なぜ店頭メニューは「料理一覧」にしてはいけないのか?

なぜ店頭メニューは「料理一覧」にしてはいけないのか?

飲食店の店頭を見ると、たくさんの料理が並んだメニューを見かけることがあります。

定食。

丼。

麺類。

一品料理。

デザート。

ドリンク。

「せっかく店頭にメニューを出すのだから、できるだけ多くの商品を見てもらいたい。」

そう考える気持ちはよく分かります。

お客様にとっても、選択肢がたくさんあったほうが親切に思えます。

でも私は、

店頭メニューに、すべての料理を並べる必要はない

と考えています。

なぜなら、

店内で見るメニューと、店頭で見るメニューでは、

そもそも役割が違うからです。


目次

店内メニューと店頭メニューでは、目的が違う

店内にいるお客様は、すでにその店を選んでいます。

だから店内メニューを見る目的は、

「何を注文するか。」

を決めることです。

刺身にしようか。

天ぷらにしようか。

御膳にしようか。

追加で何か頼もうか。

いろいろな商品を比較しながら、自分が食べたいものを選びます。

そのため、ある程度の選択肢が必要です。

では、店頭にいるお客様はどうでしょうか。

まだ、その店を選んでいません。

つまり、店頭メニューを見る目的は、

「何を注文するか。」ではありません。

まず、

「この店に入るか。」

を決めています。

ここを混同すると、店頭メニューの役割が分からなくなります。


店頭メニューは「商品を選ぶ場所」ではない

お店側からすると、

「うちは、こんなにいろいろあります。」

と伝えたくなります。

でも、お客様はまだ入店していません。

その段階で、

20品。

30品。

50品。

と料理を並べても、一つひとつを丁寧に見てくれるとは限りません。

特に観光地では、お客様は街を歩きながら何軒もの飲食店を見ています。

隣にも店がある。

その先にも店がある。

Googleで調べていた候補店もある。

そんな中で、一軒の店頭に立って、すべての商品をじっくり比較してくれるとは限りません。

だから店頭では、

商品を全部見せることよりも、「この店を選ぶ理由」を伝えること

のほうが大切になります。


たくさん見せることが、親切とは限らない

「選択肢が多いほうがお客様は喜ぶ。」

飲食店では、そう考えがちです。

もちろん、いろいろなニーズに応えられることは強みです。

でも、伝える場面では少し違います。

例えば店頭に、

刺身。

天ぷら。

焼魚。

唐揚げ。

ハンバーグ。

カレー。

そば。

うどん。

丼。

と並んでいたら、何でも食べられることは分かります。

でも、

「この店へ行く理由」は何でしょうか。

逆に、大きな料理写真とともに、

「この店に来たら、まずこれ。」

と一品が強く打ち出されていたらどうでしょう。

「あ、美味しそう。」

「これ食べたい。」

という気持ちが生まれます。

店頭では、

選択肢の多さより、選ぶ理由の強さ

が重要になることがあります。


観光客は、何軒もの店から一軒を選んでいる

特に観光地では、この違いが大きくなります。

観光客は、

「今日のお昼をどこで食べよう。」

だけではありません。

「せっかくここまで来たのだから。」

という気持ちがあります。

この土地らしいものを食べたい。

旅行の思い出になるものを食べたい。

できれば失敗したくない。

だから店頭を見ながら、

「この店では何が食べられるんだろう。」

「何がおすすめなんだろう。」

「この土地らしい料理はあるかな。」

と考えています。

そこで、たくさんの料理を同じ大きさで並べるだけでは、

「この店を選ぶ理由」

が見えにくくなってしまいます。


でも、観光客が知りたいことは同じではない

ここでもう一つ、大切なことがあります。

同じ観光客でも、店を利用する目的は同じではありません。

例えば夫婦旅行なら、

「せっかくだから、この土地の美味しいものをゆっくり食べたい。」

家族旅行なら、

「子どもが食べられる料理もあるかな。」

友人との旅行なら、

「それぞれ好きなものを選べるかな。」

少し特別な旅行なら、

「せっかくだから、いつもより良いものを食べよう。」

となることもあるでしょう。

つまり、お客様が店を選ぶときに知りたいことは、

誰と来たのか。

どんな旅行なのか。

この食事に何を求めているのか。

によって変わります。


「情報は多いほうがいい」「少ないほうがいい」ではない

だから店頭メニューは、

情報をたくさん出せばいい、

という話でもありません。

反対に、

情報を減らしてシンプルにすればいい、

という話でもありません。

例えば高級店なら、

店構え。

暖簾。

入口までのアプローチ。

植栽。

照明。

店内の雰囲気。

そうしたもの自体が、

「大切な食事を任せられそうだ。」

という情報になっていることがあります。

そこへ料理写真や価格を大量に掲示すれば、かえって店の世界観を壊してしまうかもしれません。

一方、家族旅行のお客様を迎える店なら、

料理の種類。

価格。

子どもが食べられるもの。

利用しやすい席。

そうした情報が安心につながることがあります。

観光客向けのランチなら、

「この土地で何が食べられるのか。」

が一目で分かることが重要になることもあります。

つまり、

店頭づくりに「正しい情報量」があるわけではありません。

大切なのは、

その利用シーンのお客様が、店を選ぶために必要な情報を適切に伝えることです。


「誰に」だけではなく「何のために」まで考える

飲食店では、ターゲットを考えるとき、

年齢。

性別。

所得。

家族構成。

など、お客様の属性から考えることがあります。

もちろん、それも大切です。

でも観光地では、それだけでは十分ではありません。

同じ50代の夫婦でも、

普段の昼食と、結婚記念日の旅行では求めるものが違います。

同じ家族でも、

日常の外食と、年に一度の家族旅行では店選びの基準が変わるかもしれません。

つまり、

「どんな人なのか」だけではなく、「何のために利用するのか」まで考える。

私は、この視点を大切にしています。

お客様の属性と利用シーン。

その両方を見ることで、

初めて、

「このお客様には、何を伝えるべきなのか。」

が見えてきます。


「この店といえば、これ」が店頭にあるか

そして、利用シーンを考えたうえで、もう一つ重要になるのが看板メニューです。

以前、

看板メニューは、その店を選ぶ理由をつくるもの

という話をしました。

店頭メニューにも、同じ考え方が使えます。

看板メニューがあるなら、店頭ではそれをしっかり見せる。

写真を大きくする。

料理名を分かりやすくする。

なぜおすすめなのかを伝える。

その土地との関係があるなら、それも伝える。

そして、

「この店へ入ったら、これを食べたい。」

と思ってもらう。

すべての商品を平等に扱う必要はありません。

むしろ、

店頭では、伝える情報に優先順位をつける

ことが大切です。


店頭と店内では、同じメニューでなくていい

ここまで考えると、

店内で使っているメニューを、そのまま店頭に置けばいいわけではないことが分かります。

役割が違うからです。

店内メニューでは、

商品を比較してもらう。

追加注文をしてもらう。

客単価を高める。

いろいろな料理から選んでもらう。

そうした役割があります。

一方、店頭メニューでは、

まず、

「この店に入りたい。」

と思ってもらう。

だから店内では30品掲載していても、

店頭では5品でもいい。

場合によっては、一番伝えたい料理を一つ大きく見せてもいい。

反対に、家族やグループで利用するお客様に、

「それぞれ好きなものを選べる。」

ことが店を選ぶ重要な理由なら、ある程度の品揃えを見せたほうがいい場合もあります。

つまり、

何品見せるかにも、絶対的な正解はありません。

お客様が店を選ぶために必要な情報から逆算する。

それが大切です。


店頭メニューには「安心」と「期待」の両方が必要

前の記事で、

安心 → 心が動く → 入店

という話をしました。

店頭メニューにも、この両方が必要です。

価格が分かる。

どんな料理なのか分かる。

自分たちでも利用できそうだと分かる。

これは、

安心。

一方で、

料理写真を見て、

「美味しそう。」

「これ食べたい。」

「ここで食べてみたい。」

と思う。

これは、

心が動く。

つまり良い店頭メニューは、

情報をたくさん載せたメニューではありません。

その利用シーンのお客様が安心できて、なおかつ心が動くメニュー

なのだと思います。


「何があります」ではなく「なぜこの店なのか」

店頭メニューを考えるとき、

「何を載せよう。」

から考えると、どうしても商品一覧になりがちです。

私は、その前に、

「誰に、どんな場面で、この店を選んでもらいたいのか。」

と考えてほしいと思っています。

そして、

そのお客様が店を選ぶためには、何を知りたいのか。

さらに、

「この店を選ぶ理由は何なのか。」

を考える。

この土地ならではの食材。

店の看板料理。

何十年も続いている味。

ここでしかできない食べ方。

圧倒的なボリューム。

職人の技。

店の佇まい。

利用シーンによって、その答えは変わります。

まず、

お客様が店を選ぶ理由を考える。

そして、それが伝わる店頭メニューをつくる。

この順番です。


原島純一の視点

私は店頭メニューを見るとき、

「何品載っているか。」

よりも、

「この店を利用してほしいお客様が、店を選ぶために必要な情報が伝わっているか。」

を見ています。

飲食店側は、どうしてもたくさん伝えたくなります。

「あれもあります。」

「これもあります。」

「こんなお客様にも対応できます。」

でも、伝えることが増えるほど、一番伝えたいことが弱くなることがあります。

反対に、

「高級店だから情報は少ないほうがいい。」

「おしゃれな店だから説明しないほうがいい。」

というものでもありません。

大切なのは、

誰に、どんな利用シーンで選んでもらいたいのか。

です。

夫婦旅行なのか。

家族旅行なのか。

友人との旅行なのか。

特別な日の食事なのか。

短時間の観光ランチなのか。

利用シーンが変われば、お客様が知りたい情報も変わります。

だから私は、

店内メニューと店頭メニューを同じものだと考えません。

店内メニューは、「何を注文するか」を決めるもの。

店頭メニューは、「この店に入るか」を決めるもの。

そして店頭で大切なのは、

情報を増やすことでも、減らすことでもありません。

その旅のお客様が、店を選ぶために必要な情報を適切に伝えること。

そのうえで、

「この店で、これを食べたい。」

と心を動かすこと。

店頭メニューは、

商品を選んでもらうためのものではなく、お店を選んでもらうためのもの。

私は、そう考えています。

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