なぜ2代目・3代目経営者は「先代を否定してしまう」のか?

事業承継をした2代目・3代目経営者の中には、先代のやり方を強く否定し、店を大きく変えようとする人がいます。

もちろん、時代に合わせて変えることは必要です。
しかし、その「変えたい」という気持ちの奥には、経営上の理由だけではなく、後継者だからこそ抱えてきた複雑な心理が隠れていることがあります。

なぜ、後継者は先代を否定してしまうのか。
その心理から、事業承継における「自分らしい経営」とは何かを考えてみます。

目次

なぜ2代目・3代目経営者は「先代を否定してしまう」のか?

事業承継をした2代目、3代目の経営者を見ていると、時々、先代のやってきたことを強く否定する人がいます。

「昔のやり方ではダメだ」

「親父の考え方は古い」

「だから、この店は変わらなければいけない」

もちろん、本当に変えなければならないこともあります。

時代は変わります。

お客様も変わります。

働く人の価値観も変わります。

先代の時代に正しかったことが、今も正しいとは限りません。

しかし、後継者が先代を強く否定してしまう理由は、それだけではないことがあります。

その奥には、

「自分自身を認めてほしい」

という気持ちが隠れていることがあります。

子どもの頃から「自分」ではなく「後継者」だった

老舗の家に生まれた人は、子どもの頃から少し特殊な環境で育っています。

近所の人から、

「○○屋の息子さん」

「将来はお店を継ぐんでしょう?」

と言われる。

本人がまだ何者でもない頃から、周囲はすでに「後継者」として見ています。

大人になって店に入れば、今度は、

「社長の息子だから」

「先代のお嬢さんだから」

と言われる。

頑張って結果を出しても、

「さすが、○○さんの息子だね」

と言われる。

悪気があるわけではありません。

むしろ褒めているのだと思います。

でも、本人からすると、

「自分を見てもらえていない」

と感じることがあります。

自分には自分の考えがある。

自分なりに努力もしてきた。

それなのに、いつまでも「先代の子ども」として見られる。

この積み重ねは、後継者にとって想像以上に大きなものです。

先代は、簡単には超えられない

しかも、先代は強い。

何十年もその店を経営してきた人です。

お客様を知っている。

地域を知っている。

取引先を知っている。

スタッフを知っている。

料理人であれば技術もある。

何か問題が起きれば、長年の経験で判断できる。

店の中では、まさにスーパースターです。

そんな人と比較されながら経営を始めるのが、2代目、3代目なのです。

これは、かなり苦しい。

普通に頑張っているだけでは、なかなか自分の存在を認めてもらえません。

そこで、

「先代とは違うことをやらなければ」

という気持ちが強くなっていきます。

「変えること」が目的になっていないか

もちろん、店を変えること自体が悪いわけではありません。

むしろ事業承継では、変えなければならないことがたくさんあります。

問題は、

何のために変えるのか

です。

お客様のためなのか。

働くスタッフのためなのか。

会社をこれからも存続させるためなのか。

それとも、

「自分は先代とは違う」と証明するためなのか。

ここは、一度立ち止まって考えたほうがいいと思います。

先代と違うことをする。

先代が大切にしてきたものをやめる。

店名を変える。

料理を変える。

取引先を変える。

昔からいるスタッフを遠ざける。

そうすれば、自分の店になったような気がするかもしれません。

でも、

先代と違うことをすることと、自分らしい経営をすることは、同じではありません。

先代を否定する必要はない

私は、事業承継で本当に強い後継者は、先代を否定しない人だと思っています。

先代がやってきたことの中から、

「これは残したい」

「これは今の時代には合わない」

「ここは自分ならこうする」

と、一つひとつ自分で判断できる。

それが、本当の意味で店を引き継ぐということではないでしょうか。

先代が正しいから残すのでもありません。

先代が古いから変えるのでもありません。

自分で考えて、自分で決める。

その結果、先代と同じ答えになることだってあります。

それでいいのです。

先代と同じことを選んだからといって、自分の経営ではないわけではありません。

自分で考えたうえで「これは残す」と決めたのであれば、それはもう、あなた自身の経営判断です。

周囲には、何をしても言われる

事業承継をすると、いろいろなことを言われます。

何も変えなければ、

「先代の真似をしているだけだ」

と言われる。

変えれば、

「先代のほうが良かった」

と言われる。

新しいことを始めれば、

「昔の良さがなくなった」

と言われる。

昔からのやり方を残せば、

「時代遅れだ」

と言われる。

つまり、

何をやっても、誰かには何かを言われます。

だからこそ、すべての声に振り回されてはいけません。

もちろん、お客様やスタッフ、取引先、家族など、聞くべき声はあります。

耳の痛い意見ほど、聞いたほうがいいこともあります。

でも、最後に決めるのは経営者です。

自分で決めた道を、正解にしていく

事業承継に、最初から正解が用意されているわけではありません。

先代のやり方を残すことが正解なのか。

変えることが正解なのか。

新しい商売を始めることが正解なのか。

その時点では、誰にも分かりません。

だから最後は、

自分を信じて決めるしかありません。

そして、もっと大切なのは、その後です。

自分で決めた道を、

「あの判断で良かった」と言える未来にするために努力する。

それが経営者の仕事だと思います。

先代を否定することで、自分を証明する必要はありません。

先代を超えたと周囲に認めてもらう必要もありません。

先代が積み上げてきたものを受け取り、その中から残すものと変えるものを自分で決める。

そして、その決断に責任を持つ。

本当の自信とは、先代を否定できることではなく、自分の決断を信じられることなのだと思います。

原島純一の視点

2代目、3代目の経営者と話をしていると、「先代を超えなければ」という気持ちを感じることがあります。

でも、私は先代を超える必要などないと思っています。

そもそも、何十年も経営してきた先代と、経営者になったばかりの後継者を比べること自体に無理があります。

先代には先代の時代がありました。

後継者には、これから自分が経営していく時代があります。

大切なのは、先代と違う店をつくることではありません。

先代から受け取ったものを、自分の時代にどうつないでいくか。

残すものは残す。

変えるものは変える。

新しく始めるものは始める。

周囲の声にも耳を傾ける。

そのうえで、最後は自分で決める。

そして、

自分が決めた道を正解にするために、誰よりも努力する。

私は、それが後継者が「自分の経営」を始めるということだと思っています。

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