えたいのに動けない」のか?

2代目・3代目の経営者と話していると、

「変えなければいけないのは分かっています。」

「このままではいけないと思っています。」

「やりたいこともあります。」

それでも、

なかなか一歩を踏み出せない。

そんな経営者に出会うことがあります。

外から見ていると、

「だったら、やればいいじゃないか。」

と思うかもしれません。

でも私は、

そんなに簡単な話ではないと思っています。

特に、地方で長く続いてきた店や会社を継ぐ後継者には、

その人にしか分からない重圧があります。

そして私は、ときどき思うのです。

この人たちは、

いったいいつから「後継者」だったのだろう、と。

2代目・3代目は、社長になる前から「後継者」だった

社長に就任した日でしょうか。

会社へ入った日でしょうか。

家業を継ぐと決めた日でしょうか。

おそらく、

もっと前からです。

地方で長く商売をしている家に生まれると、

子どもの頃から、

「○○屋の息子」

「○○会社のご子息」

「跡取り」

「将来の2代目」

と呼ばれることがあります。

本人がまだ、

家業を継ぐとも決めていない頃からです。

周囲の大人たちは、

一人の子どもとして見る前に、

「あの店の後継者」

として見る。

本人は普通に学校へ通い、

普通に遊び、

普通に自分の人生を考えている。

それでも周囲からは、

家業とセットで見られ続ける。

つまり、

2代目・3代目は、社長になる前から「後継者」だった。

私は、このことを理解しないまま、

「もっと思い切って経営すればいい。」

とは、なかなか言えないと思っています。

地方では、店と家と地域がつながっている

特に地方では、

会社だけを継ぐわけではありません。

先代を知っている従業員がいる。

昔からの取引先がいる。

何十年も通っている常連客がいる。

親戚がいる。

地域の経営者仲間がいる。

商工会や地域団体との付き合いがある。

みんな、

その店の歴史を知っています。

そして、

先代のことも知っています。

だから後継者が何かを変えると、

店の中だけで話が終わらないことがあります。

「若社長、あんなこと始めたらしいよ。」

「親父さんの頃とは変わったね。」

「大丈夫なのかね。」

本人には直接言わなくても、

どこかで話題になる。

そして巡り巡って、

本人の耳に入ってくる。

地域に根付いた商売だからこそ、

経営判断と地域社会を完全に切り離すことができない。

これも地方で事業承継する難しさだと思います。

変えても言われる。変えなくても言われる

後継者が店を変えれば、

「昔のほうが良かった。」

「先代なら、そんなことはしなかった。」

「若い社長になって変わってしまった。」

と言われる。

では、何も変えなければいいのでしょうか。

今度は、

「代替わりしたのに何も変わらない。」

「今の時代に合っていない。」

「結局、親父のやり方を続けているだけだ。」

と言われる。

つまり、

変えても言われる。

変えなくても言われる。

これは、ある程度仕方のないことなのだと思います。

それだけ、

その店が地域の中で長く商売をしてきたということでもあるからです。

そして、比較される相手は「先代」

さらに後継者を苦しめるものがあります。

先代との比較です。

「お父さんなら、こうしたよ。」

「先代は決断が早かった。」

「昔はもっと活気があった。」

「先代の頃は従業員がよくまとまっていた。」

悪気なく言われることもあるでしょう。

でも、後継者にとっては重い言葉です。

なぜなら、

会社や店を大きくしてきた先代は、

その組織にとって、

スーパースター

であることが多いからです。

地域に人脈がある。

取引先から頼られている。

従業員から信頼されている。

常連客から愛されている。

難しい局面を何度も乗り越えてきた。

そんな人と、

社長になったばかりの後継者が比較されます。

でも、その比較には「時間差」がある

ここで一つ、

忘れてはいけないことがあります。

後継者が比較されている先代は、

社長1年目の先代ではありません。

10年。

20年。

30年。

場合によっては40年。

経営を続けてきた先代です。

つまり、

後継者が比較されているのは、同じ年齢の先代ではない。

何十年も経営を続けてきた「完成された先代」です。

これは、かなり大きな時間差です。

今では地域の誰もが知っている先代にも、

初めて社長になった日がありました。

判断を間違えたこともあったでしょう。

失敗したこともあったはずです。

取引先に助けてもらったことも、

従業員に支えてもらったこともあったはずです。

でも後継者が見ているのは、

そうした過程を何十年も積み重ねたあとの姿です。

その完成形と、

今の自分を比べてしまう。

それでは、

自信を失ってしまうのも無理はありません。

後継者自身の中にも「スーパースターの先代」がいる

しかも、

周囲から比較されるだけではありません。

後継者自身も、

先代を見て育っています。

父親が取引先から頼られている姿。

従業員をまとめている姿。

地域で「あの社長」と呼ばれている姿。

難しい問題を判断している姿。

子どもの頃から、

そんな姿を見てきた。

だから、

自分の中にも「スーパースターとしての先代」がいる。

「自分に、あんなことができるのだろうか。」

「自分の判断で失敗したらどうしよう。」

「自分の代で店をダメにしたらどうしよう。」

そう思う。

だから、

変えなければいけないと分かっていても、

最後の一歩が踏み出せない。

私は、

これは単純に「決断力がない」という話ではないと思っています。

動けないのではない。

一つの決断に、背負っているものが多すぎる。

そういう後継者もいるのだと思います。

「自分の失敗」だけでは済まない怖さ

自分でゼロから始めた店なら、

失敗したとき、

「自分が失敗した。」

で済むかもしれません。

もちろん、それだって大変です。

でも事業承継の場合、

「自分が失敗した。」

だけでは終わらない怖さがあります。

「あいつの代でダメになった。」

と言われるかもしれない。

先代が何十年も守ってきた店。

従業員の生活。

昔からのお客様。

地域での信用。

それらを、

自分の判断で壊してしまうかもしれない。

そう考えたら、

一つの決断が重くなるのは当然です。

だからといって、全員の賛成を待つことはできない

私は、

周囲の声を無視すればいいとは思っていません。

むしろ、

聞くべきです。

先代の話を聞く。

従業員の話を聞く。

お客様を見る。

取引先の話も聞く。

数字を見る。

地域との関係も考える。

長く続いてきた店だからこそ、

自分一人では見えていない価値があるかもしれません。

でも、

全員が賛成するまで待つことはできません。

経営には、

誰かが決めなければならないことがあります。

価格を変えるのか。

メニューを変えるのか。

営業時間を変えるのか。

投資するのか。

撤退するのか。

新しいことを始めるのか。

最後は、

経営者が決めなければなりません。

どちらを選んでも、何かは言われる

ここは、

2代目・3代目の経営者には覚悟しておいてほしいと思っています。

何かを変えれば、

誰かに何かを言われる。

変えなければ、

また別の誰かに何かを言われる。

すべての人を満足させる経営判断は、

ほとんどありません。

だから、

周囲の声は聞く。

でも、

周囲の評価だけで自分の経営を決めない。

この線引きが必要なのだと思います。

「自信」とは、自分を信じると書く

私は経営者に、

「自信を持ってください。」

と言うことがあります。

でも、

自信とは、

「自分の考えは絶対に正しい。」

と思い込むことではありません。

人の意見を聞かないことでもありません。

迷っていい。

悩んでいい。

先代に相談してもいい。

従業員に聞いてもいい。

専門家に相談してもいい。

でも、

聞くべき声を聞き、

考えるべきことを考えたら、

最後は、

自分で決める。

自信とは、

文字どおり、

「自分を信じる」

ことです。

正解を選ぶのではなく、選んだ道を正解にする

経営判断には、

選んだ瞬間には正解が分からないことがたくさんあります。

Aを選べば成功する。

Bを選べば失敗する。

そんなことが最初から分かっているなら、

誰も悩みません。

実際には、

決めたあとに、

どう行動するかで結果は変わります。

だから私は、

「正しい道を選ばなければ。」

と考えすぎなくてもいいと思っています。

それより、

自分で決めた道を、正解にするために努力する。

そのほうが大切です。

決めたら、

徹底して考える。

改善する。

お客様を見る。

数字を見る。

必要なら修正する。

そして、

その決断を成功へ近づけていく。

それが経営者の仕事だと思っています。

坂本龍馬の言葉に思うこと

私は、後継者の経営者と話すとき、

坂本龍馬の言葉として知られる一節を思い出すことがあります。

世の人は我を何とも言わば言え
我が為すことは我のみぞ知る

私は、この言葉を、

「周りの意見なんて無視すればいい。」

という意味では捉えていません。

人の話は聞く。

自分の考えが間違っていないかも考える。

それでも、

最後は自分が責任を負って決める。

周囲から何を言われるかだけで、自分の経営を決めない。

そんな経営者の覚悟を感じる言葉として、私は好きです。

先代になる必要はない

そして、

もう一つ伝えたいことがあります。

あなたが、先代になる必要はありません。

先代と同じ決断をする必要もない。

先代と同じ話し方をする必要もない。

先代と同じ経営者になる必要もない。

今スーパースターに見える先代も、

何十年という時間をかけて、

その姿になりました。

後継者にも、

同じように時間があります。

だから、

今の自分と、

何十年も経営してきた先代を比べなくていい。

自分も時間をかけて、自分の経営者像をつくっていけばいい。

原島純一の視点

2代目・3代目の経営者が、

なかなか動けない。

そんな姿を見て、

「決断力がない。」

「覚悟が足りない。」

と簡単に言いたくありません。

特に地方で長く続いてきた店や会社の後継者は、

社長になった日からプレッシャーを背負ったわけではないからです。

子どもの頃から、

「○○屋の息子」

「○○会社のご子息」

「次の社長」

として見られてきた人もいます。

2代目・3代目は、社長になる前から「後継者」だった。

そして社長になれば、

今度はスーパースターだった先代と比較される。

変えても言われる。

変えなくても言われる。

それは、

本当に大変なことだと思います。

だからこそ、

周囲の声を無視する必要はありません。

たくさん聞けばいい。

たくさん悩めばいい。

でも、

最後は自分で決める。

自分を信じて決める。

そして、

自分が決めた道を、正解にするために努力する。

先代になる必要はありません。

先代を超えようとする必要もありません。

あなたには、あなたの経営があります。

何十年か後、

次の世代から見たときに、

今度はあなたが、

「あの人はすごい経営者だった。」

と言われるかもしれない。

経営者は、

最初からスーパースターなのではありません。

経営を続けながら、少しずつ経営者になっていく。

私は、そう思っています。

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